第9話 【暴走】
文字数 3,318文字
長いタイトルを付けたいが‥‥、取り敢えずは【暴走】
「動きは、改善されていないようですね。」
エリカは、冷静にかわしながらG二十八号の動きを見る余力があった。
「それとも、芋娘の腕でしょうか。」
コーコは、相手の動きの機敏さに圧倒されていた。今出せる力の全てを出し切って相手の残像と戦っていた。
「‥‥早いっ、何て動きなの。」
焦るコーコは、呻くように言った。エリカは、剣の間合いの中で余裕を持ってG二十八号の攻撃をかわしていた。その動きは、鍛錬を積んだ武道家のように無駄がなかった。エリカが古武術を習得しているのをコーコは、知らなかった。
「未熟者。そんな腕で私に戦いを挑むなんて、一万年と二千年早いですわ。」
エリカは、勝ち誇って言った。コーコは、汗だくになって動いていた。
「もぅ、なんでもっと早く動けないのよ。」
コーコの悲愴な声に、エリカは冷笑を向けて言った。
「芋娘。おバカですか。その機体をどう扱えばいいのか分かっていらっしゃらない。」
エリカは、距離を置いた。
「未だその力を引き出せていないようですね。芋娘の運動能力は、見切らせて頂きました。」
エリカは、優しく言った。
「さぁ、どこを切って差し上げましょうか。」
白銀の甲冑は、両刃の剣を構えた。流石にコーコは、慌てた。
「‥‥げっ、どこから出したのよ。」
富岳の動きは、今まで以上に早かった。一気に間合いに飛び込むと、真正面家からG二十八号の頭を切り下ろした。コーコは、上下に激しく揺れる強い衝撃の中でも踏ん張った。損傷がないのが分かりホッとして呟いた。
「‥‥ふぅ、模擬剣ですよね。痛かったけど大丈夫。」
「変ですね。」
エリカは、そう言って剣で近くの松林を撫で切った。豆腐を裂くように苦も無く切り倒れた。
「よく切れます。」
「‥‥ひぇええええ。それって、ホンモノじゃないですか。反則でしょう。」
コーコは、その剣の切れ味にビビった。富岳が今度は胴を払った。G二十八号の表面が剣を弾いていた。
「やはり、硬いのですね。」
エリカは、確かめ納得するように呟いた。コーコは、剣を受けた衝撃はあったものの外装が切れていないのを不思議な思いで見た。
「‥‥凄い、切れてない。」
「あたりまえだ。儂らが開発した特殊外装は、レールガンでも撃ち抜けんよ。試したことないが。」
ドクター達の勝ち誇った声が届いた。
「嬢ちゃん。相手の持つ武器では、G二十八号に傷一つ付けられん。怖がらずに打ちかませ。」
「信じますよ。」
コーコは、そう言って富岳に迫った。白銀の甲冑は、無駄に動きの大きいG二十八号の攻撃を難なくかわして剣を当て続けた。
「ほら、これで七太刀目です。」
エリカは、憐れむように言った。
「お前はもう死んでいる。‥‥七回もね。」
「煩い。だから、逃げるな。」
コーコは、自分が持つ背一杯の力で相手を追いかけた。追い付けない焦りに情けない思いが重なり今にも泣き出しそうだった。
「遅い、遅いですわ。そんな動きでは、一生かかっても私に辿り着けませんことよ。」
「卑怯者ッ。正々堂々と正面からかかってこい。逃げるなッ。」
「芋娘。貴女は、おバカちゃんですね。そのような凄いトカゲ甲冑に乗せてもらっているのに、使い方を知らない。力の一割も引き出せていませんよ。」
「煩い、煩いッ。」
コーコの怒りがG二十八号に乗り移ったように動きに変化の兆しが見え始めた。
『‥‥あら、動きが変わったですの。』
エリカは、的確にG二十八号の変化を読み取っていた。
『これが、あの所長が開発したというシステムですか。』
G二十八号は、動きに無駄がなくなり数段早く鋭くなった。その攻撃をかわしながら富岳は、剣を当て続けた。
「‥‥まずい。」
エリカは、深く踏み込み過ぎてG二十八号の手の爪を受けてしまった。爪の先が掠めただけなのにコックピットの前部が損傷していた。
