マンタと泳ぐ(ハワイ島)
文字数 1,141文字
ハワイのホノルルに引っ越した。
当然のように、暇を見てカウアイ島やハワイ島へダイビングに出かけたが、ここではハワイ島でナイト・ダイブに行った時のこと。
お目当ては、夜の海でマンタ(オニイトマキエイ)に会うこと。
最初の1本は夕暮れ時。日が沈む時間は魚たちにとっても食事時で、夜行性の魚も動き始めるので、海の中は結構にぎやかだ。バラクーダ(オニカマス)の大群やウミガメたち、小さなマンタやマダラトビエイの編隊などと会うことができた。
その後、船に上がって夕日が沈むのを見終わり、あたりが真っ暗になってから2本目を潜る。
ダイブマスターが、大きめの懐中電灯のような水中ライトを海底の砂地に設置した。同じボートのダイバーたちはそこに集まり、注意しながら砂の上に膝をつく。このあたりはウツボが多いので、踏んづけたりするとえらいことになる。
暗い水の中で、ダイバーたちがそれぞれの水中ライトを上に向けると、光に引きつけられてプランクトンが集まり始める。このプランクトンを食べようとマンタがやって来るはずなのだ。
やがて他の船のダイバーたちも加わり、暗い水の中、水中ライトの光でお互いの姿がぼんやり見えるまでになる。
砂の上に膝をついて輪になり、篝火のように片手にライトをかかげて、しきりにあたりをうかがうダイバーたちの姿は、まるで神の訪れを待ちこがれる海の村人だ。
待つことしばらく、二度ほどマンタの姿がぼんやりと見えたが、すぐに闇の中に姿を消してしまう。
昨夜は1匹も現れなかったそうだから、今晩も……と思いかけた時、巨大なマンタが悠然と姿を見せ、ゆったりと頭の上を通り過ぎた。
ダイバーの輪の端まで泳ぎ過ぎると、ゆっくり踊るように体をひるがえし、大きな口を開けてプランクトンをすくいながら、頭の上を通っていく。
人間をおそれる様子はまったくない。ぶつかっても別にかまわないといった角度で頭の上を泳いでいく。
目の前に迫ってくるマンタにぶつからないよう後ろにのけぞり、後ろ向きに倒れながら両腕を広げて、顔の前すれすれを通るマンタの大きさを測ってみた。差し渡しは4メートル以上、多分5メートルはある。
ライトの光で準備される食膳が気に入っているのか、それとも「海の神」を拝むダイバーたちの魅入られた様子を楽しんでいるのか、マンタは1時間近くも、ゆったりと舞い続けてくれた。
やがてエアの残量が少なくなったり、水中ライトの電池が切れたダイバーたちが少しずつ去って行き、あたりが再び暗くなり始める。
1時間を過ぎたところで私のライトも電池が切れ、船に戻ることにする。
船の上でウェットスーツを脱いで、風に吹かれながら空を見上げると、満月。
港へ向けて揺られながら見つめる夜の海にイルカが跳ねた。
当然のように、暇を見てカウアイ島やハワイ島へダイビングに出かけたが、ここではハワイ島でナイト・ダイブに行った時のこと。
お目当ては、夜の海でマンタ(オニイトマキエイ)に会うこと。
最初の1本は夕暮れ時。日が沈む時間は魚たちにとっても食事時で、夜行性の魚も動き始めるので、海の中は結構にぎやかだ。バラクーダ(オニカマス)の大群やウミガメたち、小さなマンタやマダラトビエイの編隊などと会うことができた。
その後、船に上がって夕日が沈むのを見終わり、あたりが真っ暗になってから2本目を潜る。
ダイブマスターが、大きめの懐中電灯のような水中ライトを海底の砂地に設置した。同じボートのダイバーたちはそこに集まり、注意しながら砂の上に膝をつく。このあたりはウツボが多いので、踏んづけたりするとえらいことになる。
暗い水の中で、ダイバーたちがそれぞれの水中ライトを上に向けると、光に引きつけられてプランクトンが集まり始める。このプランクトンを食べようとマンタがやって来るはずなのだ。
やがて他の船のダイバーたちも加わり、暗い水の中、水中ライトの光でお互いの姿がぼんやり見えるまでになる。
砂の上に膝をついて輪になり、篝火のように片手にライトをかかげて、しきりにあたりをうかがうダイバーたちの姿は、まるで神の訪れを待ちこがれる海の村人だ。
待つことしばらく、二度ほどマンタの姿がぼんやりと見えたが、すぐに闇の中に姿を消してしまう。
昨夜は1匹も現れなかったそうだから、今晩も……と思いかけた時、巨大なマンタが悠然と姿を見せ、ゆったりと頭の上を通り過ぎた。
ダイバーの輪の端まで泳ぎ過ぎると、ゆっくり踊るように体をひるがえし、大きな口を開けてプランクトンをすくいながら、頭の上を通っていく。
人間をおそれる様子はまったくない。ぶつかっても別にかまわないといった角度で頭の上を泳いでいく。
目の前に迫ってくるマンタにぶつからないよう後ろにのけぞり、後ろ向きに倒れながら両腕を広げて、顔の前すれすれを通るマンタの大きさを測ってみた。差し渡しは4メートル以上、多分5メートルはある。
ライトの光で準備される食膳が気に入っているのか、それとも「海の神」を拝むダイバーたちの魅入られた様子を楽しんでいるのか、マンタは1時間近くも、ゆったりと舞い続けてくれた。
やがてエアの残量が少なくなったり、水中ライトの電池が切れたダイバーたちが少しずつ去って行き、あたりが再び暗くなり始める。
1時間を過ぎたところで私のライトも電池が切れ、船に戻ることにする。
船の上でウェットスーツを脱いで、風に吹かれながら空を見上げると、満月。
港へ向けて揺られながら見つめる夜の海にイルカが跳ねた。
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