第7話
文字数 2,395文字
〈何にせよ、今は新しい情報が欲しいな〉
そう思っていると「彼」が自己紹介を。
「私はコール「コール・ロックチップ」です。よろしく」
言われて私も自己紹介をする。
「私は「ボルヘス・K・ジェローム」です」
「男性名のように聞こえるけれど?」
「そう名付けられたので」
自分のことを語りたくないのでコールに話をふる。
「コールさんはどのような人なのでしょうか?」
コールは困ったように髪に手を当てて話す。
「それが、記憶がないんだ。まるで、さっき夢から覚めて、起きたように、ここに立っているところから。まだ夢の中に意識が残っていて自分のことを忘れている。そんな感覚がしていた。しばらく経てば思い出せるかと考えたけれど、まだ思い出せない」
「記憶喪失、ですか?」
「みたいだ。名前だけは覚えているけれど」
〈態度、表情。嘘は言っているように思えないな〉
彼は、コールは敵ではないのかもしれない。私と同じように、この邸に、オカルトに迷い込んだ人物なのだろうか? そう考えれば、少なくとも「今は」話の辻褄が合う。そう考えていると、コールが私に聞いてくる。
「ボルヘスさんは?」
「えっと。私は邸の人間じゃないんです」
「というと? 来客ですか?」
「そうなんですが、どこから説明すれば」
私がそう言い淀んでいた時だ。
『――何故、お前がここに居る?』
先程の、この邸の主人と思われる男性の声で振り向く。
「彼」が、階段を降りてきて目の前に現れる。黒いストライプスーツに、ハットの男性。顔が見えないが「コールを見ている」それが、問題であるかのように。コールが、この邸の主人と思われる黒のストライプスーツの男性に聞く。
「「私のこと」を知っているのでしょうか?」
コールの疑問に彼は答えなかった。
「「余計な詮索」をしないように」
「あなたは一体誰ですか?」
男は「私はディアボロだ」と名乗った。そして「それ以上、調べないように」とコールに警告した。指を差して「念入り」に。
「君が、ここに存在していたいというのならば」
それだけ言い残すとディアボロは煙のように、消えた。
* * * * *
残された私たちは黙っていた。
〈やはり、この邸に何かあるようだ〉
私はリリーを見る。彼女がこの状況でどんな表情をしているのか気になったからだ。でも、彼女は私の顔を見ると「どうかしましたか?」と笑みを浮かべる。それが、やはりアジア的で、ラティーナと違って興味深い。
しばらく何かを考えて黙っていたコールだが。
「何だろう。気になるな」
コールはそう言って顎に手を当てて思案する。
「彼は「ディアボロは」私のことを知っているのだろうか?」
それは私も思っていた。
あの言い方。おそらく、ディアボロはコールのことを知っている。
見知らぬ人物が邸に居たのならば、名前を聞き出して事情を聞くだろう。私の時のように。でも、そうしなかった。そして邸から追い出すこともしなかった。そして、コールの記憶が失われていることも気になる。
全ての謎が、どこかで繋がっているんじゃないだろうか?