「凄い爪の切れ味だこと。」
エリカは、嫌味っぽく言った。
G二十八号の爪が、白銀の甲冑の胸を切り裂いていた。その奥のコックピットにエリカの姿を見てコーコは、驚き脅え呻いた。
「‥‥乗っていたの。」
「当然でしょう。私は、サーの称号を持つナイトの末裔です。ここで戦う覚悟があります。」
エリカは、勝ち誇ったように言い放った。
「怪我をしない離れた場所から操縦する芋娘に、この私は倒せませんことよ。」
「‥‥違う、」
コーコは、混乱していた。何故か涙が溢れ怒りが我を忘れさせた。言い返せないが、何かが違っているようにコーコは、思えた。
「‥‥わたしは、そうじゃない。」
「それなら、私を倒して見せなさい。」
エリカは、毅然と言った。
「芋娘が正しいと思うならば。遠慮は、いりませんことよ。」
富岳が剣を構えた。
「切れないなら。叩き潰すまでです。」
富岳は、一気に間合いを詰めて切りつけた。G二十八号の手が剣を受け止めていた。
「なんです‥‥、受けたの。」
エリカは、驚愕した。G二十八号の震えが強くなり始めていた。
「‥‥命を懸けて戦うなんて。」
コーコは、泣きながら呻くように言った。
「‥‥そんなの、誰も望んでいません。」
「何を綺麗ごとを仰っているの。殺人兵器に乗って言うべき言葉ですか。」
「‥‥違う、違うっ。」
コーコの泣き叫ぶ声が、G二十八号の振動を増幅しているようにも見えた。G二十八号は、操縦者の感情を読み取り力に変換できるシステムが試験的に組み込まれていた。所長が開発した一つだった。G二十八号の変容を見たドクター達は、口々に言った。
「これで勝ったな。」
「嬢ちゃんの怒りが乗り移ったG二十八号は、無敵だ。」
だが、G二十八号は、尋常でない獣のような動きに変容していた。もしも体内の操縦室にいたなら無傷ではいられない程のものだった。
「‥‥変だ。この動きは、違うぞ。」
ドクター達は、狼狽えていた。
「嬢ちゃん。落ち着け。」
「暴走だ。」
「‥‥えっ、どうしてっ。勝手に動くの。」
コーコは、パニックになって泣き叫んでいた。手足を動かしてもG二十八号に伝わらなかった。ドクター達もG二十八号がコーコの操作から離れて勝手に動いているのを認識していた。
「‥‥操作できませんよ。」
コーコは、必死に訴えた。操作室内が緊急用のライトが点滅して警報音が鳴り響いた。コントロール室では、ドクター達が慌てふためいていた。
「これは、外部から侵入されている。」
「システムが乗っ取られているぞ。」
「そんな、馬鹿な。」
「セキュリティが突破されているのか。」
そのG二十八号の異常な動きに富岳は距離をとった。
「なんなんです。暴走させてしまうおバカですか。」
【エリカ、後退しろ。】
コントロールから命令を受けたエリカの判断は早かった。
「了解です。」
富岳は、躊躇なく戦線を離れた。
「遠隔操作を遮断。」
リツコは、命じた。G二十八号の牙の生えた口が大きく広がった。それを見たドクター達は、驚愕して叫んだ。
「あれは、拙い。」
「止めさせろ。」
「ケーブルを抜け。」
G二十八号の開いた口の内部が光りだししていた。リツコがドクター達を押しのけて緊急用のケーブル排出スイッチを押した。
次の瞬間、G二十八号の動きが停止した。
「間に合ったか。ここで、あれを使っていたら始末書で済まなかった。」
トレーラーに積まれた操縦室の中で、涙を流し荒い息をつくコーコは、鬼のような形相で独り言ちていた。
「‥‥勝ちたい。あの人に勝ちたい。」
駆けつけたドクター達は、入口から覗き声を掛けた。
「嬢ちゃん。大丈夫か。ケガはないか。」
「どきなさい。」
リツコは、怒鳴りドクター達を蹴り落として操縦室に飛び込んだ。リツコに肩を支えられコーコは、声を上げて泣き出した。
