ハロウィンナイトパーク
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文字数 2,737文字
サブタイトル「怪奇!トイレの二大妖怪!」
作・あきよし全一
zenone
自己紹介が遅れた。ボクは樹希(たつき)。ごく普通の女子大生だ。この遊園地で九か月前から清掃スタッフのバイトをしている。恋人と会える時間が減ったのは痛いが、お給料は中々に良いので感謝している。
大変なのはボクだけではない。入り口では彩乃ちゃんがマジ切れしてたし、めぐみちゃんも精神状態が心配になるようなアナウンスを流していた。どの部署もいっぱいいっぱいだ。
お客様の笑顔こそ最大の対価だ。特に幼ければ幼いほど良い。
とりあえず君たちスタッフは馬車馬のように働いてね。
デッキを出せ。デュエルで生意気なチョビ髭をむしってやる。
先攻は譲ってやろう、後攻1キルで終わらせるがな!
だとすれば、声はトイレの外から聞こえているのだろうか。
まあ、ここはスタッフ共用トイレだから男女の区別なく使われている。ドア外に聞こえるほど大きな声で独り言を言ってしまった可能性もある。恥ずかしくて死にそうだ。
しかし、この攻撃は逆効果だったようだ。人の顔に似た木目は、カートゥーンアニメのようにブルブルッと身震いして油性インキを振り払う。数秒後、そこにはクッキリと輪郭の描かれた人の顔が出現した。
ふう、いきなりで驚きましたよ。
なんの話し合いもなく私を消そうとするというのは、実際ナンセンスなわけであります。
実力行使ありきという考え方は双方に不利益をもたらす。
Win-Winの関係を構築するには相互理解に基づくパートナーシップが必要不可欠なわけであります。
木目の顔は隣の壁をスライドして移動すると、ドアノブを横からガッシリと掴んだ。物理法則の無視もいいところだ。
ボクは思わず抗議の声を上げた。
いいですか、トイレでの落書き、設備の破壊、こうした諸問題に対して現状のトイレ保護法では対応できないわけです。
これらを防ぐために、早急な議論と改革が必要となっているわけです!
いいえ、本来は木目であった私という存在に輪郭を与えたのはアナタであるわけですから、責任はあくまでアナタにあるわけです。
その責任は討論の場に於いて、然るべき追及を受けるものだと確信しております。
急にむなしくなってきた。
そう言えば、今日は普段より三倍くらい働いた。このままトイレでサボり続けていても、それはそれで良いかも知れない。
要するにアンタ、トイレが汚れたり壊れたりするのが嫌なんだよね?
このトイレ男女共用なんだけど、オッサン職員が便意をもよおして駆け込んできたらどうするの?
ここまで来てドアが開かなかったらどうする?
ドアの前で脱糞しちゃうかも知れない。
木目の顔は、もとの冷静な表情に戻ってしまう。
ダメか? この説得でもドアを開けてくれないか?
私としましては、そういう事態がどこかトイレから離れた遠い場所で起こってくれるよう祈るしかありません。
これが現状のトイレ保護法の限界であるわけです。
スタッフ休憩室のトイレから出ると、外ではパレードが始まっていた。
秋の日暮れは早く、まだ16時台だというのに太陽は西の空で輝きを鈍らせはじめている。それでも赤々とした輝きは、ボクの心を洗い流してくれる気がした。
え? 木目の顔はどうしたかって? 妖怪には妖怪をぶつけるんだよ。
田崎さん、さっきトイレにすっごい美幼女のお化けが出たんですよ。
了
※ヒロインのアイコンは他の方も使われていますが、去年も使ったアイコンでしたので、そのまま使いました。
読み手の皆様には混乱を招いてしまうかも知れませんが、ひとえに作者の力量不足です。申し訳ありません。
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