ドラゴンタトゥーの男

文字数 984文字



スズキ真実 様作

───ドラマチックで、まるで映画を観ているような錯覚すら起こす作品

【らしさを醸し出す表現力が素晴らしい】
(*途中までじっくり熟読し、ラストまでザッと閲読させていただいてのレビューです)

舞台はイギリスロンドン。ここに事件が絡むと見れば、パッと思い浮かぶのがロバート・ダウニーJrが主演のシャーロックホームズで目にした街並み。この作品の時代とは異なる時代が舞台とはなっているものの、ヨーロッパは日本とは違いそんなに街並みが激変することはない。
パッと浮かんだアンティークで、お洒落な街並みを想像しながら作品のページを開けば、そこには期待通りの世界観が広がっていた。ヨーロッパの雰囲気を出すには、ただ詳細に書くだけでは雰囲気を出すのが難しい。

言葉の使い方、表現の仕方というのも関わってくる。それは、小説や字幕を読んだときに違いが分かりやすい。この物語は、表現の仕方にもこだわりを感じた。好きでなければここまで醸し出すのは難しい。ただ単に、物語を紡いでいるだけでは出すことは出来ない。ヨーロッパ系の洋画が好きな方には是非ともおススメしたい。

【物語全体の魅力】

内容については麻薬などを取り扱っているが、お洒落さを感じる。性描写については妄想を掻き立てるものであり、直接的に書かれていなくても想像で補ってしまう。ある意味、BLの原点ともいえる。(妄想してしまうということ)

主要となる二人の駆け引きも魅力的で、ゆっくりと信頼関係を築き距離を縮めていくようななんとも、もどかしい感じが良い。こうなれば良いにのと、IFを想像させ、気づけば物語に夢中になっている。最後まで、世界観を壊すことなく完結しているところも魅力の一つである。

【BLというジャンルに入れてしまうのが惜しい作品】

とても印象に残ったのが、少年時代に起こしてしまった罪。
自分を守るためについた嘘が、他人の人生を大きく変えてしまうということ。

これは現代社会でも変わらないことである。若さとは、後先考えず、自分の身を守るためという狭い了見のみで行動しがちである。物語冒頭でも、若さゆえの心理というものが丁寧に描かれており、とても物語に入りやすい。

読みごたえもあり、世界観の再現力、心理描写のとても優れた作品です。
是非、お手に取られてみてはいかがでしょうか?
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