一気に、血の気が引く。

文字数 656文字

……無自覚って本当に怖いね
絶対認めませんから!
じゃあ、高座くんとも縁を切らないと
うっ……それは……
 クラスの友人、高座。
 とても明るく気さくで好いヤツなのだが、謎や事件、更にオカルトと聞けば、一にも二にも無く目を輝かせ突っ込んで行く。
 現在、高座以外に特段、親しい友人のいない俺には、アイツと縁を切るのは死活問題だった。
高座くんはね、言うなれば磁石が無く意識しなければ近寄ることも無いの
でもね、世請くん
きみは、違うの
きみの中には強力な磁石が在って、無意識でも迷うこと無く辿り着けてしまうのよ
 ゆえに、縁を切らないとこれからもハードモードで大変な目に遭うよ、と。
けどっ、でもっ、
……あれ。そう言えば今日、高座はいないんですね?
 またも変な出来事に遭遇していた俺に、あの高座が放置するなんて有り得ない。
だとしても常日頃ハイテンションが標準装備なアイツは見当たらない。
俺が問うと、ああ、とヒメ先輩は頷いて。
今日補習だったから。来られなかったんでしょ
 と()ちた。……待って。
補習?
補習
 それは、昨日、俺も受けなきゃならないと先生からお達しされたものでは……? 一気に、血の気が引く。
帰ります! あ、いや、学校に戻ります!
 俺は携帯端末をヒメ先輩へ押し付けるように渡すと一目散に階段を駆け降りる。
最後は何かごろごろした岩が足場になっていたけれど、どうにか下り切れた。
気を付けてね。今日はもう私の効果(・・・・)で何も無いだろうけど
はーい! ありがとうございました!
 どうやら、今日もヒメ先輩にお世話になったらしい。
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登場人物紹介

ヒメ先輩。『A高校郷土史研究会』を掲げた奥の部屋にいつもいる女性。セーラー服を着ていて、一見普通の女生徒のようだが……?ただ歩くだけで怪異と遭遇する世請くんを見兼ねて、世話を焼いている。

世請くん。何をするでも無く、ただ歩くだけで怪異や事件に巻き添えを食らう男子高校生。ヒメ先輩曰く、世請くんの意志に関係無く自ら怪異に向かっているとのこと。本人に自覚は無く何なら不服ですら在る……が、実質ヒメ先輩に助けてもらっている現状から強く反論出来ない。

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