2 朱き戦士
文字数 2,325文字
四十川たちは光の方に歩いた。だが光は段々と弱くなりついには、はたり、と消えてしまった。
「……アレ? 消えたぞ。何だったんだ」
四十川は少し残念に思った。胸の高鳴りとワクワクをどーしてくれる。小さく舌打ちした。
「……センパイも見ましたか? ぼくもなんか、見えたんですけど……」
秋と四十川は不思議に呟くが、字浪はポカンとしている。
「……? なーにを言っているのです? 光? 街灯のですか? それにしても、何やら全く人気がありませぬな……」
ハゲはなんで見えていない? 目が悪い奴はこれだから駄目だな、と四十川は思った。しかし彼の黒縁メガネはダテだったことも思い出した。
「? センパイあれっ!」
秋が指差す方向、先ほど光あった場所を見ると、暗がりの中に一人の人間が倒れていた。おい大丈夫か? 四十川は倒れている者に呼びかけた。
その者は、男とも女ともつかぬなんとも端正な顔立ちで、傷一つ無いにも関わらずまるで、何かが抜け去ったかのようにぐったりとしていた。
「……あ、あなたは……」
やっと喋ったその者は、四十川を見、そして次に秋を見、何かに気付いたように少し目を見開いた。
「? あたしになんか用かい? つーかなんで倒れてんの」
四十川の声など耳に入っていないかのように、彼女の腕の中のその者は何も言わない。そして腕の中で感じられる重みがだんだんと引けていくような、生命が遠のいていくような感覚を、四十川は感じた。
「!? お、おい! 大丈夫か!? なんかヘンだぞ!」
「センパイそんなに大声で……」
秋がそう言いその者の顔を見た時、彼はその口がかすかに動いたように感じた。そして同じことを感じたのか、四十川もその口元を見つめていた。
「ア……マ……ト……」
その口から発せられた、小さくかすかな声。
いやそれは本当に発せられたのか、秋と四十川はまるで直接耳元で、脳内で語りかけられるような感覚を覚えた。
「……あまと? ……なんだって? おい……!」
四十川は半ば叫ぶように、揺さぶりながら聞き返した。
そしてはっきりと聞こえた。
「アマトとして、戦ってください」
と……。
四十川は秋を見た。彼も同じことを聞いたのか、耳を押さえ目を見開いて四十川の腕の中のその者を見ている。
「……戦えって? どういうこと……」
四十川がそう呟くと、その者はゆっくりと右手を伸ばし、そして四十川たちの方にそれを掲げた。そしてそこからまばゆい、夜の闇に突き刺さるかのような光が放たれた。
すると次の瞬間、秋と四十川の脳裏に戦いの、その身を変化させ戦う戦士のイメージがそれぞれに、それはノイズやもやがかかったように漠然と、しかし確かに浮かんだ。
3人は眩き光に目を閉じていた。そうしてどれほどの時が経ったか、しばらくして3人が目を開けるとそこには、もはや誰の姿もなかった。
「……?? な、何だったんだ一体……」
四十川は自分の腕を見た。先ほどまでその中にあった存在はなんだったのか、本当に存在したのかと――
「ううん…… 何だったんだあのイメージ……」
「……チビ! あんたも見たか? なんだかこう、戦ってるようなイメージ!」
「はい……。でもすごく漠然としてて……」
「……は? 何を言っているのです? そう言う仲間外れみたいなのはやめてほしいのですが……おや?」
言いながら字浪は気付いた。あれほどなかった人気が、いつものように街へ行こうとする学生や帰宅するサラリーマンなどで多少賑わい、そう以前に戻っている。
「あれ、さっきは確かにだーれもいなかったのになあ?」
「……センパイ、それもそうですけどさっきあの人が言ってたアマト? って何なんですかね……?」
「あーなんだか言ってたなあ。アマトになって戦ってください、だっけ?」
「……は? まーた二人でワケのわからぬことを……」
「なんだハゲさっきから。あんたボケッとして聞き逃したんじゃねえか?」
「いや、二人の言うイメージだのアマトだのと何の事やら…… あ、でもあのまばゆい光は強烈でしたなあ。何だったのですかなあアレは」
字浪の話を半分くらい右から左へ流しながら、四十川は両の拳をゆっくりと握り、自分の身体を見渡した。アマト。そして戦ってくださいと言う言葉。何だかわからないが、何事かが起こる、いや起こっている気がしてくる。
「……? オヤ何をしておるのです四十川氏。胸がまた成長しましたかナ。」
「……何言ってんだ。それよりあれだぞ、あたしたちはアマトとかいうのになるらしいぞ」
「だからそれは何なのですか……」
四十川は心の中でワクワクしていた。よく分からないが、何やらすごいことが起きた。
これこそ、自分の求めていた展開ではないかと。
ちょっと自分に何が起きたのか、確かめたくなった。
「アマトってなんなんでしょうねえ……」
秋は倒れている自分の自転車を直しながらそう呟いた。彼の子供のように大きく輝く目には、その先に見る満月が映るっている。
「……あれだろ、変身して戦うヒーローだろ!」
四十川は左手を満月に向けて伸ばし高らかに言い放つ。
「いやー、やっぱり好きですねセンパイは。でもどうやってアマトになるんですか?」
「とりあえず、変身ポーズとってみるんだよこういう時は。よおし、へーんし――」
四十川がいかにもという変身のポーズをとったその瞬間、彼女は朱いオーラか炎のようなものに包まれ
