79話後の友と兄と父の会話

文字数 1,363文字

 ※近況ノートに投稿していたものを纏めたものになります。
 仕事が終わった後、酒を酌み交わしながらのヴィッツ(長兄)とアウダクスの会話から。
 ヴ・・・ヴィッツ ア・・・アウダクス 父・・・ヴァイスハイト



ヴ「このあいだの父上の護衛、問題無かったんだろうな」
ア「もちろん。いつもてこずるガストルニスも、ぱぱっと片付いたし、予定外に丘にもよったけど何事もなく……」
ヴ「あの冒険者達、そんなに優秀だったか? っていうか、丘に? あそこはついていける者が少ないからって言ってるのに! おひとりで行かせたのか!」
ア「え? あー……ま、まあ、ほら、すぐ帰って来られたし……一人魔法陣使う子がいてさ。お前に見せたかったなぁ。変わった応用の仕方してて」
ヴ「なに? 何故覚えてこない。というか、誰だ? あ、お前が面接したヤツか」
ア「まだ襲われてる間に消されたんだよ」
ヴ「消された? 皮紙(かみ)じゃないのか?」
ア「それが、地面に直接さらさら~って描くんだよ! 鳥どもいなしながら!」
ヴ「直で?」
ア「自分で魔力籠めて、使えるって便利だよなぁ。なんか、焔石代わりだって綺麗な金細工の陣も持ってて、ちょっと変わってて生意気なんだけど、それだけの実力はあるっていうか……」
ヴ「……どこかで聞いたことのあるような人物だな」
ア「ヴィッツもそう思うか! いやあ、俺もそう思ったんだけど、どうしても誰か思い出せなくて。顔見てもさっぱり思い付かないし」
ヴ「……ちょっと見優男で、女装しても似合いそうな」
ア「お。そうそう。背丈はあるから、迫力のある女になるだろうが……あれ? お前、会ってないよな?」
ヴ「負けず嫌いで、努力家で、実力は誰よりあるはずなのに魔法が発動できない。生意気で腹立たしいのにどうしてか憎めない……」
ア「お。久しぶりに聞くなぁ。元気なのか? お前んとこの、末のおとぉ…………とお、あぁあ!!!?」
ヴ「……ちょっと、詳しく聞かせてもらおうか」

 ◇ ◆ ◇

ヴ「父上! ヴェルデビヒトにお会いになったのですか!」
父「何の話だ」
ヴ「先日、急に護りの陣の綻びがって言いだしたじゃないですか! あの時ですよ!」
父「知らん。綻びは直した」
ヴ「私が行けないのだから、数日待って下さいと言ったのにっ何故強行するのかと思ったら」
父「知らぬと言ってる。そんな名の者はいなかった」
ヴ「丘の上まで入り込めたと聞きましたよ! あれを解けるようになってるなら、彼は独学でそれを身に着けてるんですよ? 父上はどうしてヴェルにそう厳しいのです! ガストルニスを焼いた陣、私も見たかった!」
父「それは私も見ておらん。何も消さなくても……」
ヴ「…………」
父「…………」
ヴ「父上……」
父「私はちゃんと名乗れと言った。ただいまと帰ってくればいいものを」
ヴ「父上。ヴェルにはひとかけらも伝わってませんよ。断言できます」
父「知らぬ」
ヴ「あーもう。元気だったんですね? どうせ父上と呼んでもらえなくて拗ねてるんでしょう。元はと言えばご自分が蒔いた種じゃないですか! 母上にも言ってませんね? 言ったらまた怒られますものね。面接の時、俺が気付いていれば……そういう小細工だけは上手いんですから!」
父「知らぬ。知らぬ!」



 ヴィッツが一番父親の性格を把握してます。似た者親子なので……
 家は順当に彼が継ぎます。
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登場人物紹介

ビヒト:主人公。本名、ヴェルデビヒト・カンターメン。魔術師の家系に生まれ、豊富な魔力を持つが、魔法は発動できない。ヴァルムに出会い、感化され、実家を出て自分なりの魔法との向き合い方を模索する。髪と瞳はうす茶。


イラスト:観月さん

ヴァルム:「鬼神」の二つ名を持つ名の知れた冒険者。破天荒でマイペース。家族には弱い。白灰色の髪に灰緑色の瞳。

ラディウス:パエニンスラ領主の息子。明るく快活。性格は領主似。よく騎士団に交じって訓練している。プラチナブロンドの髪にブルーグレーの瞳。

セルヴァティオ:ヴァルムの息子。ラディウスとは兄弟のようにして育った。真面目で繊細。酒が入ると人が変わる。ヴァルムと別れた母とは時々会っている。白灰色の髪に青い瞳。

マリベル:線細工師。背が低いので成人女性に見られないが、ラディウスと同い年。勝気で犬嫌い。金茶の髪に青い瞳。

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