第15話
文字数 1,331文字
数日後。
グランドブレイカーにより破壊された街は未だにひどい有様ではあったが、住民に笑顔は戻っていた。
元の通りホワイトによって適切に管理されるようになったファウンテンは、人々に燃料 や水を供給する。
瓦礫 の撤去に忙しく働く二機のグランドブレイカーをクロエは満足げに、ウィルは何か思うことがある様子で遠目に見ていた。
「あの者たちには、ふさわしい罰を与えねばなりません。しばらくは身を粉にして働くことが、その罰となりましょう」
二人の背後に清潔な衣服に着替えたホワイトが声をかける。
クロエはすぐに振り向いたが、ウィルはそのまま、グランドブレイカーを見つめていた。
「俺たちが……ヤツらより強い力を持つ者が居なくなっても、ヤツらがおとなしく従うって保証はねぇんだぜ?」
「ええ、しかし人間は強さだけに従う動物ではないのです。どんなに力があるものでも、己 の犯した罪は償 わなければならない。それが、成熟した文明と言うものです」
「……理想だな」
「いいんだよ、それで。だってグランドブレイカー乗りは誇り高い騎士様なんだもん」
未だグランドブレイカーを厳しく見つめるウィルの腕にクロエが触れる。
やっとこちらを向いたウィルは、クロエの顔を見て小さくうなづいた。
「そうですな。神の力の代行者……民を守る騎士。それこそがグランドブレイカー乗りだった時代もありました。よい時代でしたな」
「あぁ、俺は今でもそうだと思ってる。だからグランドブレイカーを悪事に使うやつらがゆるせねぇんだ。『力を持つ者は、その力を正しく使う義務がある』って……師匠はいつも言ってたぜ」
「……お二人とも、よい大人と暮らしてこられた。我々も時代に流されず、正しい志を持って生きていかねば……」
ウィルとクロエは燃料 や水や食料を詰め込んだキャリアに乗り込む。
忙しい作業の合間 を縫 って見送りにあらわれた住人へと手を振り、キャリアは走りだした。
クロエは窓から身を乗り出してずっと手を振っていたが、その姿が砂煙の向こうへ見えなくなると、やっと体をシートに沈めた。。
「まったくひでぇ街だったぜ。時間もかかったし、門の修理はタダ働きだしよ」
「そうかな、ぼくはいい人のたくさんいる素敵な街だって思ったよ」
「……まぁ今回はずいぶんサービスしてもらったから、よしってことにしてやるか」
「またそういう言い方して。素直じゃないんだから」
「なんだよ、俺はいつも素直だろ」
「ふふ……そうだね」
「なんだよ気持ちわりぃな」
「なんでもない。『力を持つ者は、その力を正しく使う義務がある』んだもんね。がんばって、騎士様」
岩と砂ばかりのタルシス地方を抜け、ウィルたちは一路広大なツンドラが広がるアルギュレ地方へと向かう。
ナビゲーションシステムには大きく『太陽湖』の文字が輝いていた。
灼熱の太陽が照りつけるタルシス地方と、荒涼とした低木地帯が広がる永久表土の土地、アルギュレ地方。
その中間に奇跡のように広がる湖、太陽湖の湖畔の街を目指し、グランドキャリアは砂煙をあげた。
グランドブレイカーにより破壊された街は未だにひどい有様ではあったが、住民に笑顔は戻っていた。
元の通りホワイトによって適切に管理されるようになったファウンテンは、人々に
「あの者たちには、ふさわしい罰を与えねばなりません。しばらくは身を粉にして働くことが、その罰となりましょう」
二人の背後に清潔な衣服に着替えたホワイトが声をかける。
クロエはすぐに振り向いたが、ウィルはそのまま、グランドブレイカーを見つめていた。
「俺たちが……ヤツらより強い力を持つ者が居なくなっても、ヤツらがおとなしく従うって保証はねぇんだぜ?」
「ええ、しかし人間は強さだけに従う動物ではないのです。どんなに力があるものでも、
「……理想だな」
「いいんだよ、それで。だってグランドブレイカー乗りは誇り高い騎士様なんだもん」
未だグランドブレイカーを厳しく見つめるウィルの腕にクロエが触れる。
やっとこちらを向いたウィルは、クロエの顔を見て小さくうなづいた。
「そうですな。神の力の代行者……民を守る騎士。それこそがグランドブレイカー乗りだった時代もありました。よい時代でしたな」
「あぁ、俺は今でもそうだと思ってる。だからグランドブレイカーを悪事に使うやつらがゆるせねぇんだ。『力を持つ者は、その力を正しく使う義務がある』って……師匠はいつも言ってたぜ」
「……お二人とも、よい大人と暮らしてこられた。我々も時代に流されず、正しい志を持って生きていかねば……」
ウィルとクロエは
忙しい作業の
クロエは窓から身を乗り出してずっと手を振っていたが、その姿が砂煙の向こうへ見えなくなると、やっと体をシートに沈めた。。
「まったくひでぇ街だったぜ。時間もかかったし、門の修理はタダ働きだしよ」
「そうかな、ぼくはいい人のたくさんいる素敵な街だって思ったよ」
「……まぁ今回はずいぶんサービスしてもらったから、よしってことにしてやるか」
「またそういう言い方して。素直じゃないんだから」
「なんだよ、俺はいつも素直だろ」
「ふふ……そうだね」
「なんだよ気持ちわりぃな」
「なんでもない。『力を持つ者は、その力を正しく使う義務がある』んだもんね。がんばって、騎士様」
岩と砂ばかりのタルシス地方を抜け、ウィルたちは一路広大なツンドラが広がるアルギュレ地方へと向かう。
ナビゲーションシステムには大きく『太陽湖』の文字が輝いていた。
灼熱の太陽が照りつけるタルシス地方と、荒涼とした低木地帯が広がる永久表土の土地、アルギュレ地方。
その中間に奇跡のように広がる湖、太陽湖の湖畔の街を目指し、グランドキャリアは砂煙をあげた。