6 崩れ去るアマナム
文字数 3,257文字
一方、ぴょんぴょんすばしっこく跳ねるアマナムと戦うため協力関係となった四十川とRX。
とりあえず四十川がアマナムを捕まえ、それをRXが攻撃するというシンプルな作戦となった。
四十川はアマナム目指し、超スピードで走りだす。そしてアマナムは走り逃げる。だが、全力疾走にも見えるアマナムに四十川は追いついてしまった。
「よおアマナムちゃん。捕まえちゃうゾッ!」
そう言った四十川がアマナムに飛び掛かろうとすると、アマナムは真上に高く、高く10㍍以上もジャンプし、5~6㍍の高さのアマト研究所の屋根に飛び乗った。その際屋根がベリリと抜けた。
跳躍力では、アマナムが上のようだ。
「なめんなこらーーー!」
四十川もアマナムには劣るものの、そばのイチョウの木よりも高く跳び上がり、美しい身体の放物線を描きアマト研究所の屋根に華麗に着地した。
屋根の上で対峙する2つ。
四十川は躊躇なくジャンプし、飛び蹴りを食らわせようとした。しかし四十川の素早いその動きも、アマナムはあっさり避けた。
「んー、速さじゃ互角だがすばしっこさではあんたが上か」
四十川はイチョウの木に飛び移るとそう言った。だが勿論アマナムは反応などしない。アマナムってのは喋れねえのか。四十川はそう思った。
――どうする。アマナムってのは素早くて捕まえられねえ。
そう思った四十川は、一計を案じ屋根からひょいと飛び降りた。アマナムもそれを追いぴょんと飛び降りる。
「……と思ってたのかい!?」
アマナムからの死角、四十川は片手で2階の窓枠にぶら下がっていた。そして建物の壁を蹴ると空中のアマナム向かって真横に真っすぐ跳んでみせた。四十川が蹴ったアマト研究所の木造の壁はみしりと音を立てて凹む。
みごと四十川はアマナムを空中でキャッチ、後ろから羽交い締めにし地面に着地した。
「よくやった! そのまま押さえてろ!」
RXはそう言うが、アマナムはものすごい力で四十川を振りほどこうとし、四十川の朱く長い脚を絡まされた状態で地面を跳ね回る。
「クッソ! 暴れんなこのばか!」
四十川はアマナムをボコボコ殴るが、あまり効いている様子はない。それどころか力は四十川を上回っており、四十川は振りほどかれまいと必死だ。
RXは銃をアマナムに向けるが、アマナムと四十川はもう、絡まってるとしか言いようがない程ゴチャゴチャな状態だ。四十川がアマナムを羽交い締めにしながら殴る蹴る、そしてアマナムはそんな状態でも辛うじてぴょんぴょんと飛び跳ねている。中々見られる画ではないだろう。
「おい! もっと押さえつけろ!」
RXは跳ぶは殴るは蹴るはのバカみたいな絵面と定まらない狙いにイライラしている。そして腰の武器、そうそれも秘密兵器ともいえるそれをホルダから外し彼はそれを見る。――これを使っていけるだろうか? 判断は迷う。
「無理だ! もういいから撃て!」
四十川のその一言で、饗庭は先程ホルダから出した武器をしまう。そして絵面はバカみたいだが必死に踏ん張る四十川に向け
「ばか! お前に当たるぞ!」
と言った。
「大丈夫だ多分! いいから!」
四十川もアマナムとこんがらがりながら半ばやけくそだ。
「ええい!」
RXの中の男、饗庭尚道 は射撃には大変な自信がある。かと言ってこのこんがらがった状況、絶対に四十川に当たらないとは限らない。
すると四十川が叫び続けるのが聞こえた。撃て、撃て、と。これを聞いて彼は意を決し、四十川を信じ、その蒼い銃をセミオートで連射した。
通常の銃ではありえぬ大きさの銃口から発射されたフルタルジャケットの弾丸は、確実に、一発一発アマナムへと当っていった。誰がどう見ても、威力は明らかに通常の銃を上回るものだ。
