ヒメ先輩が言うので、俺は電源を入れた。

文字数 421文字

 それは、カメラ付きの携帯端末だった。しかも。
えっ、懐かしっ!
コレ、スマフォじゃなくて、スライド式携帯じゃないですか!
えぇ、懐かしい!
 今や、日常ではネットや中古ショップでしか滅多にお目に掛かれない、携帯電話と言うヤツだ。
見ても良いよ
えー、良いんですか? ってか、コレ、ヒメ先輩のですか?
 だとしたら通信規格がもう無いし、現役では無いと思うけど。ゆるされても、他人のものを見て良いものか悩む。
だけれどヒメ先輩は、ううんと首を振った。ぇえ? それ見て平気なの?
私のじゃないけど……
もう持ち主もいないから
じゃあ駄目なんじゃ
……つーか、コレ電源入るんですか?
 傷だらけの端末は、余り状態が良いと見えない。けど、ヒメ先輩は宣う。
さっきまで動いていたから、動くでしょ
 ヒメ先輩が言うので、俺は電源を入れた。
 電源が入り、起動画面が表示されたあと、待ち受け画像が映る。
 3.7インチ液晶の待ち受け画像は、幸せそうな家族と、一匹の(ぶち)猫の写真だった。
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登場人物紹介

ヒメ先輩。『A高校郷土史研究会』を掲げた奥の部屋にいつもいる女性。セーラー服を着ていて、一見普通の女生徒のようだが……?ただ歩くだけで怪異と遭遇する世請くんを見兼ねて、世話を焼いている。

世請くん。何をするでも無く、ただ歩くだけで怪異や事件に巻き添えを食らう男子高校生。ヒメ先輩曰く、世請くんの意志に関係無く自ら怪異に向かっているとのこと。本人に自覚は無く何なら不服ですら在る……が、実質ヒメ先輩に助けてもらっている現状から強く反論出来ない。

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