ペンギンやゴンドウクジラと泳ぐ(ガラパゴス)

文字数 1,335文字

ガラパゴスの海・昼

 バルトロメ島の近くでは、ガラパゴスペンギンとシュノーケリングする機会もあったが、とにかく早い。体長30センチの小さな体で、ぴゅんぴゅん水の中を飛び回る。
 姿を見つけ、シュノーケルをくわえて水に入ると、もう7、8メートル先を泳いでいる。
 フンボルト海流の流れ込む冷たい海を、ペンギンを追いかけ夢中で泳いでいると、突然、海イグアナがつつ~っと横を泳いでいった。
 ペンギンには追いつけそうにないので、目標を切り替えてこっちを追いかけてみるが、これも結構なスピードだ。
 ひれがあるわけでもないハ虫類のイグアナが、波に揺られながら水を切って泳いでいく姿はかなり不思議でもあり、なんだか妙に気持ちがなごむ。
 水の中では大急ぎのペンギンも、いったん陸にあがってしまうと実にのんびりしている。岩場でくつろいでいるところに、水際から近づいていく。
 水際から寄っていくのは、陸から近づく方法がないためで、近くまで大きめのゴムボート(パンガ)で行って、そこからペンギンのいる岸壁まで泳ぐ。
 くつろいでいるペンギンは、ポルトガル人の写真家が大きなカメラを抱え、顔から10センチのところにレンズを近づけたりしても、全然意に介さなかった。

 ダーウィン島の近くでは、予期していなかった幸運にありついた。
 乗船中は朝6時起床、6時半には1本目のダイブ開始というスパルタ式スケジュール。
 その日の午前中の2本では、悪名高いガラパゴスの急流が流れる海底を岩にしがみつき、フジツボだらけの岩にぼこぼこ打ち付けられながら匍匐前進しつつ、ハンマーヘッドシャークが通りがかるのを待った。
 さすがに消耗したダイバーの半数が午後の3本目を休むことに。
 気を利かせたネイチャーガイド兼ダイブマスターが、バードウォッチングを提案。
 パンガに乗って島の岸壁の鳥たちを見て回り、ダーウィンズ・アーチと呼ばれる岩礁に向けて進んでいると、突然、大量の小さなクジラのような生き物に囲まれた。
 「カズハゴンドウだ!」ガイドが叫ぶ。「ガラパゴスでもとても珍しい。最後に見たのは何年も前だ」。
 ハンドウイルカよりも小柄なちびクジラたちが、見渡したところ200頭くらいの群でボートをとり巻いて泳いでいる。群にはマイルカも混じっていて、時々水からジャンプする。
 みんなはしばらくパンガの上から写真をとったりしていたが、そのうち「もうこれはたまらん」ということになり、急いで船に戻り、シュノーケリングのギアをひっつかんだ。
 それから先ほどのポイントに戻って、幸い群を見つけなおすことができた。
 水に入ると、カズハゴンドウたちのおしゃべりが聞こえてくる。
 イルカのにぎやかなおしゃべりとも、ザトウクジラの音楽的な歌とも違う、ハイピッチで均一な感じの声だ。
 群の中でも数頭ずつがぴったりよりそい、小さなグループを作って並んで泳いでいる。
 ハンドウイルカのように口先が突き出ておらず、頭に丸みがあって、小柄なこととも合わせて、なんともかわいらしい。
 水の上から200頭くらいと見たのだが、遙かに深いところにもたくさんいるようだ。後で調べたら、カズハゴンドウは数百頭から時に千頭以上の群で動くらしい。

 海は広く、そして限りなく予測がつかない。
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