第17話 後悔と反省

文字数 1,123文字

 すると、今まで罠に嵌めて出世の道を閉ざした人たちの顔が、押しのけていった人たちの顔が、次々と頭に浮かんできた。
 その時、やっと、
『自分は、なんてことをしてしまったんだ!』
 と気づいた。
『彼らにも愛する家族がいたのに、退職まで追い込んだ人もいた。あれから彼はどうなったのだろう? 転職はうまく行ったのか? 自殺するような事態に追い込まれていないだろうか? 家族をちゃんと養えて、子供も学校に行かせてやれたのだろうか?』
 と次々と後悔の念が湧いてきた。

 彼らの状況を直接確認したいが、自分にはその手段がない。
『今更で遅いのは分かる。分かるが、せめて今からでも謝りたい!!』
 そう心から強く想うと涙が溢れてきて止まらなかった。

 すべてを1つ1つ丁寧に思い出しながら、心の中で、
 どこが、悪かったのか?
 どうして、やってしまったのか?
 何故、自分のことしか考えなかったのか?
 彼が心配だ。本当に申し訳なかった!
 と心から謝罪していると、涙と共に心が洗い流されていくのが実感できた。
 どれくらい謝罪と反省の時間が続いたのだろうか。
 丁寧に丁寧に、思い出しては謝罪をしていたので分からないが、かなり永い時間が経過していたと思われる。

 すると、はるか上空から1本のとても清らかな光が自分に降り注いできた。
『なんだこれは。温かい。こんなに温かいのは本当に久しぶりだ』
 と思うと、また涙が出てきた。
 そのまま光を眺めていると、なんと大きな羽根の生えた天使が降りてくるではないか!
『天使は、本当にいた(存在した)のか!?』
 びっくりしたが、目の前に確かに立っている。
 その天使は、温かく慈愛の表情で、
「良く自ら気づきましたね。とても立派ですよ。素晴らしいことです」
 と涙を流して、喜んでくれた。
 それが、とても嬉く感動した。

 気分が落ち着いたこともあり、ふとこんなことを思ってしまった。
『葬式が仏教形式だったから、菩薩が現れるなら分かるが、天使が出てくるなんて意外だったな』
 すると天使に、その思考が伝わったらしく、
「あ! 菩薩の方が良かったですか?」
 と言うと、目の前で菩薩の姿に変わったのだ!
「これで、いいですか?」
 と聞いてきたので、
「お気を使わせました。でも変われるんですね。驚きました」
「でも、正直言うと天使の方がカッコイイ!」
 と、つい言ってしまった。
 すると、笑顔で、
「はい。良いですよ」
 と言うと、また天使の姿に戻った。
『なかなか面白いものを見た』
 と心底感心した。

 その後、天使は優しいが厳しい表情になり、
「しかし、貴方にはまだ課題が残っていますね。次に進みましょう」
「今度も何がいけなかったのか、頑張って見つけて下さい」
 と言うと、一瞬で場面が変わった。
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