4 黒いアマト
文字数 2,774文字
アマト研究所の屋根へ飛び乗ったアマナムは、RXの銃撃を避けると2階の窓ガラスを割り、建物内へ侵入した。
「きゃああああ!」
妙に殺風景な、折りたたまれた机と椅子しかない部屋で白衣の女性は叫ぶ。アマナムは数メートルまで迫っている。秋と字浪は女性を守る、といきたいがそういう訳にもいかずあたふたしている。
白人の黒コートの男は、苦々しい顔でアマナムを見ていた。
「ギュェッ」
不気味な声を上げ、アマナムは威嚇する。そして、黒い石の様な物で覆われた目、というより顔で秋と白人の男を交互に見渡した。
「ギュギャッ」
アマナムは意を決した様に、壁に張り付いて怯えている秋めがけて襲いかかった。
「うわぁあ!」
悲鳴を上げる秋の横で、白人の男は疑問を感じていた。なぜアマナムは自分を襲はないのだ? と。そう思うとともに、これならアマナムから逃げられ得るかもしれない、とも思っていた。
――いや、守らねば。
アマナムに狙われたあの少年。彼はきっとアマトになりえる人間なのだろう。このままだと、確実に殺される。私はやはり、見逃すことは出来ない――
そう心の中で思った男のとった行動は―――
黒いオーラとともに、姿を変えることだった。
「……! あなたは……?」
全身は黒く、人である部分は残っていない。その姿はまるでどこか、生きた西洋甲冑のようだ。
変身した男はアマナムを羽交い締めにする。だがアマナムはそれを振りほどく。
「……私がこいつを何とかする! 貴様たちは離れていろっ!」
黒きアマトとなった男がアマナムと組み合いながそう言うと、3人は慌てて部屋を出ていった。だが、白衣の女性は廊下から窓ガラス越しに戦いを見つめようとする。慌てて秋が止めに入る。
「は、白衣のお姉さん! 何やってるんすか逃げましょう!」
「で、でも…… 貴重なアマトの戦いを見られるチャンスなんです!」
「そんな…… でも危な……うわあっ!」
黒きアマトはアマナムに投げ飛ばされ、白衣の女性が見ている窓のすぐそばに大きな音とともに激突した。
女性は悲鳴とともに倒れ、秋が介抱する。
黒きアマトは再び立ち上がると、アマナムに向き合った。
「くっ…… 何故貴様らはどこからともなく現れ、私たちを狙う!」
男は問うが、アマナムは不気味な声をあげるだけで、言葉を理解しているのかさえ分からない。
「……何故私は、こんな奴らに…… くそっ!」
そう言うと男は素早くアマナムの真横に回り込み、アマナムに拳を入れる。
アマナムは室内故自慢の素早さを活かしきれずにいるようだ。
「フン…… 余り頭は良くないようだ……」
男は今度は正面より拳を食らわせようとする。だがアマナムは天井に張り付くようにそれを避け、男の後ろに回り込み羽交い絞めにしてしまった。
「くそ! 何をする!」
そしてアマナムは壁を蹴り真横にジャンプ、窓に向かって飛んでいく。
「ああっ! アマトさま!」
白衣の女の叫びもむなしく、男を掴んだまま窓ガラスの割れる激しい音とともに、窓からアマナムは落ちていった。
------
一方、四十川たちはアマナムが忍び込んだアマト研究所へ入り口から入った。
重そうなRXという機械の鎧をまとう男が意外にきびきび動くので、四十川は驚いている。
「すげーなそれ、重くないのか? ……ん? つーかお前、ロボットか?」
「そんな訳があるか!」
「へーじゃあサイボーグ……改造人間!」
「そういうモノでもないっ! さっきも少し言っただろう、これはRXシステムといういわば、機械の鎧だ。それを俺が着ているのだ」
「へーかっちょいー! 特撮みたいだな!」
四十川は走りながらRXをベタベタ触った。RXのようなものを彼女は何度も見て来た。そう、特撮ヒーロー作品の中で。
「……さわるな! それより敵を探せ!」
RXに興味シンシンの四十川は、蒼き鎧を身にまとった男に親しげに話しかけ続けていたが、アマナムは見つからない。すると2階から、建物自体を揺るがすほどの大きな振動と音がする。
「!? 2階か! くそ、さっきから貴様のせいで仕事が捗らん!」
「お~いそんな邪険にするなって待てよ~」
急いで2階に向かうRXを、四十川は楽しそうに追いかけていった。
-----
外に放り出された黒きアマトとアマナム。
地面に衝突した瞬間、黒きアマトとなった男はアマナムの羽交い締めから逃れることが出来た。
