イルカと泳ぐ(カリブ海のビミニ島)4

文字数 1,314文字

 3日目は2度目のイルカ探し。
 イルカのなわばり水域に入って1時間半ほど過ぎた頃、5匹のマダライルカたちが現れ、船と一緒に泳ぎ出した。船の作り出す波に乗って、ごきげんな様子だ。
 しばらく船上から様子を見、船長のOKが出たので、シュノーケルをくわえて水に入る。
 イルカたちは待ってましたというように、そばを泳ぎ回り、いかにもこちらに見せるためのちょっと格好をつけた泳ぎを見せてくれる。
 イルカたちのソナーのエコーが水に響いて体を貫き、心地いい。
 少し離れたところを若いイルカが2匹、泳いでいる。水中カメラを向けると、「わ~い」とふきだしをつけたくなるような楽しそうなようすで、いっさんに私(あるいはカメラ)めがけて飛んできた。ばっちりイルカ・スマイルを捕らえる。
 この日は5頭のイルカたちと存分に遊ぶことができた。

 3回目、最後のイルカ探し。
 マダライルカの群や親子連れ、ハンドウイルカのペアなどが寄ってきては、船の波に乗って遊ぶが、人間が水に入るととたんに離れていってしまう。
 水から上がるとまた近寄ってきて、人間が水に入るとまた向こうへ行ってしまうということを3回繰り返し、この時点で今日は気分が乗らないらしいと判断。
 イルカたちの気持ちを尊重し、船の上から見るだけに決める。
 すると、とたんに何頭もが船にぴったりついて、水面すれすれに踊るように泳ぎ出す。時々ジャンプしたりしながら、夕暮れまでかなり長い間、目を楽しませてくれた。
 「今日は水には入らず見てちょうだい」の日だったらしい。

 この1度の滞在で、私のハートはビミニの海の虜(とりこ)になった。
 他のどこでも見たことのない、あざやかな深いターコイズブルーの海を見ているだけで、胸が満たされる。「またあの海に潜りに行く時間を作るために」と考えるだけで、仕事をはかどらせる気力がわく。

 ビミニの海を思い出しながら、たまたまテレビの科学専門チャンネルをつけたら、お世話になったダイブショップのオーナーが映っていた。
 『まだ解き明かされない世界の謎』というような番組で、「ビミニの海底にある人工の石畳のような構造物[注2]は、海底に沈んだアトランティスの遺跡の一部では……」という話だった。オーナーはその海底ガイドを務めていた。
 次はあそこに潜らなければ……。


NOTES
[注2]ビミニ・ロードは、1968年にフリーダイバーのジャック・マイヨールらによって発見された。エドガー・ケイシーの予言に「1968年、アメリカ東海岸の海にアトランティスが再浮上する」というのがあり、それとだぶって話題になったらしい。
 次にビミニに戻った時に潜ってきたが、巨大な石が石畳のように幾つも並んでいる様は、確かに人造のもののように見える。ただ海岸に近い水深10メートルほどの浅い海の底なので、「アトランティスの遺跡」そのものという感じはしない。[注3]
 YouTubeでこの石畳を見るには「Bimini Road」で画像検索。 

[注3]ジャーナリストのダニエル・リストによれば、実はヘミングウェイは生前、アトランティスの遺跡調査に興味を持っており、ビミニに住んだのもそれが理由の一つだったという。


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