01 パラレルワールド
文字数 4,040文字
四十川たちがSF研究会の部室を出て行って数分後、部長の緋仙道は机の上にあるモノを見つけた。
四十川たちの荷物が乱雑にそこに置いてある。スマートフォンや携帯電話も不用心にそこへ転がっていた。全く、あの3人はしょうがないわねえ。そう呟くと緋仙道はそれを乱暴に端へとどけたが、その衝撃で不意に四十川のスマートフォンの画面が点灯した。
――2019年1月14日。その画面は持ち主とは相容れぬ日時を表示する。
画面右上、バッテリーの表示は今にもそれが尽きることを示している。しばらくもしないうちにシャットダウンの表示が出ると、その画面はフッと消えてしまった。そして持ち主の帰りを待つかのように、しばしの、長い眠りについたのだった。
------------------------
「あースマホ忘れたあ! 荷物もねーよサイフだけだあ!」
「ぼくも!」
「ワタクシも!」
山葵色の塗装がところどころ剥げ落ちたアマト研究所の中から、そんな声が響いている。
戦いも終わり一段落した頃、四十川は緋仙道と白衣の女性、天音に
「ココは2099年か」と尋ねた。答えは勿論イエスだった。
何とか自分たちが2019年から来たと証明したい四十川は、その2019年の技術等を見せれば、スマートフォンでも見せれば納得するのではないかと考えた。だが四十川は勿論ほかの2人も、荷物をゴッソリ部室へ置いたままだったことを思い出した。
「あー疲れた。そうだ、その中に酒あんじゃん、適当に取ってくれ」
「は、ハア……、どうぞ。」
四十川はアマトの身体のまま、でーんとソファへもたれかかった。そして字浪がその手にぶら下げている買い物袋、その中身を思い出す。字浪が銀色のラベルの缶ビールを取り出すと、四十川は手に取りそれを開けるやいなや一気飲みした。
「ブヒャー戦いの後のビールはうめえな! クッソぬるいけど!」
勝手気ままにふるまうアマトの姿の女を、緋仙道と天音はただ呆れて見つめていた。
「ところでセンパイ、なんでヘンシンを解かないんですか?」
いつまでも朱い身体のままの四十川に秋が尋ねた。
「いや解こう解こうと思ってるんだけどさ、どうやったら解けるのかわからんのよ」
「へー。あの黒いアマトはなんか、普通にヘンシンを解いてましたけど……」
黒いアマト。四十川はその去り際の、何とも言えぬ寂しげな姿を思い出した。
――あいつは一度ボコボコにやられたというのに戻ってきた、それもアマナムを従えるという能力とかいうのを身に着けて。アマトってのはよく分からない。自分の事も……
――そして、アマナムもアマト同様、人間が変身したものだった。悪の怪人ってんなら倒すことに躊躇いは無いが、まさか人間だったとは……
窓の外、戦いが終わりちらほらと学生が行きかうイチョウ並木を見つめながら四十川は思った。色々なことが頭を巡る。心底疲れた。四十川は酒はかなり強い方だが、ビール1本でも酔いが回りそうな気分だった。アマトの状態で酔いなどするのか、わからないが――
ふと見ると、四十川の傷は嘘のようにほとんど治っていた。これがアマトの力か。複雑な気分だが、やはり人を超えた力というのは素晴らしい。四十川はそう思う。
それにしても、ここは本当に2099年なのか。窓から見える大学のキャンパス、その外の住宅や建物。正直、未来という感じは、80年後という感じは全くしない。
もしかして、と四十川は思った。
「……アーところでなあ……」
緋仙道は反対側のソファに座り何か言おうとしたが、四十川のでかい声がそれを遮った。
「……つーかよ、ここはホントに21世紀も末か? こっから見える景色、このボロい研究所、未来感がゼロだぞ。そこのテレビもなんかフツーじゃん」
