【テーブル2】 「ボクとワタシの修行の成果」東雲飛鶴

文字数 7,678文字

「ボクとワタシの修行の成果」東雲飛鶴


昨年参加したコラボ企画の続編です。なお、本作単体でも楽しめます。

続きものになっていますので、よかったら昨年の作品↓を読んでからお楽しみください。

https://novel.daysneo.com/works/episode/ac4f01e5205611d6b7b26aa013968830.html

2018/10/23 01:01

izuru_s

2018/10/24 03:05

izuru_s

は~……
お客さんぜんぜんこないねー……
2018/10/24 03:08
こねーなー……

こんなに仕込みしたのに、絶対余っちゃうぞコレ……

2018/10/24 03:10
フードコートの端にちょこんと立つ、小さなスイーツ屋台。

今年初参加の彼等には、人通りの多い好立地は望むべくもなく、ひとしきり売店の配置が終わったあとの空き地をあてがわれてしまった。

2018/10/24 05:53

izuru_s

住み込みで働いて一年、曲がりなりにも自分の店が持てたってのに

こんな僻地でどうしろってんだよ。

店長も大丈夫だなんて無責任なこと言って……

2018/10/24 06:09
食べてもらえないんじゃ、腕の振るいようがないよね……

けっこう自身あったのに

2018/10/24 16:27
はーい

調子はどう?

2018/10/24 16:29
……
2018/10/24 16:45
……
2018/10/24 16:45
あらら……

まあ、不利なのは分かってたけど、さすがにこれはキツいか

2018/10/24 16:45
助けて!先輩!

このままじゃワタシたち、店長に恩返しどころか、

また迷惑かけちゃう!

2018/10/24 16:50
お、俺からも頼みます

せっかく店長に作り方教わったのに、

いっぱい修行したのに、

これじゃあ……

2018/10/24 16:51
はいはい、そんなに深刻にならないで

なんとかするから、ちょっと待っててね

2018/10/24 16:52
ホントに――どうにか出来るのか?
2018/10/24 16:52
先輩と呼ばれた女性は、ウインクをすると、手をひらひら振ってフードコートから出て行った。




2018/10/24 16:53

izuru_s

2018/10/24 17:20

izuru_s

おかえり。

あの子たちどうだった?

2018/10/24 17:22
かなり苦戦してるみたいです、店長

テコ入れしてあげないと、心折れちゃいそうです


あんまりヘコんでるから、なんとかするって言っちゃったんですけど……

こまったわ……

2018/10/24 18:34
フーン……

大丈夫だと思ったんだけどなあ

技術的な問題はほとんどないはずだよ。

2018/10/25 07:23

店長は呑気すぎですよ。


たしかにお菓子の作り方は上手になったけど、

あの子たちはまだこちらに来て一年しか経ってないんです。

いきなり商売をしろといっても、やっぱりハードルが高かったんじゃないでしょうか。


直接見に行って分かったんですが、人の流れが手前でぷっつり切れているんです。

せっかくがんばって仕込みもしたのに、あの子たちこのままじゃ。

なんとかしないと……

2018/10/25 07:25
話は聞いたよ!

これからいいもの作るから、ちょっと待ってて!

2018/10/25 07:27
オバケはそれだけ言うと、二階の自室にそそくさと引っ込んでいった。


店長とウェイトレスは顔を見合わせると、いぶかしげに小首をかしげた。



2018/10/25 07:35

izuru_s

2018/10/25 07:41

izuru_s

はー…………

先輩あんなこと言ってたけど、ホントになんとかしてくれるのかなあ?

ぜーんぜんニンゲン来ないよ?

2018/10/25 07:41
つーか、俺ちょっと遊びに行ってみたい……
2018/10/25 07:44
はああああああ??

ダメにきまってんでしょ!!

自分の立場わかってんの???

2018/10/25 07:45
デスヨネー…………
2018/10/25 07:47
ひまを持てあました少年が、水筒に入れたお茶を飲もうと手を伸ばしたとき、

それは起こった。

2018/10/25 08:25

izuru_s

あのー……

これ、ください

2018/10/25 09:27
お……お客様、ですか?


