お家に帰してください。

文字数 533文字

“もうみんな帰って来られないんだよ……私と、いっしょに行こう”
 お父さんのお母さんと言う人が、連れて帰ってくれたけど。
“あら……どうして、猫が? 息子が連れて帰って来たのかしら?”
 その人は、すぐに僕が、わからなくなってしまった。
 その人が勝手に家を出てしまうから、僕は追い駆けて。
 最期に見たのは。
 お父さんのお母さんが持っていた、お父さんの携帯端末。
中の写真や動画には僕やお父さんやお母さん、お姉ちゃんが写ってたから、自分のだって勘違いしてたのかな。
 が、お父さんのお母さんが、びっくりして倒れたときに道の端へ転がって行ったのと。
 首の捻じれた僕から出て、地面に拡がり染みる、血。
 僕を轢いた人は、お父さんのお母さんへ駆け寄った。お父さんのお母さんは、大丈夫だったみたい。
 次いで、轢いた僕を見て、哀しそうにしてた。
 ────ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 どうしても、お父さんのお母さんは、助けたかったの。
 僕が足止めになれば良いって。
 ごめんなさい。嫌な気持ちにさせて。
“やだ、野良よ!”
 でも僕もう『野良』じゃないから。
 お父さんのお母さんを助けてください。
 お家に帰してください。
 ごめんなさい。
 ……ああ、コレは、神社(ここ)の前の、道路で起きたのか。
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登場人物紹介

ヒメ先輩。『A高校郷土史研究会』を掲げた奥の部屋にいつもいる女性。セーラー服を着ていて、一見普通の女生徒のようだが……?ただ歩くだけで怪異と遭遇する世請くんを見兼ねて、世話を焼いている。

世請くん。何をするでも無く、ただ歩くだけで怪異や事件に巻き添えを食らう男子高校生。ヒメ先輩曰く、世請くんの意志に関係無く自ら怪異に向かっているとのこと。本人に自覚は無く何なら不服ですら在る……が、実質ヒメ先輩に助けてもらっている現状から強く反論出来ない。

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