四十川は応接室の隅にある、20型程度の大きさの薄いテレビの様な物を指差した。いや、テレビのはずだ。四十川はそう思っている。
「……は? 確かにそれはそんなええもんちゃうけど、ちゃんとした液晶テレビやんけ。何を言うとるんや?」
緋仙道は足を組みながらそう言った。膝までのスカートを履いていて、四十川の位置ならパンツが見えそうだ。――この、未来の緋仙道さんはあんまり恥じらいがないみたいだなあ。秋は思った。
「……おいおい、液晶テレビなんてあたしらがガキの頃からあるっての……。20世紀の時点でもうあったぜ?」
「は? ナニ言うとんねん、世界大戦で滅茶苦茶になったのに、20世紀にそんなモンあるかいな!」
「……アナタは歴史をちゃんと学んでいるのですかな! 第二次世界大戦のあと、日本は高度に復興&成長を遂げたでしょうが!」
そう言うと歴史専攻の字浪は鼻息を立てて怒った。いかに今が2099年だとしても、そんな事も知らない大学生など居てたまるか。字浪はこっちの緋仙道は相当頭がアレなんだろうかと怒りつつも心配になった。
「は? 世界大戦が2回も3回もあってたまるかいな地球こわれるでそんなん。ププッ」
緋仙道は何言ってんだこのハゲという顔で字浪を見、そして噴き出した。
「な、何なのですかなこのブチョー、いや緋仙道さんは……」
字浪がワナワナと震えているその時、四十川たちが持ってきていたツマミの中、ビーフジャーキーのパッケージを見ながら白衣の天音がエッとつぶやいた。
「……どないしはりました先生?」
「……! い、いやなんというかその……。……まず四十川さまたちが2019年から来たというのは、間違いないと思います」
「えっ先生ホンマに信じるんですか!? こんなウサンクサイ連中!」
緋仙道は机に拡げられた四十川たちのツマミを勝手に食べながらそう驚いた。この金髪ブン殴るぞ、四十川は率直にそう思った。
「ええ、これを見て下さい」
天音はそう言うと、四十川たちの缶ビールを1つ、コトリと机へと置いた。
「これがどうかしはりました?」
「裏を見て下さい」
そう言われた緋仙道は缶の底を見てみる。そこには「ショウミキゲン 2020.8.10」
と書かれていた。
「うわっなんやこれ! ……でもこんなんツクリモンでしょ!」
「いえ、他のお酒やおつまみも同様です。しかも私たち、こんなお酒やおつまみのパッケージはまるで見たことがありません」
天音がそう言うと緋仙道は「確かに……」と小さくつぶやいた。
「そしてこれ、この乾燥お肉のおつまみ。ココを見て下さい」
天音が指差すそこには、賞味期限が小さく「ヘイセイ33ネン、4ガツ」
と書かれていた。平成33年なんて存在し得ないだろ、四十川は心の中でツッコんだ。
「ヘイセイ……?」
緋仙道は首をかしげている。そして
「なんやヘイセイって」
と言いながらそれを開けぱくぱくと食べ始めた。
「平成も知らんとは! ……ああというか、ここが2099年だというのも全部彼女たちの嘘で……」
「いえ」
天音は憤慨する字浪を遮り、そして
「われわれの歴史上、ヘイセイなどという元号は存在しません」
と言い切った。
すると腕を組みながら聞いていた四十川がちょっと興味深そうに尋ねる。
「オウじゃあ、ここは、この2099年はあたしたちにとって何なんだよ」
「……平行世界、でしょうね……」
天音はそう言うとフウ、と目を瞑り四十川の隣に座った。そして置いてあるビールをグビリと一口飲むとこれまたフウ、と目を瞑った。
「なんだい、フウフウとせわしないね」
「……あれ、お三方とも、驚かれないんですか?」
「……まあボクは、もうそういうのもあり得るのかなって。アマトだとかアマナムだとか、いるワケですしね……」
