生き物は、生きていれば死ぬものよ

文字数 472文字

電車が停まった上り側の一つ先の駅ね
K沼公園て在るんだけど
そこも、かなり出る、って噂ね。自殺者が多いとか
 ヒメ先輩と駅に戻って電車を待つ。わざわざ下り路線から見て右端、地下歩道が在る近くで。
そうなんですね、と僕は頷いた。
……。まぁ、生き物は、生きていれば死ぬものよ
生命が生きれば、やがて寿命は潰えるが道理
随分と死に繋がる要因が駆逐されて来ているから、忘れがちだけどね
昔は知識不足に命を落とした場合は多かった
 そう言った無念が、生物が住まう土地には降り積もっているのだと。ヒメ先輩は言った。
そして人は争うもの
ましてや、ここ、S原市は軍都だった
造兵廠が在った。武器を造る、ね
市役所にも、避難していた人々が爆弾で大勢亡くなった、って話よ
 生きた人も、見ない振りした無念が、たくさん在ったの。ヒメ先輩が説く。
悲しい、つらい、苦しい……
負の感情を、穢れと呼ぶのなら、穢れていない地など無い
けどね、
 電車が来た。僕たちは乗り込む。
負の感情って、もともと愛から生まれると思うの
他者への愛は勿論、自己愛も含めてね
 ヒメ先輩が説き終えると同時に、自動扉は閉まった。
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登場人物紹介

ヒメ先輩。『A高校郷土史研究会』を掲げた奥の部屋にいつもいる女性。セーラー服を着ていて、一見普通の女生徒のようだが……?ただ歩くだけで怪異と遭遇する世請くんを見兼ねて、世話を焼いている。

世請くん。何をするでも無く、ただ歩くだけで怪異や事件に巻き添えを食らう男子高校生。ヒメ先輩曰く、世請くんの意志に関係無く自ら怪異に向かっているとのこと。本人に自覚は無く何なら不服ですら在る……が、実質ヒメ先輩に助けてもらっている現状から強く反論出来ない。

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