ほ、ほっほほほ、ほんとに、


お客様!?

2018/10/25 09:28
きゃあ!!
2018/10/25 09:29
ウサ耳の女の子は、走って逃げてしまった。
2018/10/25 09:32

izuru_s

なにやってんだバカ!

びっくりして逃げちゃったじゃないかー

せっかくの初のお客さんだったのに……

2018/10/25 09:33
ごめん……
2018/10/25 09:34
く……くだ、さい
2018/10/25 09:34
(こんどは失敗すんなよ)
2018/10/25 09:49
(わかってるって)


いらっしゃいませ

2018/10/25 09:49
こ……これ
2018/10/25 09:49
はい、一つ500円です
2018/10/25 09:50
内気そうな女の子は、お菓子を受け取ると、五百円玉を置いて、逃げるように去って行った。
2018/10/25 09:50

izuru_s

ありがとうござい……あれ? もういなくなっちゃった

ヘンなニンゲン。でもまあいいや。売れたし。

2018/10/25 09:52
そうだね! 売れたし!
2018/10/25 09:53
……って、喜んでる場合か。

あああもおおお、どーすんだよこの在庫おおおおお

2018/10/25 09:53
しょーがないじゃん

ニンゲン集める方法なんて知らないもん……


あのメガネ女、いつまで待たせる気なのかな

閉園までに売り切れなかったら、食ってやろうかな

2018/10/25 09:57
バカ、店長と約束しただろ。

ニンゲンは食べないって。

ここにいられなくなっちゃうぞ。

2018/10/25 09:59
そ、そうだよね。

それに、ニンゲンよりずっとおいしいもの、

いっぱいあるもんね!

2018/10/25 10:00
そうだぞ。もっとおいしいものあるじゃんか。

たとえば……


俺のお菓子とか……さ。

2018/10/25 10:00
なに自分で言っちゃってんの?

……でも、すごくおいしいよ。このお菓子。


こんなにおいしいのに食べに来ないニンゲン、ムカつく。

2018/10/25 10:01
……これ
2018/10/25 10:02
うわ!

い、いつのまに

(気配がしないから驚いたぞ)

2018/10/25 10:08
いらっしゃいませ。

500円になります。

(ワタシも気付かなかった)

2018/10/25 10:09
口数の極端に少ない女性客は金を置くと、奪い取るようにお菓子を持って去って行った。
2018/10/25 10:10

izuru_s

なんだったんだ……
2018/10/25 10:11
ちょっとびびった……
2018/10/25 10:12
ん……
2018/10/25 10:12
おかっぱの女の子は、いきなり500円玉を二人の前に突き出した。
2018/10/25 10:16

izuru_s

あ、はい。丁度ですね。

ありがとうございます。

こちら、どうぞ。

2018/10/25 10:17
ん。
2018/10/25 10:17
おかっぱの女の子は、いったん周囲を伺うと、持ってきた大きなトートバッグの底深くに、お菓子を慎重にしまった。

そして、もう一度周囲を伺うと、小走りに去って行った。

2018/10/25 10:18

izuru_s

俺、思うんだけどさ
2018/10/25 10:19
んー……ワタシも思うとこあるけどさ。

先、言いなよ。

2018/10/25 10:20
おう。




なんか、来る客みんな、おかしくね?

2018/10/25 10:20
うん。

なんかヘンなニンゲンばっか来る。


……あのメガネ女の仕業?

まあ、客が来るだけマシだけど……

2018/10/25 10:21
それに、フードコートの中をくまなく見て回ってる、とか、

ここまで迷いこんできた、とかじゃなくて……


まっすぐここを目指してきてる。

これって何だ?

2018/10/25 10:22
それから五人ほど来たあと――
2018/10/25 10:23

izuru_s

オバケに聞いてきたんだけど……

ホントにここで合ってるの?