秋は言い終わるとへへへと笑った。
「そうですな。平行世界というなら話は別だ。我々はね、頭がヤワラカイんですよ。なんせ特撮好きですからなフォフォフォ……」
「なんやこいつキモチワルイ」
「……まあなんというか、ちょっと想像ついたな。パラレルワールドってか。だから世紀末なのにこんな、あたしたちのいたとこと変わんねえような体たらくなんだな。納得だ。」
四十川はそう言ってビールをもう一缶飲み干した。しかしそこで緋仙道が食ってかかる
「なんやと! ここ数十年めっさハッテンしとるっちゅうに!」
「へ~そうなんだ。……やっぱ歴史が違うんだな。ところで金髪、勝手にあたしらのツマミ食ったな? 金払え」
「誰が金髪や! ……いや金髪やけども」
「じゃあと年増とでも呼ぼうか」
「ハア!? いてこますぞこのデカチチ!」
「……まあまあ、お2人とも落ち着いてください……」
天音が止めようとするのも時すでに遅し、既に四十川が緋仙道をそのアマトの力をもって天井スレスレでぐるぐる時計の針のように回転させていた。ぎょああ~と緋仙道は声をあげる。
「ハハッ、あんたクソ部長よりおもしれえな」
「……まあこれはお約束ですな。ところで天音氏、この世界の歴史について……」
字浪はちびちびビーフジャーキーを食べている天音にずいずい迫ると、半ばニヤニヤしながら言った。彼としてはこの世界の歴史に興味がある訳だが、天音は少し引いている。
「え、あ……、わかりました。お話ししましょうか……?」
彼女が話し出すと字浪は何とも興味深そうに、秋はぬるい酎ハイを飲みながら彼女の方を向いて聞き始めた。四十川はそれを半分聞いたり、外を眺めたり、緋仙道に向けて中指を立てたりしながら酒を5、6本も空けていた。アマトの身体のせいか、まったく酔わなかったが。
窓の外はすでに日が落ち始め、朱い夕日にイチョウの並木が映える。
あ、住むとことかどうすりゃいいんだ。四十川はちょっと途方に暮れた。
四十川たちの荷物が乱雑にそこに置いてある。スマートフォンや携帯電話も不用心にそこへ転がっていた。全く、あの3人はしょうがないわねえ。そう呟くと緋仙道はそれを乱暴に端へとどけたが、その衝撃で不意に四十川のスマートフォンの画面が点灯した。
――2019年1月14日。その画面は持ち主とは相容れぬ日時を表示する。
画面右上、バッテリーの表示は今にもそれが尽きることを示している。しばらくもしないうちにシャットダウンの表示が出ると、その画面はフッと消えてしまった。そして持ち主の帰りを待つかのように、しばしの、長い眠りについたのだった。
------------------------
「あースマホ忘れたあ! 荷物もねーよサイフだけだあ!」
「ぼくも!」
「ワタクシも!」
山葵色の塗装がところどころ剥げ落ちたアマト研究所の中から、そんな声が響いている。
戦いも終わり一段落した頃、四十川は緋仙道と白衣の女性、天音に
「ココは2099年か」と尋ねた。答えは勿論イエスだった。
何とか自分たちが2019年から来たと証明したい四十川は、その2019年の技術等を見せれば、スマートフォンでも見せれば納得するのではないかと考えた。だが四十川は勿論ほかの2人も、荷物をゴッソリ部室へ置いたままだったことを思い出した。
「あー疲れた。そうだ、その中に酒あんじゃん、適当に取ってくれ」
「は、ハア……、どうぞ。」
四十川はアマトの身体のまま、でーんとソファへもたれかかった。そして字浪がその手にぶら下げている買い物袋、その中身を思い出す。字浪が銀色のラベルの缶ビールを取り出すと、四十川は手に取りそれを開けるやいなや一気飲みした。
「ブヒャー戦いの後のビールはうめえな! クッソぬるいけど!」
