夜の海でサメやアシカと泳ぐ(ガラパゴス)
文字数 1,476文字
ガラパゴスの海・夜
ガラパゴスの海は暖流と寒流が流れ込んでぶつかるので、海流の流れが非常に複雑な上、プランクトンが多くて透明度が悪い。
同じ11月の日でも、ポイントや水深によって水温は22度~28度と開きがある。
プランクトンが多いということはしかし、それを食べる魚が多いということで、さらにその魚を食べるサメやマグロなど大型魚類の多さということでもある。ジンベイザメやマンタのようなプランクトン食性の魚たちも、この海域に集まってくる。
しかし時に見通しが3、4メートルを切るような透明度の悪さと、予測のつかない潮の流れは、「ダイバーが流される海」という評判の元にもなっている。
海中で、あるいは海面に浮上した後に流されてしまい、船に拾い上げられるまで数時間海を漂う羽目になった人の話なども聞いた。
そんな海を真っ暗な夜に降りていく。
夜になってやや荒れ始めた海を、ウォルフ島の北側に向けて大きめのゴムボート が進む。
月も出ていないあたりは、星明かり以外、完全な暗闇だ。
その闇の中で海に飛び込み、手元のダイブライトだけを頼りに潜行する。
アラスカから来たダイバー2人がそのフロンティア精神を発揮してどんどん先に進んでいくので、後を追う。
突然、大きなものが目の前を横切った。
ハンマーヘッドシャークの流麗な姿。
昼間は40メートル以上の深いところを泳いでいて、なかなか近くで見ることができなかった。
しかし今は15メートルほどの深さを行き来して、繰り返しダイブライトの光の中にその姿を浮かび上がらせる。こちらの様子を探っているようだ。
何しろ暗い上に水が濁っているので、3、4メートルより先にあるものは見えない。姿が見えた時には、それは目の前にいる。
ダイブプランで指定された50分が過ぎたので、浮上を始める。
水面に出ると、海は先ほどよりもさらに荒れ模様で波が高く、流れも速くなっている。
30メートルほど先にパンガの姿を見つけ、ライトでシグナルを送る。こちらの姿を確認したのを確かめてから、流されないように待つ。
波が高く、他のダイバーを引き上げるのに苦労しているようで、時間がかかる。
冷たい海に浮かびながら波をかぶりつつ空を見上げると、満天の星空だ。
ようやくパンガに引き上げられて、船への帰路をたどる。
運転手が時々、岸壁にライトを投げかけて位置を確かめる以外、互いの顔も見えない。
顔を上げれば左手にカシオペア、右手にプレアデスの散開星団が目に入る。
視線を海に落とすと、パンガの立てる波がプランクトンの生物発光でちらちらと光る。
波の中に光っては消える、はかなげな光は海の星……。
風に吹かれながら空の星と海の星を見つめ、最高に詩的なダイブだと思った。
そしてイサベラ島北側のポイントでの夜のダイブ。
暗い海の中、見通しも例によってきわめて悪い。
深さ10メートルほどの浅瀬で、海底が砂地になっているところを進んでいくと、大きなものがさあっと体の横を通る。
あわててライトで追いかけ、それがアシカだと気づくのに一瞬、間があった。真っ暗な海の中をさえ、こんなに自由に泳ぎ回っている。
あっちへこっちへと何頭ものアシカがライトの中を横切る。ただでさえ透明度の悪い水の中を砂を舞い挙げるので、ダイブライトの光も放散状に乱反射して、あたりをぼんやりと照らすだけ。
限りなく無重力に近い状態で水の中に浮かびながら、ぼんやりとした光の中を、突然目の前に現れては消えるアシカの姿。
ライトの光を反射して光るその大きな瞳は、限りなく夢の経験に近かった。
ガラパゴスの海は暖流と寒流が流れ込んでぶつかるので、海流の流れが非常に複雑な上、プランクトンが多くて透明度が悪い。
同じ11月の日でも、ポイントや水深によって水温は22度~28度と開きがある。
プランクトンが多いということはしかし、それを食べる魚が多いということで、さらにその魚を食べるサメやマグロなど大型魚類の多さということでもある。ジンベイザメやマンタのようなプランクトン食性の魚たちも、この海域に集まってくる。
しかし時に見通しが3、4メートルを切るような透明度の悪さと、予測のつかない潮の流れは、「ダイバーが流される海」という評判の元にもなっている。
海中で、あるいは海面に浮上した後に流されてしまい、船に拾い上げられるまで数時間海を漂う羽目になった人の話なども聞いた。
そんな海を真っ暗な夜に降りていく。
夜になってやや荒れ始めた海を、ウォルフ島の北側に向けて
月も出ていないあたりは、星明かり以外、完全な暗闇だ。
その闇の中で海に飛び込み、手元のダイブライトだけを頼りに潜行する。
アラスカから来たダイバー2人がそのフロンティア精神を発揮してどんどん先に進んでいくので、後を追う。
突然、大きなものが目の前を横切った。
ハンマーヘッドシャークの流麗な姿。
昼間は40メートル以上の深いところを泳いでいて、なかなか近くで見ることができなかった。
しかし今は15メートルほどの深さを行き来して、繰り返しダイブライトの光の中にその姿を浮かび上がらせる。こちらの様子を探っているようだ。
何しろ暗い上に水が濁っているので、3、4メートルより先にあるものは見えない。姿が見えた時には、それは目の前にいる。
ダイブプランで指定された50分が過ぎたので、浮上を始める。
水面に出ると、海は先ほどよりもさらに荒れ模様で波が高く、流れも速くなっている。
30メートルほど先にパンガの姿を見つけ、ライトでシグナルを送る。こちらの姿を確認したのを確かめてから、流されないように待つ。
波が高く、他のダイバーを引き上げるのに苦労しているようで、時間がかかる。
冷たい海に浮かびながら波をかぶりつつ空を見上げると、満天の星空だ。
ようやくパンガに引き上げられて、船への帰路をたどる。
運転手が時々、岸壁にライトを投げかけて位置を確かめる以外、互いの顔も見えない。
顔を上げれば左手にカシオペア、右手にプレアデスの散開星団が目に入る。
視線を海に落とすと、パンガの立てる波がプランクトンの生物発光でちらちらと光る。
波の中に光っては消える、はかなげな光は海の星……。
風に吹かれながら空の星と海の星を見つめ、最高に詩的なダイブだと思った。
そしてイサベラ島北側のポイントでの夜のダイブ。
暗い海の中、見通しも例によってきわめて悪い。
深さ10メートルほどの浅瀬で、海底が砂地になっているところを進んでいくと、大きなものがさあっと体の横を通る。
あわててライトで追いかけ、それがアシカだと気づくのに一瞬、間があった。真っ暗な海の中をさえ、こんなに自由に泳ぎ回っている。
あっちへこっちへと何頭ものアシカがライトの中を横切る。ただでさえ透明度の悪い水の中を砂を舞い挙げるので、ダイブライトの光も放散状に乱反射して、あたりをぼんやりと照らすだけ。
限りなく無重力に近い状態で水の中に浮かびながら、ぼんやりとした光の中を、突然目の前に現れては消えるアシカの姿。
ライトの光を反射して光るその大きな瞳は、限りなく夢の経験に近かった。
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