しばらく「Xの絵画」を見つめていたコールが言う。
「私はこの邸と「絵画」について調べようと思う」
彼の表情を見る限り、もう決めたことのようだ。
「記憶がないまま何もしないのも、気分が晴れないからね」
私は「出来る限り手伝います」と答えた。
「私も、この邸のことは気になっていて少し調べようと思っていたところです。まあ、もともと、この邸の調査のために来たので」
「この邸について何か知っているのかい?」
「ここは「心霊邸」なんです」
「心霊邸? そうなのか?」
「ここに「ファントム」という悪霊が居ると聞いて私はやってきたんです。私は、一応、オカルトを記事にして稼ぐ「心霊ライター」です」
「それは中々、珍しい職業だね」
「よく言われます。リリーは手伝えそうですか?」
リリーを見ると「ニコッ」と笑った。
「ええ、では、邸の中に飾られている絵画をもう一度案内します」
コールが「他にも絵画があるのか?」と聞いた。
「他の絵画も見てみたいよ。案内をお願いしたい」
* * * * *
私たちは邸の中の絵画、を調べることにした。
私を案内した時と「同じルート」でもう一度絵画を見る。
「これが「雨」になります」
私の心に響かなかった絵画たちだったが、コールは1枚目の絵画から心を奪われたように、絵画に見入っていた。まるで、私にだけ聞こえないような「絵画の声」が彼には聞こえていて、それを聞いているんじゃないかと思うくらいに。
「何か、感じるのでしょうか?」
私はコールにそう聞いた。
「何か、自分に関係しているような気がする」
コールがそう言った時だった。
絵画の世界が、ライターの炎のように音もなく、揺らめくように、幻想的に浮かび上がってきた。それに、恐る恐る手を伸ばして指先で触れたコールは「これは私の記憶だ」と言った。浮かび上がっていたシーンが、ふっ、と消えた。
その時『私は雨だった』という声が聞こえた。
その後、何事もなかったように邸の中は静かになった。
「思い出した。この絵画の風景は「私の記憶」の一部だ。ある日、こうして雨を見ていた。傘を差して憂鬱な気分だったのを思い出した。だが、何故……?」
幻想的な出来事に「心ここにあらず」のコール。
そのコールにリリーが告げる。
「絵画があなたに話しかけたのです」
告げられたコールがリリーを見る。
「君は……?」
「私は、一応「これらの絵画の管理」を任されています」
「何故? 君は、一体何者なんだ?」
リリーは、コールのその言葉にニコッと笑って「この邸の者ですが?」と言った。その笑顔を見た時〈これ以上、彼女に聞いてもきっと答えてくれないだろう〉と感じ取った。それはコールも同じように感じたようだ。
「次の絵画が見たいな。案内してくれるだろうか?」
「ええ、もちろんです」
そう思っていると「彼」が自己紹介を。
「私はコール「コール・ロックチップ」です。よろしく」
言われて私も自己紹介をする。
「私は「ボルヘス・K・ジェローム」です」
「男性名のように聞こえるけれど?」
「そう名付けられたので」
自分のことを語りたくないのでコールに話をふる。
「コールさんはどのような人なのでしょうか?」
コールは困ったように髪に手を当てて話す。
「それが、記憶がないんだ。まるで、さっき夢から覚めて、起きたように、ここに立っているところから。まだ夢の中に意識が残っていて自分のことを忘れている。そんな感覚がしていた。しばらく経てば思い出せるかと考えたけれど、まだ思い出せない」
「記憶喪失、ですか?」
「みたいだ。名前だけは覚えているけれど」
〈態度、表情。嘘は言っているように思えないな〉
彼は、コールは敵ではないのかもしれない。私と同じように、この邸に、オカルトに迷い込んだ人物なのだろうか? そう考えれば、少なくとも「今は」話の辻褄が合う。そう考えていると、コールが私に聞いてくる。
「ボルヘスさんは?」
「えっと。私は邸の人間じゃないんです」
「というと? 来客ですか?」
「そうなんですが、どこから説明すれば」
私がそう言い淀んでいた時だ。
『――何故、お前がここに居る?』
先程の、この邸の主人と思われる男性の声で振り向く。
「彼」が、階段を降りてきて目の前に現れる。黒いストライプスーツに、ハットの男性。顔が見えないが「コールを見ている」それが、問題であるかのように。コールが、この邸の主人と思われる黒のストライプスーツの男性に聞く。
「「私のこと」を知っているのでしょうか?」
コールの疑問に彼は答えなかった。
「「余計な詮索」をしないように」
「あなたは一体誰ですか?」
男は「私はディアボロだ」と名乗った。そして「それ以上、調べないように」とコールに警告した。指を差して「念入り」に。
「君が、ここに存在していたいというのならば」
それだけ言い残すとディアボロは煙のように、消えた。
* * * * *
残された私たちは黙っていた。
〈やはり、この邸に何かあるようだ〉
私はリリーを見る。彼女がこの状況でどんな表情をしているのか気になったからだ。でも、彼女は私の顔を見ると「どうかしましたか?」と笑みを浮かべる。それが、やはりアジア的で、ラティーナと違って興味深い。
しばらく何かを考えて黙っていたコールだが。
「何だろう。気になるな」
コールはそう言って顎に手を当てて思案する。
「彼は「ディアボロは」私のことを知っているのだろうか?」
それは私も思っていた。
あの言い方。おそらく、ディアボロはコールのことを知っている。
見知らぬ人物が邸に居たのならば、名前を聞き出して事情を聞くだろう。私の時のように。でも、そうしなかった。そして邸から追い出すこともしなかった。そして、コールの記憶が失われていることも気になる。
全ての謎が、どこかで繋がっているんじゃないだろうか?