そして……
一人の戦士が、現れた。
「……アレ? 消えたぞ。何だったんだ」
四十川は少し残念に思った。胸の高鳴りとワクワクをどーしてくれる。小さく舌打ちした。
「……センパイも見ましたか? ぼくもなんか、見えたんですけど……」
秋と四十川は不思議に呟くが、字浪はポカンとしている。
「……? なーにを言っているのです? 光? 街灯のですか? それにしても、何やら全く人気がありませぬな……」
ハゲはなんで見えていない? 目が悪い奴はこれだから駄目だな、と四十川は思った。しかし彼の黒縁メガネはダテだったことも思い出した。
「? センパイあれっ!」
秋が指差す方向、先ほど光あった場所を見ると、暗がりの中に一人の人間が倒れていた。おい大丈夫か? 四十川は倒れている者に呼びかけた。
その者は、男とも女ともつかぬなんとも端正な顔立ちで、傷一つ無いにも関わらずまるで、何かが抜け去ったかのようにぐったりとしていた。
「……あ、あなたは……」
やっと喋ったその者は、四十川を見、そして次に秋を見、何かに気付いたように少し目を見開いた。
「? あたしになんか用かい? つーかなんで倒れてんの」
四十川の声など耳に入っていないかのように、彼女の腕の中のその者は何も言わない。そして腕の中で感じられる重みがだんだんと引けていくような、生命が遠のいていくような感覚を、四十川は感じた。
「!? お、おい! 大丈夫か!? なんかヘンだぞ!」
「センパイそんなに大声で……」
秋がそう言いその者の顔を見た時、彼はその口がかすかに動いたように感じた。そして同じことを感じたのか、四十川もその口元を見つめていた。
「ア……マ……ト……」
その口から発せられた、小さくかすかな声。
いやそれは本当に発せられたのか、秋と四十川はまるで直接耳元で、脳内で語りかけられるような感覚を覚えた。
「……あまと? ……なんだって? おい……!」
四十川は半ば叫ぶように、揺さぶりながら聞き返した。
そしてはっきりと聞こえた。
「アマトとして、戦ってください」
と……。
四十川は秋を見た。彼も同じことを聞いたのか、耳を押さえ目を見開いて四十川の腕の中のその者を見ている。
「……戦えって? どういうこと……」
四十川がそう呟くと、その者はゆっくりと右手を伸ばし、そして四十川たちの方にそれを掲げた。そしてそこからまばゆい、夜の闇に突き刺さるかのような光が放たれた。
すると次の瞬間、秋と四十川の脳裏に戦いの、その身を変化させ戦う戦士のイメージがそれぞれに、それはノイズやもやがかかったように漠然と、しかし確かに浮かんだ。
3人は眩き光に目を閉じていた。そうしてどれほどの時が経ったか、しばらくして3人が目を開けるとそこには、もはや誰の姿もなかった。
「……?? な、何だったんだ一体……」
四十川は自分の腕を見た。先ほどまでその中にあった存在はなんだったのか、本当に存在したのかと――
「ううん…… 何だったんだあのイメージ……」
「……チビ! あんたも見たか? なんだかこう、戦ってるようなイメージ!」
「はい……。でもすごく漠然としてて……」
「……は? 何を言っているのです? そう言う仲間外れみたいなのはやめてほしいのですが……おや?」
言いながら字浪は気付いた。あれほどなかった人気が、いつものように街へ行こうとする学生や帰宅するサラリーマンなどで多少賑わい、そう以前に戻っている。
「あれ、さっきは確かにだーれもいなかったのになあ?」
「……センパイ、それもそうですけどさっきあの人が言ってたアマト? って何なんですかね……?」
「あーなんだか言ってたなあ。アマトになって戦ってください、だっけ?」
「……は? まーた二人でワケのわからぬことを……」
「なんだハゲさっきから。あんたボケッとして聞き逃したんじゃねえか?」
「いや、二人の言うイメージだのアマトだのと何の事やら…… あ、でもあのまばゆい光は強烈でしたなあ。何だったのですかなあアレは」
字浪の話を半分くらい右から左へ流しながら、四十川は両の拳をゆっくりと握り、自分の身体を見渡した。アマト。そして戦ってくださいと言う言葉。何だかわからないが、何事かが起こる、いや起こっている気がしてくる。
「……? オヤ何をしておるのです四十川氏。胸がまた成長しましたかナ。」
「……何言ってんだ。それよりあれだぞ、あたしたちはアマトとかいうのになるらしいぞ」
「だからそれは何なのですか……」
四十川は心の中でワクワクしていた。よく分からないが、何やらすごいことが起きた。
これこそ、自分の求めていた展開ではないかと。
ちょっと自分に何が起きたのか、確かめたくなった。
「アマトってなんなんでしょうねえ……」
秋は倒れている自分の自転車を直しながらそう呟いた。彼の子供のように大きく輝く目には、その先に見る満月が映るっている。
「……あれだろ、変身して戦うヒーローだろ!」
四十川は左手を満月に向けて伸ばし高らかに言い放つ。
「いやー、やっぱり好きですねセンパイは。でもどうやってアマトになるんですか?」
「とりあえず、変身ポーズとってみるんだよこういう時は。よおし、へーんし――」
四十川がいかにもという変身のポーズをとったその瞬間、彼女は朱いオーラか炎のようなものに包まれ
そして……
一人の戦士が、現れた。