セルリアンブルー

文字数 1,031文字


硯 羽未 様作

───複雑な事情を抱えた二人の執着地点

【暗い過去を抱える彼と、人格をいくつも持つ主人公】

始まりは、女装をした自分に彼が惚れてしまったことだった。

人間の人生とはとても不思議だ。それはきっと、小説もリアルも変わらないと思う。生活の中で、自分では気づかないうちに”分岐点”で沢山”選択”をしているに違いない。
この物語の主人公は、心が弱かったため、辛いことから逃げてしまう癖がある。問題解決能力に少し欠けてはいたが、それを補う必要があった。だからこそ多人格を持つことになってしまった。
多重人格などは、子供の時に虐待などを受けていると起きやすい症状であり、それは自分自身を守るためであると言われている。自分が知らないだけで、意外と身近なことなのかもしれない。

それに対し、暗い過去を抱える獣医の彼は病んでいながらも、表には出さない。もちろん軽々しく人に言えるようなことでもなく、一見大人に見える獣医さんだ。

【登場人物の魅力】

自分は申し訳ないが、この獣医さんに一番魅力を感じてしまった。
主人公はとても危なっかしく、フラフラしているように感じるが、無理もない、各人格が別の相手を好きなのだから。自分の幸せと本能の狭間で揺れているようにも感じ、見ていてハラハラしてしまう。

一方獣医の彼は、”大人”というのもあるのかも知れないが、自分自身と真摯に向き合い、一つずつ着実に問題を打破しているように感じる。
彼は初めの頃、男女に拘っており、自分の本心に不安を感じ、自分自身に言い訳してしていたが、相手を個として考えるようになり、悩む方向も変わっていく。多人格であっても彼は一人の人間であり、彼の中の人格も含め”愛している”という結論に到るまでが、とても丁寧に描かれており、彼の魅力が充分に伝わってくる。

【複雑な三角関係】

獣医の彼に比べ、恋のライバルである絵描きの彼は、かなり即物的である。
若いからか、一人と向き合い共に人生を考えていくというのには向いてはいないように見える。しかし、それには理由がある。彼の事情についてはこの作品では書かれてはいないが、彼にそうさせてしまった人物が存在するのである。(詳しくは続編を)
ただ彼は、性欲と独占欲が強く、この三角関係を複雑にしているのは否めない。

続編があったら是非、読んでみたいと感じる作品です。
お手に取られてみてはいかがでしょうか?
獣医さんに萌えます。おススメです。
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