俺は冷や汗を掻く。

文字数 378文字

────もう、大丈夫だから
 おかえりなさい。
 最期まで、身を(なげう)ってまで人を愛したあなたを、あなたを愛する人が待っているわ。
 ヒメ先輩が告げた。僕を抱くヒメ先輩が、全体的に光を帯びる。
 あたたかい。僕は目を閉じる。
 この途端。
“────、────!”
“────っ”
“────!”
“────”
 僕を呼ぶ声がして、僕はまた、目を開けた。
────あれ?
お早う、世請くん
 気が付くと、ヒメ先輩が()を見下ろしていた。 
寝ていた身を起こして辺りを見渡せば、鬱蒼と茂る森の中────いや、山?
 後ろを見返れば小さい社。
ぇ、ここ、どこ?
 俺が、ぽかーんと周囲を見回していれば、ヒメ先輩が深い深い溜め息を吐いた。
きみは、相変わらずだなぁ
 呆れた様子のヒメ先輩に、俺は冷や汗を掻く。
また、俺、何か……
 ど(えら)い目に……言い掛けた俺へ、先輩が何かを寄越す。
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登場人物紹介

ヒメ先輩。『A高校郷土史研究会』を掲げた奥の部屋にいつもいる女性。セーラー服を着ていて、一見普通の女生徒のようだが……?ただ歩くだけで怪異と遭遇する世請くんを見兼ねて、世話を焼いている。

世請くん。何をするでも無く、ただ歩くだけで怪異や事件に巻き添えを食らう男子高校生。ヒメ先輩曰く、世請くんの意志に関係無く自ら怪異に向かっているとのこと。本人に自覚は無く何なら不服ですら在る……が、実質ヒメ先輩に助けてもらっている現状から強く反論出来ない。

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