2018/10/25 11:27
オバケ?
2018/10/25 11:29
なんのこと?
2018/10/25 11:38
あれ……おかしいな。

広場のオバケが言ってたんだけど、


この町でいちばんおいしいお菓子を売ってる屋台が

フードコートの一番奥にあるから、

2018/10/25 11:38
いちばんおいしいってのは合ってる。

ね?

2018/10/25 11:40
うむ。

俺はこの町一番のパティシエだ。

……たぶん。

2018/10/25 11:40
こんな寂しい場所で、だれも並んでないなんて、

ぶっちゃけ説得力ないんだけど……


まあいいわ。

とにかく、他にお菓子の店はなさそうだし、ここに間違いないはず。


さっさと、お菓子をよこしなさい。

いそいでオバケのところに戻らなきゃいけないんだから。

2018/10/25 11:41
(失礼なニンゲンねえ……)

はい、これ。500円。

2018/10/25 11:42
はい、お金。

丁度あるはずよ。

2018/10/25 11:44
ありがとう。


――ちょっと聞いていいか?

お客さん。

オバケのところに戻るって、どういう意味?

2018/10/25 11:47
これコラボ企画じゃないの?


んー……と、

その……いいことがある、って聞いて……

2018/10/25 11:48
(なんだ? 急に歯切れが悪くなったぞ)


その、いいこと、って何?

2018/10/25 13:06
そ、それは……


ヒミツ!!

2018/10/25 13:07
和服の女の子は、シャウトすると一目散に逃げていった。
2018/10/25 13:07

izuru_s

コラボ企画ぅ?
2018/10/26 06:18
コラボ企画って何だ?
2018/10/26 06:19
2018/10/26 06:19

izuru_s

あ~~、おまたせ~~!

チラシ作ってきたから、今から配ってくるわね!

2018/10/26 06:31
チラシ?
2018/10/26 11:16
ってなんだ?
2018/10/26 11:16
ウェイトレスは、二人にチラシを見せた。
2018/10/26 11:16

izuru_s

これよ。

えーっと、あちらにはこういうものってないのかしら。

宣伝したいことを、こんなふうに紙に印刷して、歩いてる人に配るのよ。

2018/10/26 11:28
すごい……

お菓子の写真が載ってる……

お店のメニューみたい……


これ配ったら、どうなるの?

2018/10/26 11:30
お客さんが――来る!
2018/10/26 11:31
マジか!!
2018/10/26 14:28
――かもしれない
2018/10/26 14:28
なんだ
2018/10/26 14:28
ガッカリ
2018/10/26 14:29
ま、まあ、やらないよりはマシよ

じゃあ今から向こうで配ってくるから

大丈夫、ちゃんとお客さん来るようにするから!

2018/10/26 14:29
へ?

客ならさっきから何人も来てるよ

2018/10/26 14:30
広場のオバケに聞いたって。

あれって先輩じゃなかったの?

2018/10/26 14:30
私じゃないわ。

――まさか


とにかく行ってくる!

二人ともがんばってね!

2018/10/26 14:31
ウェイトレスは広場に向かって一目散に走り去っていった。
2018/10/26 14:34

izuru_s

ふうむ……

なんか様子がおかしいな。

一体広場で何が起こってるんだ?

2018/10/26 14:35
今日はハロウィン

何があっても驚かないけどねー


……でも、オバケのことは気になるよね

2018/10/26 14:36
あのー

このチラシのお店、ここで合ってます?

お菓子三つ欲しいんですけど

2018/10/26 14:37
らっしゃいませー

合ってます、ここです、だいじょうぶです

2018/10/26 14:49
三つですね……

(ガサコソ)


はい、1500円になります

2018/10/26 14:50
じゃあこれ。

どうもー

2018/10/26 14:51
ありがとうございましたー
2018/10/26 14:52
ございましたー
2018/10/26 14:52
すっげえ……

チラシでいきなり三個も売れた……

チラシって魔法かなんかなのか?

2018/10/26 14:53
なにそれこわい……
2018/10/26 21:35
こんばんは

ひとつもらえるかな

2018/10/26 21:37
500円です

(ガサゴソ)


お客さん、チラシで来たんですか? それともオバケ?

