君の優しい嘘【感想】

文字数 1,001文字


『君の優しい嘘』
真田晃 様作

■感想に、この作品を選んだ理由

あることがきっかけで、作品を読んでみたいと思い拝読させて頂いたところ、どうしても伝えたい想いがあったため。

□登場人物に思うこと

最後まで読んでから、もう一度読むと登場人物への違和感が浮き彫りとなる。主人公に対し、いじめを行っている塚原に対しては、まったく印象が変わらないことからどんな理由であっても、優しさというものを持ち合わせていない相手に対しては、好意を持ちようがないということを、改めて認識する。それはある一種の戒めであり、読み手に対し”メッセージ”を放つものとも受け取れる。自分は日常で好意を寄せる相手に彼のような態度を取っていないだろうかと。

■自分が物語の登場人物だったら

違和感の正体を理解するのは後半なのだが、思い返してみると冒頭からすでに”伏線”が散りばめられている。この物語で自分が一番感情移入出来たのは、凪であるが。自分が彼の立場ならばもっと早く真実を話してしまったかもしれない。理由があるにしろ、隠しておけた彼は精神的に強く、それだけ強い想いを持っているという事だ。

■感動したこと

物語のその先を匂わせる描写を途中に入れつつ、希望のある終わりとするラストが印象的でした。読み手に彼らのその後を想像させ、余韻を残すというのがとても素敵だなと思う。

いじめの理由についてもただ理不尽と感じさせるだけでなく、ちゃんと物語の中で明確になっている。それに対して、仕方がないという括りではなく、彼が後悔しているからこそ、逢いに来たのだという気持ちが伝わって来ること。両想いのはずなのに事情があってサヨナラしなければいけないという、切なさ。簡単には上手くいかないものなんだな、と感じました。

□物語の先

夢のようにも感じてしまった彼との水族館の思い出が手元にちゃんと残っているのは、主人公の記憶を消さなくてはいけないけれど、覚えていて欲しかったという感情の現れでもあるのだろうと受け取りました。きっと近い将来、元の時間の中にいる凪が何か行動を起こし、主人公の生活を変えていくのではないかと想像します。しかし、同じ人間であっても”違う人に恋をしている”状態になるのかな?など、複雑な気持ちである。だからこそシステム上、記憶を消す必要があったのだろうと思うと切ないが、上手くできていると思わざるを得ない。
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