しばらく「Xの絵画」を見つめていたコールが言う。
「私はこの邸と「絵画」について調べようと思う」
彼の表情を見る限り、もう決めたことのようだ。
「記憶がないまま何もしないのも、気分が晴れないからね」
私は「出来る限り手伝います」と答えた。
「私も、この邸のことは気になっていて少し調べようと思っていたところです。まあ、もともと、この邸の調査のために来たので」
「この邸について何か知っているのかい?」
「ここは「心霊邸」なんです」
「心霊邸? そうなのか?」
「ここに「ファントム」という悪霊が居ると聞いて私はやってきたんです。私は、一応、オカルトを記事にして稼ぐ「心霊ライター」です」
「それは中々、珍しい職業だね」
「よく言われます。リリーは手伝えそうですか?」
リリーを見ると「ニコッ」と笑った。
「ええ、では、邸の中に飾られている絵画をもう一度案内します」
コールが「他にも絵画があるのか?」と聞いた。
「他の絵画も見てみたいよ。案内をお願いしたい」
* * * * *
私たちは邸の中の絵画、を調べることにした。
私を案内した時と「同じルート」でもう一度絵画を見る。
「これが「雨」になります」
私の心に響かなかった絵画たちだったが、コールは1枚目の絵画から心を奪われたように、絵画に見入っていた。まるで、私にだけ聞こえないような「絵画の声」が彼には聞こえていて、それを聞いているんじゃないかと思うくらいに。
「何か、感じるのでしょうか?」
私はコールにそう聞いた。
「何か、自分に関係しているような気がする」
コールがそう言った時だった。
絵画の世界が、ライターの炎のように音もなく、揺らめくように、幻想的に浮かび上がってきた。それに、恐る恐る手を伸ばして指先で触れたコールは「これは私の記憶だ」と言った。浮かび上がっていたシーンが、ふっ、と消えた。
その時『私は雨だった』という声が聞こえた。
その後、何事もなかったように邸の中は静かになった。
「思い出した。この絵画の風景は「私の記憶」の一部だ。ある日、こうして雨を見ていた。傘を差して憂鬱な気分だったのを思い出した。だが、何故……?」
幻想的な出来事に「心ここにあらず」のコール。
そのコールにリリーが告げる。
「絵画があなたに話しかけたのです」
告げられたコールがリリーを見る。
「君は……?」
「私は、一応「これらの絵画の管理」を任されています」
「何故? 君は、一体何者なんだ?」
リリーは、コールのその言葉にニコッと笑って「この邸の者ですが?」と言った。その笑顔を見た時〈これ以上、彼女に聞いてもきっと答えてくれないだろう〉と感じ取った。それはコールも同じように感じたようだ。
「次の絵画が見たいな。案内してくれるだろうか?」
「ええ、もちろんです」