2018/10/26 21:45
えっ?

あ……えーっと、


恥ずかしながら、オバケの方だよ

お嬢さん

2018/10/26 21:46
オバケだとなんで恥ずかしいんですか?


あ、じつは俺等、オバケが何をしてるか全く知らなくて

でも店離れられないから確かめにも行けなくて……

2018/10/26 22:02
オバケが勝手にコラボ?とかいうのやってるみたいで

まあお客さん来てくれるから迷惑してるわけじゃないんだけど

知らないところでなんかやられるのって……ちょっと不安で

2018/10/26 22:15
なるほど

でも心配するほどのことでもなさそうだよ。


あのね……オバケにこの店のお菓子をあげると、

恋愛成就のお守りがもらえるんだ。

2018/10/26 22:21
なにそれー!!

ああ、だからモゾモゾしたカンジの女の子ばっか来てたのか

2018/10/26 22:23
それ言うならモジモジだろ
2018/10/26 22:24
私も、この年になって恥ずかしながら、好意を寄せている女性がいて

でもなかなか言い出せずに困っていたんだ。

今夜も、本当なら一緒にここへ来たかったんだが……

2018/10/26 22:24
たいへんそうですね……
2018/10/26 22:25
私は転勤が多くて、この年になるまで家族を持つことが出来なかった。

だがこの町で会社を興して、やっと定住することが出来そうなんだ。

そんな時、出会ったのが彼女なんだが……

どう言い出せばいいのかわからず、モヤモヤしたままここに来てしまった

2018/10/26 22:26
シャチョさん、ってやつなのか?

すげえ……

2018/10/26 22:28
そんなことないよ

私と従業員が数人の小さい会社なんだ。


ここに来て、彼女と一緒ならどんなに楽しかったかな、

なんて思いながらふらふらしていたら、

あのオバケがすっと近寄ってきて


「オカシヲクレタラ、アナタノセナカ、オシテアゲル」


って言うんだ。

心底ぎょっとしたよ。


だけど、何故かオバケの言葉が信用できた。

だから、――オバケが指定したこの店に来たんだ。

2018/10/26 22:28
ハハーン……

なんか読めてきたきがする

2018/10/27 06:29
でも……オバケにあげるために買ってった人たち、

お菓子を食べてくれなかったんだね。


こんなにおいしいのに……

せっかく修行したのに……

2018/10/27 06:31
それは気の毒なことをした。

もう一つもらえるかな。

ちゃんと味わってから、オバケの所に行きたいんだ。

2018/10/27 06:33
あ、ありがとう!

お金はいいから、食べてくれ!

シャチョさん!

2018/10/27 06:34
いいのかい?

ありがとう

じゃあ……


(モグモグ)


これは……

なんて美味いんだ


(モグモグ)


これを食わずに俺は、

オバケにくれてやろうとしてたのか……

2018/10/27 06:35
おいしいでしょ?

おいしいよね?

くやしいのわかるよね?

2018/10/27 06:36
(こくこく)

(モグモグ)

2018/10/27 06:39

オレたちも、去年この街に移住してきて

カフェでパティシエの修行をしてるんだ。

シャチョさんと同じだね。

2018/10/27 06:39
……やめた
2018/10/27 06:40
え?
2018/10/27 06:41
なにを?
2018/10/27 06:41
オバケを信用しないわけじゃないが……

私は君たちの方を信用するよ

2018/10/27 06:42
2018/10/27 06:43
2018/10/27 06:43
追加で10個頂こう
2018/10/27 06:43
あ、はい
2018/10/27 06:45
これって大人買い?
2018/10/27 06:46
私は、彼女に直接告白する。

君たちの、このお菓子の力を借りて。


私はリアリストなんだ。

不確かなオバケのお守りよりも、

自分が信じたこの味を頼りに、彼女にアタックしたい。


それなら、許してくれるかい?