だが、弾丸はその身体を貫くどころか、なんと、アマナムの身体に少しめり込む程度。
饗庭がRXの中で苦い顔をする中、撃たれた痛みからかアマナムは気味の悪い悲鳴を上げた。そして、後ろからしがみつく四十川をもろともせず体を回転せた。
饗庭は全く効いていないわけではないと確信、セミオートの引き金を引きさらにアマナムに連発で食らわせようとした。だがその時アマナムは体を回転、それゆえ銃弾はアマナムにへりつくばっていた四十川の尻に当たってしまった。赤い、信じられないほど紅い血がアマトの身体の四十川の尻からドロドロと流れ出した。
「……! い、いったあぁ~~い!?」
自分の身体に突き刺さる銃弾、飛び散る血しぶき。信じられない光景に四十川は正直心の底から驚き感じたことのない恐怖が身体を駆け巡った。
だが意外、痛みは想像したそれ程ではなかった。
「お、おい大丈夫か!」
10㍍ほど後方からRXが叫ぶ。しまった、こうなることは十分考えられた…… 彼は後悔した。
四十川は自分の尻を見た。太さは自分の指ほどの、メタルジャケットの弾丸が突き刺さっている。
四十川はそれをズボリと抜くと、RXの方にそれを投げ
「大丈夫だ! それほど大したモンじゃない!」
と叫んだ。
――! 流石はアマト……
自分も、饗庭尚道 たる自分自身も、あれ程強くなれたら――
一瞬、RXを身に着けた饗庭の脳裏に、かつてのアマトにあこがれた強い思いが巡った。
そしてハッと身をとりなおし、銃を左の腰に固定すると、今度は右の腰から超振動ブレード、RG-B7を取りだした。
「……おい女! そのままもう少しだけ押さえていろ!」
饗庭はそう言うと、そのRG-B7の根元にあるスイッチを入れ、それを構えてアマナム向けて走り出した。
刃渡りはたった20㌢ほど。だが威力は強力だ。饗庭はそれを強く握りしめた。
――なんか強そうな武器だな!
そう思い四十川は、尻の痛みに耐えながら一層強くアマナムを拘束した。
――外せない。万が一間違えれば、この武器はアマトの女を切り裂いてしまうだろう。
饗庭は意識を最大限集中し、RG-B7を腰の位置に構え、そして、アマナムの腹に突き刺した。
「ギュェエアアアア!」
悲痛な声を発し、力強く暴れるアマナム。余りの力に四十川は振りほどかれ、その場に倒れた。
RG-B7のその刃は深くアマナムに突き刺さっている。そして饗庭がそれを力強く抜き去ると、アマナムはその場に崩れ落ちた。
「……やったか!?」
四十川は地面からアマナムとRXを見上げガッツポーズをした。
尻の痛みは、もう引いていた。
アマナムは地面に突っ伏した状態で動かない。
饗庭はその手のひらほどの大きさのRG-B7の刃を回転させ柄の部分へとしまうと、それを腰に戻した。
「もうこいつは終わりだろう。少しつついてみろ」
饗庭が言うので、四十川は足で倒れ動かぬアマナムを小さく蹴ってみた。
それは蹴った部分からボロボロと崩れていった。
「うわーなんじゃいこれ!」
四十川は驚いた。さっきまで力強く暴れていた生物が、今は土くれのように崩れ去っている。
もう何でもアリやんけ、そう思った。
「アマナムは死ぬとそうなる。……お前そんな事も知らんとはな。まさかアマナムと戦ったのは初めてか」
「うん。そうだよ」 四十川は饗庭にピースしながらそう言った。
「……なんだ。話にならん。……俺は今まで何度もアマナムを倒しているぞ。このRXのおかげだがな」
「なんだジマンかよ」
「……いや別にそういうコトでは……」
言いながら饗庭は胸にあるゲージを見つめた。目盛が4分の1以下だ。危なかったと饗庭は胸をなでおろした。
「――おや。これすごい。噂のRXとやらは流石デスね」
