あぶない的屋 さくら双
十月三十一日の今日、ハロウィンということで、園内のアトラクション全てが、ジャック・オー・ランタンやゴーストといったハロウィンらしい装飾が施されている。
その中で、異彩を放つアトラクション――というより屋台が、園の中央に位置する城の端に、堂々と店を構えていた。
屋台には、大きな文字で「エアガン射的屋」と書かれており、店主と思しき親父は、白のダボシャツに茶色のダボパン、腹には腹巻が巻かれ、頭に鉢巻をリボン結びをしている。
そこに最初の客がやってきた。客は男で、上下白のスーツに真っ赤なシャツ。髪は短く切りそろえられ、眉毛はとても鋭い。身体も非常に大きく、右手にはハードタイプのガンケースを持っている。
男は親父に射的一回分の料金、五百円を払おうとしたが、
「今日はハロウィンなのだ。だからお代は半分でいいのだ」
そう言われ男は、五百円の半分、二百五十円を親父に払った。
料金を払うと男は、ガンケースからM16A1のガスガンを取り出しセーフティーを外すと、並べられている景品に銃口を向けて、コッキングレバーを引き、BB弾を装填した。
スコープで目標をしっかり捉え、男は引き絞るようにトリガーを引いた。
発射された弾は見事に目標を捉え、景品を下に落とした。
落とした景品を受け取ると、男は満足そうにその場を後にした。
男と入れ違いで、新たな客がやってきた。
またしても男で、上下にピチっとした赤い服を身にまとい、髪は金髪、たれ目で団子鼻をしている。
「いらっしゃいなのだ」
親父に迎えられた男は、親父に二百五十円を払うと、左手を引っ張った。
すると左手が取れ、中から腕と一体化した銃のようなものが出てきた。
男は右手を左腕の銃に添えて構えると、景品めがけて弾を発射した。
しかし、六発撃ったが六発とも当たることはなかった。
男は残念そうに屋台を後にした。その後ろ姿は親父の目に、どこまでも孤独に映った。