2018/10/27 06:46
もちろん!
2018/10/27 06:51
もちろん!
2018/10/27 06:51
ありがとう。

今夜ここに来てよかった。

また近いうちに会おう。

務めているカフェはどこにあるのかな?

2018/10/27 06:52
ここだよ、シャチョさん
2018/10/27 06:53
男は、ウェイトレスの作ったチラシと、自分の名刺を交換して、その場から立ち去った。
2018/10/27 06:53

izuru_s

そのちっさい紙、なに?

なんでチラシあげたの?

2018/10/27 06:55
これは、メイシってやつだ。

テレビでみたことある。


びじねすまんってやつが交換してるやつだけど、

字がいっぱい書いてあるだけだな……


先輩が作ったチラシ、店の案内も書いてあったから

これ上げればいいかと思って

2018/10/27 06:56
どれどれ……


あー、地図とか書いてあるね

難しい字はあんまり読めないけど……

これで、シャチョさん、ちゃんとお店に来られるよね

2018/10/27 06:58
店に来たら、いろんなの食べてもらおうぜ

シャチョさんスイーツ好きっぽいしな

2018/10/27 06:59
好きっぽいしね!
2018/10/27 07:00
2018/10/27 07:00

izuru_s

ただいま~

チラシ全部配ったから戻ってきたわよ

2018/10/27 07:01
おかえりー
2018/10/27 07:02
えりー
2018/10/27 07:03
お客さん来た?
2018/10/27 07:03
はい、それなりに
2018/10/27 07:04
シャチョさんってニンゲンが

大人買いってのしてった、です

2018/10/27 07:04
すごーい


それはそうと、オバケの件なんだけど……

2018/10/27 07:05
さっきシャチョさんから聞いた……


一体誰なんだ

あんな売れ方したって嬉しくない……

2018/10/27 07:07
そうよね。


二人のこの一年の努力の結晶が

このお菓子たちなのに……

2018/10/27 07:07
先輩、ちょっと店番しててくれませんか?

ワタシ、オバケに文句言ってくる!!

2018/10/27 07:09
その役目、僕が請け負うよ
2018/10/27 09:51
あ!カボチャ先輩!
2018/10/27 09:52

私が買い出しに行ってる間に、

兄弟分が迷惑をかけてしまったみたいで

すまなかった。

もう察しはついてるかもしれないが、

犯人は、あいつだ。

2018/10/27 09:52
まさかオバケって――
2018/10/27 09:57
ゴースト先輩のことか!!
2018/10/27 10:00
当人も君たちのことを思ってやっただけで、

悪気はなかったんだが……


なにせ、ニンゲン世界のことが不案内なのは皆同じ。

私がケジメをつけさせるので、どうか許してやって欲しい。


じゃあ、ちょっと行ってくる。

2018/10/27 10:01
すいません!
2018/10/27 10:03
すいません!
2018/10/27 10:16
すいません!

ください!

2018/10/27 10:16
わわわ……いっぺんに言わないでくれ
2018/10/27 10:17
ちょっとあんたたち、

オバケのお守り目当て?

2018/10/27 10:17
そうだよ!

はやくちょうだい!

2018/10/27 10:19
コラボはもう終わったの

帰って。

2018/10/27 10:19
そんなあ~

まだいっぱいあるじゃんか

売ってよ!

2018/10/27 10:20
これがないと困るんだよ

いいから売れよ

2018/10/27 10:21
金ならあるから、

ほら

2018/10/27 10:21
悪いけど終わりよ。

あれはオバケが勝手にやったことで

こちらは迷惑してるの。

わかったら、お帰りなさい。

2018/10/27 10:22
なんでですか

売れるなら問題ないじゃないですか

2018/10/27 10:24
食わないヤツに売るお菓子はねえ!!

帰れ!!

2018/10/27 10:26
チッ、行こうぜ

なんか別のお菓子でも買えばいいよ

2018/10/27 10:26

交換に使われるぐらいだから

どうせ食ってもまずいんだろうし

もっと美味そうなの買っていこうぜ

2018/10/27 10:27
なんだと?