その時、四十川たちの背後からその声がした。
そこにたのは、ぐったりとした黒いアマトを肩に担いで悠々と歩くアマナムの姿だった――――
とりあえず四十川がアマナムを捕まえ、それをRXが攻撃するというシンプルな作戦となった。
四十川はアマナム目指し、超スピードで走りだす。そしてアマナムは走り逃げる。だが、全力疾走にも見えるアマナムに四十川は追いついてしまった。
「よおアマナムちゃん。捕まえちゃうゾッ!」
そう言った四十川がアマナムに飛び掛かろうとすると、アマナムは真上に高く、高く10㍍以上もジャンプし、5~6㍍の高さのアマト研究所の屋根に飛び乗った。その際屋根がベリリと抜けた。
跳躍力では、アマナムが上のようだ。
「なめんなこらーーー!」
四十川もアマナムには劣るものの、そばのイチョウの木よりも高く跳び上がり、美しい身体の放物線を描きアマト研究所の屋根に華麗に着地した。
屋根の上で対峙する2つ。
四十川は躊躇なくジャンプし、飛び蹴りを食らわせようとした。しかし四十川の素早いその動きも、アマナムはあっさり避けた。
「んー、速さじゃ互角だがすばしっこさではあんたが上か」
四十川はイチョウの木に飛び移るとそう言った。だが勿論アマナムは反応などしない。アマナムってのは喋れねえのか。四十川はそう思った。
――どうする。アマナムってのは素早くて捕まえられねえ。
そう思った四十川は、一計を案じ屋根からひょいと飛び降りた。アマナムもそれを追いぴょんと飛び降りる。
「……と思ってたのかい!?」
アマナムからの死角、四十川は片手で2階の窓枠にぶら下がっていた。そして建物の壁を蹴ると空中のアマナム向かって真横に真っすぐ跳んでみせた。四十川が蹴ったアマト研究所の木造の壁はみしりと音を立てて凹む。
みごと四十川はアマナムを空中でキャッチ、後ろから羽交い締めにし地面に着地した。
「よくやった! そのまま押さえてろ!」
RXはそう言うが、アマナムはものすごい力で四十川を振りほどこうとし、四十川の朱く長い脚を絡まされた状態で地面を跳ね回る。
「クッソ! 暴れんなこのばか!」
四十川はアマナムをボコボコ殴るが、あまり効いている様子はない。それどころか力は四十川を上回っており、四十川は振りほどかれまいと必死だ。
RXは銃をアマナムに向けるが、アマナムと四十川はもう、絡まってるとしか言いようがない程ゴチャゴチャな状態だ。四十川がアマナムを羽交い締めにしながら殴る蹴る、そしてアマナムはそんな状態でも辛うじてぴょんぴょんと飛び跳ねている。中々見られる画ではないだろう。
「おい! もっと押さえつけろ!」
RXは跳ぶは殴るは蹴るはのバカみたいな絵面と定まらない狙いにイライラしている。そして腰の武器、そうそれも秘密兵器ともいえるそれをホルダから外し彼はそれを見る。――これを使っていけるだろうか? 判断は迷う。
「無理だ! もういいから撃て!」
四十川のその一言で、饗庭は先程ホルダから出した武器をしまう。そして絵面はバカみたいだが必死に踏ん張る四十川に向け
「ばか! お前に当たるぞ!」
と言った。
「大丈夫だ多分! いいから!」
四十川もアマナムとこんがらがりながら半ばやけくそだ。
「ええい!」
RXの中の男、
すると四十川が叫び続けるのが聞こえた。撃て、撃て、と。これを聞いて彼は意を決し、四十川を信じ、その蒼い銃をセミオートで連射した。
通常の銃ではありえぬ大きさの銃口から発射されたフルタルジャケットの弾丸は、確実に、一発一発アマナムへと当っていった。誰がどう見ても、威力は明らかに通常の銃を上回るものだ。
だが、弾丸はその身体を貫くどころか、なんと、アマナムの身体に少しめり込む程度。
