僕、あのとき何て話してた?
文字数 422文字
え、と僕は思うが、声が出ない。
何でだろう。声を出そうとしているのに。
手が、ぶるぶると、震える。持っているカメラも、当然ブレる。
おかしい。僕はさっきまでヒメ先輩と喋っていたはずだ。撮影の許可を得て、地下歩道で踏切事故の話を聞いて。
公園? には自殺者が多いとか、この辺は市自体が軍都だし、仕方ないとか……
あれ?
僕、あのとき何て話してた?
……。
僕は、いつから話せなかったのかな?
僕は、僕は、僕は、僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は────……
僕の反応を待っていたっぽいヒメ先輩が、一呼吸置いてから口火を切った。
僕はヒメ先輩を見詰めた。
“で、どうしたの……寸沢嵐くん ”
出会い頭のころ。詰まるところ、最初から。
僕はヒメ先輩へ手を伸ばし端末を落とす。
くるくると、回って落下した端末の液晶に一瞬映った僕は首が、くの字に曲がっていた。