おい、ニンゲン

聞き捨てならないことを言ったな


――なら、貴様のほうが美味いか食ってやる

2018/10/27 10:28
ぐ、ぐええええええっ!!

た……すけて……

2018/10/27 10:30
ぎゃあ!!!!

ツインテールが、ツインテールがユウトの首に!!!!

2018/10/27 10:31
うぐ……ぐえええ……

だすげて……

2018/10/27 10:32
キ、キミヤまで……

や、やばい……ごめ……うあああああ

2018/10/27 10:33
逃がさないよ
2018/10/27 10:34
ぎゃああああ……

な、なんで……二本じゃ……ぐええ

2018/10/27 10:36
なぜワタシの触手が、二本だけだと思った?

ニンゲンめ、己が行動のセキニンをとってもらうぞ

2018/10/27 10:37
もうやめて!

そんなことしたら

人間界にいられなくなるのよ!?

2018/10/27 10:39
少年たちは、目を剥き、よだれを垂らしはじめている。

自分で立つことも難しくなり、触手に持ち上げられている者も。

2018/10/27 10:40

izuru_s

やめてくれ!

そんなことでお前と一緒にいられなくなるのは

ゴメンだ!

2018/10/27 10:42
だってこいつら、

あんたをバカにしたんだよ?

ニンゲンの分際で!!

2018/10/27 10:43
お前と一緒にいられなくなることにくらべたら、

そんなんちっせえことだよ。

だから、もう、いいんだ……

2018/10/27 10:44
はやくしないと

ホントにこの子たち死んじゃうわよ!

2018/10/27 10:45
はーい、そこまで、そこまでー
2018/10/27 11:02
店長!
2018/10/27 11:35
あ!!
2018/10/27 11:36
やば!!
2018/10/27 11:37
やれやれ、結局私が出張ることになるんだな

保護者だから仕方ないが

2018/10/27 11:39
店長は少年たちの首から触手をほどくと、手短なイスに座らせた。

皆、意識は失ったままだ。

2018/10/27 11:40

izuru_s

あ……あ、あ、……アタシたち、もう……

ここにいられない……

2018/10/27 11:42
店長、いや神様、かんべんしてくれ!

こいつは、こいつは俺のために!

2018/10/27 11:43
安心しなさい、君らを魔界に送り返したりはしないよ。

むしろ、監督不行き届きで迷惑をかけたのは、

この私のほうなのだから。


ほら、お前も謝りなさい。

2018/10/27 11:47
店長の背後から、こそっと顔を出したのは、ゴースト先輩だった。
2018/10/27 11:48

izuru_s

ゴメンネ

売れればいいと思ってて。

もらったお菓子、まだ食べてない。

これ、返すよ。

2018/10/27 12:11
あ、ああ。


ゴースト先輩、例のお守り、まだあるか?

三つ欲しいんだけど。

2018/10/27 12:27
ゴースト先輩はうなづくと、シーツの中から恋愛成就のお守りを三つ取りだした。

パティシエの少年は、紙袋にお菓子とお守りを入れたセットを三つ作り、気絶したニンゲンの少年たちの傍らに置いた。

2018/10/27 12:29

izuru_s

そこまですることないじゃん!!

なんで!!

なんでこんなニンゲンなんかに!!

2018/10/27 12:31
俺たちが今いるのはどこだ?

ニンゲンの世界だろ

2018/10/27 12:32
そうだけど……
2018/10/27 12:33
俺のお菓子、だれが食うんだ?


――ニンゲンさんだろ?

まあ、ちょっとは魔族も神族もいるけどさ。

2018/10/27 12:40
……あの、おかしまだある?
2018/10/27 12:41
あ! さっきの!

まだたくさんあります!

また来てくれて、うれしい!