饗庭がRXの中で苦い顔をする中、撃たれた痛みからかアマナムは気味の悪い悲鳴を上げた。そして、後ろからしがみつく四十川をもろともせず体を回転せた。
饗庭は全く効いていないわけではないと確信、セミオートの引き金を引きさらにアマナムに連発で食らわせようとした。だがその時アマナムは体を回転、それゆえ銃弾はアマナムにへりつくばっていた四十川の尻に当たってしまった。赤い、信じられないほど紅い血がアマトの身体の四十川の尻からドロドロと流れ出した。
「……! い、いったあぁ~~い!?」
自分の身体に突き刺さる銃弾、飛び散る血しぶき。信じられない光景に四十川は正直心の底から驚き感じたことのない恐怖が身体を駆け巡った。
だが意外、痛みは想像したそれ程ではなかった。
「お、おい大丈夫か!」
10㍍ほど後方からRXが叫ぶ。しまった、こうなることは十分考えられた…… 彼は後悔した。
四十川は自分の尻を見た。太さは自分の指ほどの、メタルジャケットの弾丸が突き刺さっている。
四十川はそれをズボリと抜くと、RXの方にそれを投げ
「大丈夫だ! それほど大したモンじゃない!」
と叫んだ。
――! 流石はアマト……
自分も、
一瞬、RXを身に着けた饗庭の脳裏に、かつてのアマトにあこがれた強い思いが巡った。
そしてハッと身をとりなおし、銃を左の腰に固定すると、今度は右の腰から超振動ブレード、RG-B7を取りだした。
「……おい女! そのままもう少しだけ押さえていろ!」
饗庭はそう言うと、そのRG-B7の根元にあるスイッチを入れ、それを構えてアマナム向けて走り出した。
刃渡りはたった20㌢ほど。だが威力は強力だ。饗庭はそれを強く握りしめた。
――なんか強そうな武器だな!
そう思い四十川は、尻の痛みに耐えながら一層強くアマナムを拘束した。
――外せない。万が一間違えれば、この武器はアマトの女を切り裂いてしまうだろう。
饗庭は意識を最大限集中し、RG-B7を腰の位置に構え、そして、アマナムの腹に突き刺した。
「ギュェエアアアア!」
悲痛な声を発し、力強く暴れるアマナム。余りの力に四十川は振りほどかれ、その場に倒れた。
RG-B7のその刃は深くアマナムに突き刺さっている。そして饗庭がそれを力強く抜き去ると、アマナムはその場に崩れ落ちた。
「……やったか!?」
四十川は地面からアマナムとRXを見上げガッツポーズをした。
尻の痛みは、もう引いていた。
アマナムは地面に突っ伏した状態で動かない。
饗庭はその手のひらほどの大きさのRG-B7の刃を回転させ柄の部分へとしまうと、それを腰に戻した。
「もうこいつは終わりだろう。少しつついてみろ」
饗庭が言うので、四十川は足で倒れ動かぬアマナムを小さく蹴ってみた。
それは蹴った部分からボロボロと崩れていった。
「うわーなんじゃいこれ!」
四十川は驚いた。さっきまで力強く暴れていた生物が、今は土くれのように崩れ去っている。
もう何でもアリやんけ、そう思った。
「アマナムは死ぬとそうなる。……お前そんな事も知らんとはな。まさかアマナムと戦ったのは初めてか」
「うん。そうだよ」 四十川は饗庭にピースしながらそう言った。
「……なんだ。話にならん。……俺は今まで何度もアマナムを倒しているぞ。このRXのおかげだがな」
「なんだジマンかよ」
「……いや別にそういうコトでは……」
言いながら饗庭は胸にあるゲージを見つめた。目盛が4分の1以下だ。危なかったと饗庭は胸をなでおろした。
「――おや。これすごい。噂のRXとやらは流石デスね」
その時、四十川たちの背後からその声がした。
そこにたのは、ぐったりとした黒いアマトを肩に担いで悠々と歩くアマナムの姿だった――――