黒きアマトたる男は考えた。何処へ行ってしまったか知らないが、さっきはRXとかいう対アマナム専用の特殊スーツを着た者がいた。それならば、目の前のアマナムも退治してくれるかもしれない。3人の人間は研究所の中にいる。逃げるのは今のうちか――
だがアマナムの方はもう迷わない。
外に出て障害物もなくなった。地面を蹴り、その草食動物のようなしなやかな足で真っ直ぐ黒きアマトに突進してゆく。黒いアマトもいやおうなしに応戦する。
再び2つはぶつかり合った。
-----
アマト研究所の2階へたどり着いたRXと四十川アマトは、割れたガラスを片付ける秋と字浪、そして割れた窓ガラスから外を除く白衣の女を目にした。
「アマナムはどこへ行った?」
そうRXが訪ねると、白衣の女が興奮気味に答えた。
「あ、アレックス……RXさま! 大変です! 黒いアマトの方とアマナムが今しがた外に!」
「何……! くそう、変な女が絡んでくるから……」
RXは窓から下を見、アマナムと黒い戦士を確認すると白衣の女に質問する。
「あの黒いのは…… まさかアマトか!?」
「は、はい……。そうだと思います……」
「いつの間にそんなのが……。……まあいい。手間が省けるからここから飛び降りさせてもらうぞ」
そう言ってRXは、躊躇なく窓から飛び降り、まるで機械の鎧など着ていないかのような動きを見せ3点で地面に着地した。
「うっわアイツすっげー!」
四十川はそれを見て興奮している。そして白衣の女に質問する。
「ところであの、下で戦ってる黒いのはなんだ?」
「あれは、先ほどいた黒い服の名も知らぬ白人さまです。まさかアマトだったとは……」
成程確かにアマトに詳しそうだったしな、四十川は思った。
そして窓から、戦いを求めて放物線を描いて飛びだし、ポーズをとって四十川は着地した。
「今度こそ倒すぜアマナムちゃん!」
そう言うとRXを追いかけアマナムへと向かった。
「しかし、何故アマナムは最初、秋氏を狙ったのでしょうなあ」
字浪はガラスを拾いながら、そう呟いた。
「きゃああああ!」
妙に殺風景な、折りたたまれた机と椅子しかない部屋で白衣の女性は叫ぶ。アマナムは数メートルまで迫っている。秋と字浪は女性を守る、といきたいがそういう訳にもいかずあたふたしている。
白人の黒コートの男は、苦々しい顔でアマナムを見ていた。
「ギュェッ」
不気味な声を上げ、アマナムは威嚇する。そして、黒い石の様な物で覆われた目、というより顔で秋と白人の男を交互に見渡した。
「ギュギャッ」
アマナムは意を決した様に、壁に張り付いて怯えている秋めがけて襲いかかった。
「うわぁあ!」
悲鳴を上げる秋の横で、白人の男は疑問を感じていた。なぜアマナムは自分を襲はないのだ? と。そう思うとともに、これならアマナムから逃げられ得るかもしれない、とも思っていた。
――いや、守らねば。
アマナムに狙われたあの少年。彼はきっとアマトになりえる人間なのだろう。このままだと、確実に殺される。私はやはり、見逃すことは出来ない――
そう心の中で思った男のとった行動は―――
黒いオーラとともに、姿を変えることだった。
「……! あなたは……?」
全身は黒く、人である部分は残っていない。その姿はまるでどこか、生きた西洋甲冑のようだ。
変身した男はアマナムを羽交い締めにする。だがアマナムはそれを振りほどく。
「……私がこいつを何とかする! 貴様たちは離れていろっ!」
黒きアマトとなった男がアマナムと組み合いながそう言うと、3人は慌てて部屋を出ていった。だが、白衣の女性は廊下から窓ガラス越しに戦いを見つめようとする。慌てて秋が止めに入る。
「は、白衣のお姉さん! 何やってるんすか逃げましょう!」
「で、でも…… 貴重なアマトの戦いを見られるチャンスなんです!」
「そんな…… でも危な……うわあっ!」
黒きアマトはアマナムに投げ飛ばされ、白衣の女性が見ている窓のすぐそばに大きな音とともに激突した。
女性は悲鳴とともに倒れ、秋が介抱する。
黒きアマトは再び立ち上がると、アマナムに向き合った。
「くっ…… 何故貴様らはどこからともなく現れ、私たちを狙う!」
男は問うが、アマナムは不気味な声をあげるだけで、言葉を理解しているのかさえ分からない。
「……何故私は、こんな奴らに…… くそっ!」