2018/10/27 12:42
あっちでおじさんが、おいしそうに食べてたから……

だから、2個ちょうだい。

自分用とオバケ用にするから……

2018/10/27 12:43
オバケ用はなくてもお守りあげる。

だから、お金は1つぶんでいいですよ。


(ガサゴソ)


お守り一緒に入れときますね。

あとお店のチラシも。

よかったら来てください。

2018/10/27 12:44
あ……あり、がとう
2018/10/27 13:09
ありがとうございました~
2018/10/27 13:12
ウサ耳の女の子は、嬉しそうに包みを抱えて立ち去った。
2018/10/27 13:13

izuru_s

……

……

……

なんだ、さいしょっから

こうすればよかったんじゃん。

2018/10/27 13:14
屋台の配置も考えず、

安易に大丈夫だなんて言ってしまった

私の責任だ。


にもかかわらず、ここまで成長してくれて

私はとてもうれしいよ。

2018/10/27 13:14
なんか強引にいい話にもっていこうとしてない?
2018/10/27 13:16
そりゃそうでしょう、だって店長は

神様だもの。

2018/10/27 13:16
かくして、店長、ウェイトレス、オバケは店に帰り、魔族の少年と少女の二人がその場に残された。
2018/10/27 13:17

izuru_s

2018/10/27 13:32

izuru_s

くださいな
2018/10/27 13:33
いらっしゃいませー
2018/10/27 13:58
20個もらえるかしら
2018/10/27 13:59
はい、一万円になりますー
2018/10/27 13:59
(ゲッ!)

(やべえ……かーちゃんだ)

(仮装してやがる……)

2018/10/27 14:00
(ええ!?)

(ど、どうしよう、なんでここが分かったのかな)

(連れ戻されちゃうよお)

2018/10/27 14:01
このチラシを頂いて、ここに来ました。

腕のいいパティシエさんの作った、

それはそれはおいしいお菓子があると聞いて。

2018/10/27 14:02
あ、ありがとう、ございます……


(ガクガクブルブル)

2018/10/27 14:03
うちに息子がいましてね。

去年、ふらっと家出したかと思えば、

遠くの街で菓子職人の修行をしていると風の便り。

元気にしているかしら、と今宵この街に来たのです。

2018/10/27 14:16
…………
2018/10/27 14:18
そ、それで、

息子さんには会えたんですか?

2018/10/27 14:19
うふふ。

ご想像にお任せしますわ。

2018/10/27 14:19
(ヤバイ、ヤバイ)

(もうダメだー……)

(店長呼んでくれ)

2018/10/27 14:20
(この状況で出来るわけないでしょ!)

(ああ~どうしようどうしよう)

(こうなったら――)

2018/10/27 14:21
きっと――


きっと、みんな

おいしいって言ってくれると思うわ。

このお菓子。

2018/10/27 14:22
そう、ですか
2018/10/27 14:23
また、来年も買えるかしら。

このお菓子。

2018/10/27 14:24
(ハッ)
2018/10/27 14:25
買えます!!

来年も、買えます!!

また、来てください!!

2018/10/27 14:25
楽しみにしているわ。

ごきげんよう。

2018/10/27 14:26
黒猫の仮装の客は、荷物を受け取ると、すうっ……と姿を消した。

パティシエの少年は、大きなため息をつくと、その場にへたり込んでしまった。

2018/10/27 14:27

izuru_s

た、たすかった……
2018/10/27 14:29
そう思っていいのかな……
2018/10/27 14:29
最低でも、むこう一年は大丈夫ってことなんだろ。
2018/10/27 14:30
だいじょうぶ?

ほら、立って。

2018/10/27 14:31
少女は相棒に手をさしのべた。
2018/10/27 14:46

izuru_s

すまない。

なんか今夜はいろんなことがありすぎて、

正直もう疲れたよ。

2018/10/27 14:47
在庫あとすこしだから、

もうちょっとがんばろ?

2018/10/27 14:48
おう!
2018/10/27 14:49
2018/10/27 14:49

izuru_s

果たして、彼等のお菓子は、日をまたがず完売しました。

二人は店を畳むと、朝までアトラクションを楽しみましたとさ。


めでたし、めでたし。




そうそう、シャチョさんや、女の子たちのその後はまた別のお話ということで。


                    (了)

2018/10/27 14:50

izuru_s

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