第14話
文字数 2,157文字
タイヤを勢いよく空転させ、砂埃を上げながら急発進したバギーは、そのまま荷台に滑り込む。
ウィルはグランドブレイカー「グイベル」のコクピットへ、クロエはグランドキャリアの運転席へと走り、同時にシートへ体を滑り込ませた二人は、モニターに並ぶスイッチをリズミカルに切り替えた。
お互いのサブモニターに、お互いの顔が映し出される。
二人は笑顔を確認し合い、フットペダルを押し込んだ。
「いくぜ!」
「うん!」
『くそガキどもが! よくもやってくれたな!』
鉄柵を跳ね除け、ゼロツーがキャリアへと迫る。
振り上げられた採掘機。
クロエは思わず目を閉じたが、唸りを上げる採掘機は、美しい白銀 の腕に押しとどめられた。
『ばっかやろう! この白き龍 が来たからには、お前らの好きにはさせねぇぜ!』
荷台から立ち上がったグイベルは、片手で02の腕を押しとどめたばかりか、何でもない事のようにそれを押し返した。
『なにやってるゼロツー! そのまま突き刺しちまえ!』
01の声に後押しされ、02はエンジンをふかす。
一瞬、鉄のきしむ音を鳴らして動きを止めた採掘機は、次の瞬間にはまた押し返された。
『バカな?! なんだこのパワー?!』
『おい本気で言ってるのか? こっちはメインフレームに接続した採掘機だぞ?!』
通常のグランドブレイカーであれば、腕にはエンジンのパワーの数分の一しか伝わっていない。しかし、この01、02は採掘用にカスタマイズされた機体である。
一度 採掘機のスイッチが入れば、機体のメインフレームに採掘機が固定され、全体重と全エネルギーが伝わるようになっているのだ。
それを、汎用の機体が片手で押し返している。
その異様な光景は、グランドブレイカーの構造をよく知っているものであればあるほど、信じられないものだった。
『降参するなら今のうちだぜ』
――ギ……ギ……ギ……、ゴ、ゴゴン。
02の採掘機は悲鳴を上げる。
ついに立ち上がったグランドブレイカー『グイベル』は、メインカメラに光をたたえ、グランドブレイカーを見下ろした。
『ウィル! 左!』
クロエの声が響き、キャリアからのサポートでデータを受けたグイベルは、オートパイロットで左手をまっすぐに突き出す。
そこに迫っていた01は赤い頭を押さえつけられ、衝撃でコクピットにエアバッグが開いた。
『気を抜いちゃダメだよ!』
『わりぃ。今のは一つ借りだな』
『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!』
『……だな、キャリアのデータ処理サポートを受けられるようになったグランドブレイカーがどんだけすげぇか……思い知らせてやる!』
ウィルは両手のレバーで円を描くように軌道を走らせ、左右に8つあるボタンを金管楽器のように操作する。
親指のトラックボール、足元のスロットルペダル。
その全てを流れるように操るウィルの天才的な操作技術により、グイベルは他のグランドブレイカーとは全く違う流れるような動きを見せた。
限られたグランドブレイカー内部の制御コンピュータとは桁違いの演算能力を誇るグランドキャリアのコンピュータが、相手の重心や加速度、エンジン出力などから割り出した直近の未来予測がサブディスプレイに表示され、さらにグイベルの自立運動の制度も高める。
02を打ち倒し、01のバランスを崩して、まるで武術の演舞のように美しい挙動を見せつけたグイベルは、二機のグランドブレイカーを子ども扱いして地面に押し付け、無傷のまま戒めた。
大きくガシャンと音を立て、絡まるように倒れた二機の上に座ったグイベルの姿に、隠れて見ていた住民たちから歓声が上がる。
グランドキャリアから『パイロットのお二方 ! レバーから手を離して! そのままコクピットを出てください!』とクロエの声が響き、そのままグランドブレイカーを破壊してしまいそうな勢いのグイベルを遠隔で止 めた。
『なんだよクロエ。こんなヤツらやっちまおうぜ』
『もう! ダメだよ! この街を守るグランドブレイカー乗りがいなくなっちゃう』
『チッ。一度闇に落ちたヤツらを街の人間がまたグランドブレイカーに乗せるわけねぇだろ。めんどくせぇ』
『……大丈夫だよ。グランドブレイカー特性のある人間は、強大な力を正しく使おうとする心を持っている騎士様なんだもん』
『騎士様ぁ?』
『そうだよ。民を守り、誇りを持って戦い、礼節を知り、自らを厳しく戒める。そんな高潔な人のみがグランドブレイカー特性を得るんだって……おじいが言ってた』
二人の見ている前で、クロエの言葉を聞いたパイロットは両手を上げたままコクピットを出る。
もう一度舌打ちをしたウィルへ向けて、モニター越しに笑顔を見せたクロエは、キャリアの周りに集まり始めた住人たちに合流した。
