5 新たなるアマナム

文字数 1,632文字

 黒いアマトとアマナムの戦い。はっきり言って、アマトは押されていた。
 黒いアマトの、人を超えた力による重い一撃、一撃。それらはほとんどがかわされ、アマナムはまるで遊んでいるかのように跳ね回っていた。
 そして一閃、アマナムは飛び掛かり黒いアマトを吹っ飛ばした。

「くっ、この化物め……」

 黒きアマトは膝をつきよろめいた。
 なぜこんな目に合わねばならないのだ。そんな思いが頭を巡る。
 すると、跳ね回るアマナムを一発の銃弾がかすめた。
 
「くそ、ああすばしっこいと当たらん!」

「アンタそれかっくいーな。ちょっと貸して?」

「ああ! 何をする!」

 四十川はRXの銃をかすめ取ると、アマナムめがけて走っていく。
 なびくポニーテール、大地を蹴る信じられぬ力。四十川は思った。今、間違いなく自分はヒーローだと。悪きを倒すのだ。なんだかよく分からない、アマナムとかいうやつを――

「っしゃー! あたしの力、どれほどのもんか試してやる!」

 アマナムは飛び跳ねて逃げる。だがなんと、四十川はそれに追いついていく。――完全にあたしはヒーローだ!
 四十川はアマナムを攻撃することも忘れ、嬉しそうに飛び回っている。

「あははー! すげースピード! さーいこうだぜー! おっと、ちゃんと敵さんを倒さないとなァ!」

 四十川は飛び回りながら、借りてきた銃を撃とうとする。だが引き金を引いてもその大層な作りの銃はなにも起きない。

「? おいコラ蒼いの! 不良品だ!」

「ばか! 俺の手を離れると勝手にロックがかかるのだ!」

「は? はー使えねえ。いらんわこんなモンっ!」

 四十川は銃を投げ返すと、同時にアマナムに組みかかり、腹部に拳で一撃を食らわせる。だがその感触は、到底人間などでは、ましてや同じ大きさの生物とは思えないほど硬かった。まるでゾウの腹でも殴っているようだ、殴ったコトないけど。四十川は思った。

「ギュェアッ!」

 隙だらけの四十川の脇腹を、アマナムは思い切り蹴とばした。激しい激痛と共に四十川はアマト研究所横の畑に激突、ものすごい土煙を立てた。

「あーがが痛え! でーも負けてられるかよ!」

 迸るアドレナリン。
 四十川は攻撃を受けた脇腹を見た。明らかに人間のものでは無いそこは、しかし確かに痛みを発している。
――こんなところでボケッとしていられるか!
 痛みにもめげず、四十川は再びアマナムめがけて走り出した。

「おい待て!」

 RXが四十川を制止した。

「……蒼いの! なんだよ急に!」

「お前はなかなか素早いようだ。だからお前がまずあのアマナムを捕えろ。そこを俺が攻撃する。いいか!?」

「んー。まあいいか。あんた場慣れしてそうだしな。……でも待てよ、あっちで倒れてる黒いアマト? はどうするよ?」

 四十川は黒いアマトの方を見た。なぜか跪いたまま動かず、アマナムの方を睨んでいる。

「……よく分からんが、あいつはずっと動かない。……アマトらしいが、そんなヤツをアテにはできん……」

 RXは黒いアマトの方を見てそう呟いた。なにか、含みのある言い方で。
 
「……そうなん? 変なヤツ。……まあいっちょ、あたしとあんたでやってみるかい!」

 四十川とRXはアマナムに向かって走り出した。


 一方黒いアマト。
 彼はRXと四十川が加勢して以来、彼は戦わない。それどころか、一歩も動こうとはしないのだ。

 最近アマナムをよく倒しているRXと、みょうちくりんな女のアマトが現れた。……自分が戦う必要などないだろう――
 彼はそう考え、立ち上がり四十川たちとは正反対の方向に歩き出した。だがそんな彼の前に、何者かが立ちはだかった。

「――何をやっているのデス? アマトであるアナタが戦わないのというのデスか?」

 そう言葉を発したそれは、
 間違いなく、深い、緑色の

 アマナムであった。
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