勝手気ままにふるまうアマトの姿の女を、緋仙道と天音はただ呆れて見つめていた。
「ところでセンパイ、なんでヘンシンを解かないんですか?」
いつまでも朱い身体のままの四十川に秋が尋ねた。
「いや解こう解こうと思ってるんだけどさ、どうやったら解けるのかわからんのよ」
「へー。あの黒いアマトはなんか、普通にヘンシンを解いてましたけど……」
黒いアマト。四十川はその去り際の、何とも言えぬ寂しげな姿を思い出した。
――あいつは一度ボコボコにやられたというのに戻ってきた、それもアマナムを従えるという能力とかいうのを身に着けて。アマトってのはよく分からない。自分の事も……
――そして、アマナムもアマト同様、人間が変身したものだった。悪の怪人ってんなら倒すことに躊躇いは無いが、まさか人間だったとは……
窓の外、戦いが終わりちらほらと学生が行きかうイチョウ並木を見つめながら四十川は思った。色々なことが頭を巡る。心底疲れた。四十川は酒はかなり強い方だが、ビール1本でも酔いが回りそうな気分だった。アマトの状態で酔いなどするのか、わからないが――
ふと見ると、四十川の傷は嘘のようにほとんど治っていた。これがアマトの力か。複雑な気分だが、やはり人を超えた力というのは素晴らしい。四十川はそう思う。
それにしても、ここは本当に2099年なのか。窓から見える大学のキャンパス、その外の住宅や建物。正直、未来という感じは、80年後という感じは全くしない。
もしかして、と四十川は思った。
「……アーところでなあ……」
緋仙道は反対側のソファに座り何か言おうとしたが、四十川のでかい声がそれを遮った。
「……つーかよ、ここはホントに21世紀も末か? こっから見える景色、このボロい研究所、未来感がゼロだぞ。そこのテレビもなんかフツーじゃん」
四十川は応接室の隅にある、20型程度の大きさの薄いテレビの様な物を指差した。いや、テレビのはずだ。四十川はそう思っている。
「……は? 確かにそれはそんなええもんちゃうけど、ちゃんとした液晶テレビやんけ。何を言うとるんや?」
緋仙道は足を組みながらそう言った。膝までのスカートを履いていて、四十川の位置ならパンツが見えそうだ。――この、未来の緋仙道さんはあんまり恥じらいがないみたいだなあ。秋は思った。
「……おいおい、液晶テレビなんてあたしらがガキの頃からあるっての……。20世紀の時点でもうあったぜ?」
「は? ナニ言うとんねん、世界大戦で滅茶苦茶になったのに、20世紀にそんなモンあるかいな!」
「……アナタは歴史をちゃんと学んでいるのですかな! 第二次世界大戦のあと、日本は高度に復興&成長を遂げたでしょうが!」
そう言うと歴史専攻の字浪は鼻息を立てて怒った。いかに今が2099年だとしても、そんな事も知らない大学生など居てたまるか。字浪はこっちの緋仙道は相当頭がアレなんだろうかと怒りつつも心配になった。
「は? 世界大戦が2回も3回もあってたまるかいな地球こわれるでそんなん。ププッ」
緋仙道は何言ってんだこのハゲという顔で字浪を見、そして噴き出した。
「な、何なのですかなこのブチョー、いや緋仙道さんは……」
字浪がワナワナと震えているその時、四十川たちが持ってきていたツマミの中、ビーフジャーキーのパッケージを見ながら白衣の天音がエッとつぶやいた。
「……どないしはりました先生?」
「……! い、いやなんというかその……。……まず四十川さまたちが2019年から来たというのは、間違いないと思います」
「えっ先生ホンマに信じるんですか!? こんなウサンクサイ連中!」
緋仙道は机に拡げられた四十川たちのツマミを勝手に食べながらそう驚いた。この金髪ブン殴るぞ、四十川は率直にそう思った。
「ええ、これを見て下さい」
