第20話 感謝の心

文字数 2,460文字

 生きているときには勝手に産んだのは親なんだから、当然の義務だと思っていた。

 毎日の食事に洗濯、
 毎朝起こしにきてくれた、
 風邪を引いて寝込んだときには、ずっと傍に寄り添っていてくれた、
 運動会には必ず来てくれた、朝早く起きて手の込んだお弁当も作ってくれた、
 遠足のときもそうだった、クラスメイトからお弁当の中身を見て「いいなー、羨ましい」と言われた、
 誕生日には、丹精込めて手作りケーキを作ってくれた、
 泣いていたら、温かく抱きしめてくれた、
 遅くまで勉強していると、おにぎりなどの差し入れを持ってきてくれて、
「頑張っているね。お母さん応援してるよ。でも、あまり無理しすぎないでね」
 と言葉をかけてくれた優しい()

 口には一切ださなかったが、辛い思いに耐えながら働き家族の生活を支えてくれた、
 高い学費の学校に、何一つ文句も言わず行かせてくれた、
「男はボールの投げ方くらい身につけていないと学校で困るからな」とちゃんとしたフォームを教えてくれた、
 覚えやすい学習方法やコツを、丁寧に教えてくれた、
 テストや通知表を見て「勇輝は俺の誇りだ。頑張ったかいがあったな」と激励してくれた、
 学校行事には、仕事を調整し可能な限り来てくれた、
 小さいころは少ない休日にも関わらず遊んでくれた、遊びに連れて行ってくれた、
 毎年、欠かさず家族旅行に連れて行ってくれた、
 厳格だが常に後ろから見守ってくれていた()

 両親が高価なのに思い切って買ってくれた、気に入ったデザインのランドセル。
 嬉しかったなー

 関東都大学に合格したとき、加藤中商社(かとなかしょうしゃ)に内定が決まったとき、一緒になって大喜びしてくれ、とても高い高級料理店で祝賀会をしてくれた。
 あれも、最高に嬉しかった!

 両親には愛情から何もかも与えてもらったのに、自分は父の日・母の日、そして誕生日でさえ、ろくに花もプレゼントも渡さなかったし、電話さえしなかった。
 与えてもらうだけで、何もお返ししていなかった……
 一方的に、奪うだけだった!!

 恵と結婚してからは、恵がしっかりしていたから、
「もうすぐ茜お義母さんの誕生日じゃない? 何かプレゼントを用意しなくっちゃね。今度の休日に、一緒に買いに行きましょうよ!」
 と言う具合に、ちゃんと当日ケーキを持って自分の実家にまで一緒に行ってくれた。
 行けないときでも、電話で、
「お義母さん、誕生日おめでとうございます♪ いつも、ありがとうございます。いつまでも、お元気でいて下さいね」
 と欠かさずしていたが、あれは全部、恵がしていたことで自分は正直無関心だった。

 1人で海外に行っていたときなんて、父の誕生日さえ忘れており、
 当日は異国の女性とベッドの上だった。
 数日経ってから、ふと思い出したので電話してみると、
 おふくろが電話にでて、
「勇輝、久しぶりね。風邪引いてない? ちゃんと食事してる? あと~~~」
 と質問攻めだった。
 それでも、まぁ社交辞令で、
「うん、元気だよ。大丈夫だって! おふくろはホント心配性だなー」
 と答えた。
「オヤジの誕生日さ、仕事で徹夜だったんだ。連絡遅れてごめんよ」
 と嘘をついた。
 すると、
「そんなの全然良いのよ! ほら、便りがないのは良い知らせって言うじゃない。お母さんは、あなたが元気でいるだけで充分幸せなのよ。遠いところから、わざわざ電話ありがとね」
 と本当に嬉しそうだった。
「あぁ、お父さんに電話だったわよね? 今、代わるね」
 と言うと、
(おふくろの隣で待っていたのだろう)速攻で父に代わり、
「おぉ! 勇輝か。元気か!! お父さん、お母さんは元気だから、気にせず思いっきり活躍してきなさい。 それが、お父さんの喜びで生きがいなんだ」
 と誕生日に電話一つなかったことを気にもせず、話してくれた。

『あぁ、自分はなんて親不孝な息子だったのだろう』
 と悔いて悔いてしょうがなかった。

 一人息子であったため、一心に愛情を注いてくれた両親は、子供を亡くし夫婦2人だけに戻ってしまった。
 幸い孫の勇真を残すことはできたが、それでも寂しい想いを抱えながら余生を送ったに違いない。

 更には両親より先に死んでしまい、送り出してあげるどころか逆に自分の葬儀を行わせてしまったことなどが、次々と浮かび、1つ1つ心から後悔の念と謝罪、そして感謝の想いが溢れ出て涙が止まらなかった。

 すると上空から、あの懐かしい清らかな光が、再び自分に降り注いてきた。
 次には、あのときの天使が舞い降りてきた。

「ようやく気づくことが出来ましたね。この日が来るのをずっと待っていましたよ。地上では何でも自由に行動することができます。そして、時に人は誰しも過ちを犯すものです。ですが、自由には責任が伴います。してしまった事実は消せませんが、心からの反省により罪が許されたのです。これで課題は、全てクリアされました。さぁ、本来あなたのいた世界に帰りましょう!」
 そう言うと手を差し伸べてくれた。

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 ここが、この作品の中間点となります。
 心からの反省を終えた勇輝は、天使に連れられ光の世界に還ります。
 そこには神秘の世界が広がります。
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 そうです! この作品は、本作とアナザーストーリーで本来の1作なのです。

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