「‥‥わたしは、間違っていますか。」
「動きは、改善されていないようですね。」
エリカは、冷静にかわしながらG二十八号の動きを見る余力があった。
「それとも、芋娘の腕でしょうか。」
コーコは、相手の動きの機敏さに圧倒されていた。今出せる力の全てを出し切って相手の残像と戦っていた。
「‥‥早いっ、何て動きなの。」
焦るコーコは、呻くように言った。エリカは、剣の間合いの中で余裕を持ってG二十八号の攻撃をかわしていた。その動きは、鍛錬を積んだ武道家のように無駄がなかった。エリカが古武術を習得しているのをコーコは、知らなかった。
「未熟者。そんな腕で私に戦いを挑むなんて、一万年と二千年早いですわ。」
エリカは、勝ち誇って言った。コーコは、汗だくになって動いていた。
「もぅ、なんでもっと早く動けないのよ。」
コーコの悲愴な声に、エリカは冷笑を向けて言った。
「芋娘。おバカですか。その機体をどう扱えばいいのか分かっていらっしゃらない。」
エリカは、距離を置いた。
「未だその力を引き出せていないようですね。芋娘の運動能力は、見切らせて頂きました。」
エリカは、優しく言った。
「さぁ、どこを切って差し上げましょうか。」
白銀の甲冑は、両刃の剣を構えた。流石にコーコは、慌てた。
「‥‥げっ、どこから出したのよ。」
富岳の動きは、今まで以上に早かった。一気に間合いに飛び込むと、真正面家からG二十八号の頭を切り下ろした。コーコは、上下に激しく揺れる強い衝撃の中でも踏ん張った。損傷がないのが分かりホッとして呟いた。
「‥‥ふぅ、模擬剣ですよね。痛かったけど大丈夫。」
「変ですね。」
エリカは、そう言って剣で近くの松林を撫で切った。豆腐を裂くように苦も無く切り倒れた。
「よく切れます。」
「‥‥ひぇええええ。それって、ホンモノじゃないですか。反則でしょう。」
コーコは、その剣の切れ味にビビった。富岳が今度は胴を払った。G二十八号の表面が剣を弾いていた。
「やはり、硬いのですね。」
エリカは、確かめ納得するように呟いた。コーコは、剣を受けた衝撃はあったものの外装が切れていないのを不思議な思いで見た。
「‥‥凄い、切れてない。」
「あたりまえだ。儂らが開発した特殊外装は、レールガンでも撃ち抜けんよ。試したことないが。」
ドクター達の勝ち誇った声が届いた。
「嬢ちゃん。相手の持つ武器では、G二十八号に傷一つ付けられん。怖がらずに打ちかませ。」
「信じますよ。」
コーコは、そう言って富岳に迫った。白銀の甲冑は、無駄に動きの大きいG二十八号の攻撃を難なくかわして剣を当て続けた。
「ほら、これで七太刀目です。」
エリカは、憐れむように言った。
「お前はもう死んでいる。‥‥七回もね。」
「煩い。だから、逃げるな。」
コーコは、自分が持つ背一杯の力で相手を追いかけた。追い付けない焦りに情けない思いが重なり今にも泣き出しそうだった。
「遅い、遅いですわ。そんな動きでは、一生かかっても私に辿り着けませんことよ。」
「卑怯者ッ。正々堂々と正面からかかってこい。逃げるなッ。」
「芋娘。貴女は、おバカちゃんですね。そのような凄いトカゲ甲冑に乗せてもらっているのに、使い方を知らない。力の一割も引き出せていませんよ。」
「煩い、煩いッ。」
コーコの怒りがG二十八号に乗り移ったように動きに変化の兆しが見え始めた。
『‥‥あら、動きが変わったですの。』
エリカは、的確にG二十八号の変化を読み取っていた。
『これが、あの所長が開発したというシステムですか。』
G二十八号は、動きに無駄がなくなり数段早く鋭くなった。その攻撃をかわしながら富岳は、剣を当て続けた。
「‥‥まずい。」
エリカは、深く踏み込み過ぎてG二十八号の手の爪を受けてしまった。爪の先が掠めただけなのにコックピットの前部が損傷していた。