天音はそう言うと、四十川たちの缶ビールを1つ、コトリと机へと置いた。
「これがどうかしはりました?」
「裏を見て下さい」
そう言われた緋仙道は缶の底を見てみる。そこには「ショウミキゲン 2020.8.10」
と書かれていた。
「うわっなんやこれ! ……でもこんなんツクリモンでしょ!」
「いえ、他のお酒やおつまみも同様です。しかも私たち、こんなお酒やおつまみのパッケージはまるで見たことがありません」
天音がそう言うと緋仙道は「確かに……」と小さくつぶやいた。
「そしてこれ、この乾燥お肉のおつまみ。ココを見て下さい」
天音が指差すそこには、賞味期限が小さく「ヘイセイ33ネン、4ガツ」
と書かれていた。平成33年なんて存在し得ないだろ、四十川は心の中でツッコんだ。
「ヘイセイ……?」
緋仙道は首をかしげている。そして
「なんやヘイセイって」
と言いながらそれを開けぱくぱくと食べ始めた。
「平成も知らんとは! ……ああというか、ここが2099年だというのも全部彼女たちの嘘で……」
「いえ」
天音は憤慨する字浪を遮り、そして
「われわれの歴史上、ヘイセイなどという元号は存在しません」
と言い切った。
すると腕を組みながら聞いていた四十川がちょっと興味深そうに尋ねる。
「オウじゃあ、ここは、この2099年はあたしたちにとって何なんだよ」
「……平行世界、でしょうね……」
天音はそう言うとフウ、と目を瞑り四十川の隣に座った。そして置いてあるビールをグビリと一口飲むとこれまたフウ、と目を瞑った。
「なんだい、フウフウとせわしないね」
「……あれ、お三方とも、驚かれないんですか?」
「……まあボクは、もうそういうのもあり得るのかなって。アマトだとかアマナムだとか、いるワケですしね……」
秋は言い終わるとへへへと笑った。
「そうですな。平行世界というなら話は別だ。我々はね、頭がヤワラカイんですよ。なんせ特撮好きですからなフォフォフォ……」
「なんやこいつキモチワルイ」
「……まあなんというか、ちょっと想像ついたな。パラレルワールドってか。だから世紀末なのにこんな、あたしたちのいたとこと変わんねえような体たらくなんだな。納得だ。」
四十川はそう言ってビールをもう一缶飲み干した。しかしそこで緋仙道が食ってかかる
「なんやと! ここ数十年めっさハッテンしとるっちゅうに!」
「へ~そうなんだ。……やっぱ歴史が違うんだな。ところで金髪、勝手にあたしらのツマミ食ったな? 金払え」
「誰が金髪や! ……いや金髪やけども」
「じゃあと年増とでも呼ぼうか」
「ハア!? いてこますぞこのデカチチ!」
「……まあまあ、お2人とも落ち着いてください……」
天音が止めようとするのも時すでに遅し、既に四十川が緋仙道をそのアマトの力をもって天井スレスレでぐるぐる時計の針のように回転させていた。ぎょああ~と緋仙道は声をあげる。
「ハハッ、あんたクソ部長よりおもしれえな」
「……まあこれはお約束ですな。ところで天音氏、この世界の歴史について……」
字浪はちびちびビーフジャーキーを食べている天音にずいずい迫ると、半ばニヤニヤしながら言った。彼としてはこの世界の歴史に興味がある訳だが、天音は少し引いている。
「え、あ……、わかりました。お話ししましょうか……?」
彼女が話し出すと字浪は何とも興味深そうに、秋はぬるい酎ハイを飲みながら彼女の方を向いて聞き始めた。四十川はそれを半分聞いたり、外を眺めたり、緋仙道に向けて中指を立てたりしながら酒を5、6本も空けていた。アマトの身体のせいか、まったく酔わなかったが。
窓の外はすでに日が落ち始め、朱い夕日にイチョウの並木が映える。
あ、住むとことかどうすりゃいいんだ。四十川はちょっと途方に暮れた。