ウィルはグイベルのセンサーモニターに街を反対の門から逃げ出す数台のバギーを認める。
きっとボウマンたちだ。
追いかけようとペダルを踏みかけたが、モニターに映るクロエの笑顔を拡大すると、フッと力を抜いて小さく笑顔をこぼした。
ウィルはグランドブレイカー「グイベル」のコクピットへ、クロエはグランドキャリアの運転席へと走り、同時にシートへ体を滑り込ませた二人は、モニターに並ぶスイッチをリズミカルに切り替えた。
お互いのサブモニターに、お互いの顔が映し出される。
二人は笑顔を確認し合い、フットペダルを押し込んだ。
「いくぜ!」
「うん!」
『くそガキどもが! よくもやってくれたな!』
鉄柵を跳ね除け、ゼロツーがキャリアへと迫る。
振り上げられた採掘機。
クロエは思わず目を閉じたが、唸りを上げる採掘機は、美しい
『ばっかやろう! この
荷台から立ち上がったグイベルは、片手で02の腕を押しとどめたばかりか、何でもない事のようにそれを押し返した。
『なにやってるゼロツー! そのまま突き刺しちまえ!』
01の声に後押しされ、02はエンジンをふかす。
一瞬、鉄のきしむ音を鳴らして動きを止めた採掘機は、次の瞬間にはまた押し返された。
『バカな?! なんだこのパワー?!』
『おい本気で言ってるのか? こっちはメインフレームに接続した採掘機だぞ?!』
通常のグランドブレイカーであれば、腕にはエンジンのパワーの数分の一しか伝わっていない。しかし、この01、02は採掘用にカスタマイズされた機体である。
それを、汎用の機体が片手で押し返している。
その異様な光景は、グランドブレイカーの構造をよく知っているものであればあるほど、信じられないものだった。
『降参するなら今のうちだぜ』
――ギ……ギ……ギ……、ゴ、ゴゴン。
02の採掘機は悲鳴を上げる。
ついに立ち上がったグランドブレイカー『グイベル』は、メインカメラに光をたたえ、グランドブレイカーを見下ろした。
『ウィル! 左!』
クロエの声が響き、キャリアからのサポートでデータを受けたグイベルは、オートパイロットで左手をまっすぐに突き出す。
そこに迫っていた01は赤い頭を押さえつけられ、衝撃でコクピットにエアバッグが開いた。
『気を抜いちゃダメだよ!』
『わりぃ。今のは一つ借りだな』
『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!』
『……だな、キャリアのデータ処理サポートを受けられるようになったグランドブレイカーがどんだけすげぇか……思い知らせてやる!』
ウィルは両手のレバーで円を描くように軌道を走らせ、左右に8つあるボタンを金管楽器のように操作する。
親指のトラックボール、足元のスロットルペダル。
その全てを流れるように操るウィルの天才的な操作技術により、グイベルは他のグランドブレイカーとは全く違う流れるような動きを見せた。
限られたグランドブレイカー内部の制御コンピュータとは桁違いの演算能力を誇るグランドキャリアのコンピュータが、相手の重心や加速度、エンジン出力などから割り出した直近の未来予測がサブディスプレイに表示され、さらにグイベルの自立運動の制度も高める。
02を打ち倒し、01のバランスを崩して、まるで武術の演舞のように美しい挙動を見せつけたグイベルは、二機のグランドブレイカーを子ども扱いして地面に押し付け、無傷のまま戒めた。
大きくガシャンと音を立て、絡まるように倒れた二機の上に座ったグイベルの姿に、隠れて見ていた住民たちから歓声が上がる。
グランドキャリアから『パイロットのお
『なんだよクロエ。こんなヤツらやっちまおうぜ』
『もう! ダメだよ! この街を守るグランドブレイカー乗りがいなくなっちゃう』
『チッ。一度闇に落ちたヤツらを街の人間がまたグランドブレイカーに乗せるわけねぇだろ。めんどくせぇ』
『……大丈夫だよ。グランドブレイカー特性のある人間は、強大な力を正しく使おうとする心を持っている騎士様なんだもん』
『騎士様ぁ?』
『そうだよ。民を守り、誇りを持って戦い、礼節を知り、自らを厳しく戒める。そんな高潔な人のみがグランドブレイカー特性を得るんだって……おじいが言ってた』
二人の見ている前で、クロエの言葉を聞いたパイロットは両手を上げたままコクピットを出る。
もう一度舌打ちをしたウィルへ向けて、モニター越しに笑顔を見せたクロエは、キャリアの周りに集まり始めた住人たちに合流した。
ウィルはグイベルのセンサーモニターに街を反対の門から逃げ出す数台のバギーを認める。
きっとボウマンたちだ。
追いかけようとペダルを踏みかけたが、モニターに映るクロエの笑顔を拡大すると、フッと力を抜いて小さく笑顔をこぼした。