「凄い爪の切れ味だこと。」
エリカは、嫌味っぽく言った。
G二十八号の爪が、白銀の甲冑の胸を切り裂いていた。その奥のコックピットにエリカの姿を見てコーコは、驚き脅え呻いた。
「‥‥乗っていたの。」
「当然でしょう。私は、サーの称号を持つナイトの末裔です。ここで戦う覚悟があります。」
エリカは、勝ち誇ったように言い放った。
「怪我をしない離れた場所から操縦する芋娘に、この私は倒せませんことよ。」
「‥‥違う、」
コーコは、混乱していた。何故か涙が溢れ怒りが我を忘れさせた。言い返せないが、何かが違っているようにコーコは、思えた。
「‥‥わたしは、そうじゃない。」
「それなら、私を倒して見せなさい。」
エリカは、毅然と言った。
「芋娘が正しいと思うならば。遠慮は、いりませんことよ。」
富岳が剣を構えた。
「切れないなら。叩き潰すまでです。」
富岳は、一気に間合いを詰めて切りつけた。G二十八号の手が剣を受け止めていた。
「なんです‥‥、受けたの。」
エリカは、驚愕した。G二十八号の震えが強くなり始めていた。
「‥‥命を懸けて戦うなんて。」
コーコは、泣きながら呻くように言った。
「‥‥そんなの、誰も望んでいません。」
「何を綺麗ごとを仰っているの。殺人兵器に乗って言うべき言葉ですか。」
「‥‥違う、違うっ。」
コーコの泣き叫ぶ声が、G二十八号の振動を増幅しているようにも見えた。G二十八号は、操縦者の感情を読み取り力に変換できるシステムが試験的に組み込まれていた。所長が開発した一つだった。G二十八号の変容を見たドクター達は、口々に言った。
「これで勝ったな。」
「嬢ちゃんの怒りが乗り移ったG二十八号は、無敵だ。」
だが、G二十八号は、尋常でない獣のような動きに変容していた。もしも体内の操縦室にいたなら無傷ではいられない程のものだった。
「‥‥変だ。この動きは、違うぞ。」
ドクター達は、狼狽えていた。
「嬢ちゃん。落ち着け。」
「暴走だ。」
「‥‥えっ、どうしてっ。勝手に動くの。」
コーコは、パニックになって泣き叫んでいた。手足を動かしてもG二十八号に伝わらなかった。ドクター達もG二十八号がコーコの操作から離れて勝手に動いているのを認識していた。
「‥‥操作できませんよ。」
コーコは、必死に訴えた。操作室内が緊急用のライトが点滅して警報音が鳴り響いた。コントロール室では、ドクター達が慌てふためいていた。
「これは、外部から侵入されている。」
「システムが乗っ取られているぞ。」
「そんな、馬鹿な。」
「セキュリティが突破されているのか。」
そのG二十八号の異常な動きに富岳は距離をとった。
「なんなんです。暴走させてしまうおバカですか。」
【エリカ、後退しろ。】
コントロールから命令を受けたエリカの判断は早かった。
「了解です。」
富岳は、躊躇なく戦線を離れた。
「遠隔操作を遮断。」
リツコは、命じた。G二十八号の牙の生えた口が大きく広がった。それを見たドクター達は、驚愕して叫んだ。
「あれは、拙い。」
「止めさせろ。」
「ケーブルを抜け。」
G二十八号の開いた口の内部が光りだししていた。リツコがドクター達を押しのけて緊急用のケーブル排出スイッチを押した。
次の瞬間、G二十八号の動きが停止した。
「間に合ったか。ここで、あれを使っていたら始末書で済まなかった。」
トレーラーに積まれた操縦室の中で、涙を流し荒い息をつくコーコは、鬼のような形相で独り言ちていた。
「‥‥勝ちたい。あの人に勝ちたい。」
駆けつけたドクター達は、入口から覗き声を掛けた。
「嬢ちゃん。大丈夫か。ケガはないか。」
「どきなさい。」
リツコは、怒鳴りドクター達を蹴り落として操縦室に飛び込んだ。リツコに肩を支えられコーコは、声を上げて泣き出した。
「‥‥わたしは、間違っていますか。」