そう言うと男は素早くアマナムの真横に回り込み、アマナムに拳を入れる。
アマナムは室内故自慢の素早さを活かしきれずにいるようだ。
「フン…… 余り頭は良くないようだ……」
男は今度は正面より拳を食らわせようとする。だがアマナムは天井に張り付くようにそれを避け、男の後ろに回り込み羽交い絞めにしてしまった。
「くそ! 何をする!」
そしてアマナムは壁を蹴り真横にジャンプ、窓に向かって飛んでいく。
「ああっ! アマトさま!」
白衣の女の叫びもむなしく、男を掴んだまま窓ガラスの割れる激しい音とともに、窓からアマナムは落ちていった。
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一方、四十川たちはアマナムが忍び込んだアマト研究所へ入り口から入った。
重そうなRXという機械の鎧をまとう男が意外にきびきび動くので、四十川は驚いている。
「すげーなそれ、重くないのか? ……ん? つーかお前、ロボットか?」
「そんな訳があるか!」
「へーじゃあサイボーグ……改造人間!」
「そういうモノでもないっ! さっきも少し言っただろう、これはRXシステムといういわば、機械の鎧だ。それを俺が着ているのだ」
「へーかっちょいー! 特撮みたいだな!」
四十川は走りながらRXをベタベタ触った。RXのようなものを彼女は何度も見て来た。そう、特撮ヒーロー作品の中で。
「……さわるな! それより敵を探せ!」
RXに興味シンシンの四十川は、蒼き鎧を身にまとった男に親しげに話しかけ続けていたが、アマナムは見つからない。すると2階から、建物自体を揺るがすほどの大きな振動と音がする。
「!? 2階か! くそ、さっきから貴様のせいで仕事が捗らん!」
「お~いそんな邪険にするなって待てよ~」
急いで2階に向かうRXを、四十川は楽しそうに追いかけていった。
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外に放り出された黒きアマトとアマナム。
地面に衝突した瞬間、黒きアマトとなった男はアマナムの羽交い締めから逃れることが出来た。
黒きアマトたる男は考えた。何処へ行ってしまったか知らないが、さっきはRXとかいう対アマナム専用の特殊スーツを着た者がいた。それならば、目の前のアマナムも退治してくれるかもしれない。3人の人間は研究所の中にいる。逃げるのは今のうちか――
だがアマナムの方はもう迷わない。
外に出て障害物もなくなった。地面を蹴り、その草食動物のようなしなやかな足で真っ直ぐ黒きアマトに突進してゆく。黒いアマトもいやおうなしに応戦する。
再び2つはぶつかり合った。
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アマト研究所の2階へたどり着いたRXと四十川アマトは、割れたガラスを片付ける秋と字浪、そして割れた窓ガラスから外を除く白衣の女を目にした。
「アマナムはどこへ行った?」
そうRXが訪ねると、白衣の女が興奮気味に答えた。
「あ、アレックス……RXさま! 大変です! 黒いアマトの方とアマナムが今しがた外に!」
「何……! くそう、変な女が絡んでくるから……」
RXは窓から下を見、アマナムと黒い戦士を確認すると白衣の女に質問する。
「あの黒いのは…… まさかアマトか!?」
「は、はい……。そうだと思います……」
「いつの間にそんなのが……。……まあいい。手間が省けるからここから飛び降りさせてもらうぞ」
そう言ってRXは、躊躇なく窓から飛び降り、まるで機械の鎧など着ていないかのような動きを見せ3点で地面に着地した。
「うっわアイツすっげー!」
四十川はそれを見て興奮している。そして白衣の女に質問する。
「ところであの、下で戦ってる黒いのはなんだ?」
「あれは、先ほどいた黒い服の名も知らぬ白人さまです。まさかアマトだったとは……」
成程確かにアマトに詳しそうだったしな、四十川は思った。
そして窓から、戦いを求めて放物線を描いて飛びだし、ポーズをとって四十川は着地した。
「今度こそ倒すぜアマナムちゃん!」
そう言うとRXを追いかけアマナムへと向かった。
「しかし、何故アマナムは最初、秋氏を狙ったのでしょうなあ」
字浪はガラスを拾いながら、そう呟いた。