6 あいびき

文字数 556文字

エリザベト王妃の部屋へ、ロドリーゴ・ボーサが、帰国の挨拶に訪れた。
「あら、ボーサ公。お帰りなさい。諸国漫遊の旅は、楽しかったですか?」
「はい、王妃様。あちこち旅して、私はたくさんのことを学んで帰りました。ああ、そうだ。王妃様のお国にも、立ち寄りました」
「まあ! フランスへ? みんな、元気でしたか?」
「はい、皆様、ご息災にお過ごしでした。それで、お妹様から、荷をお預かりして……。ひどく重いのですが、どちらにお運びしましょう?」
「妹から! それは、アレよ。例のブツだわ! まあ、嬉しい。すぐに私の部屋へ運ばせて!」
「例のブツ……? 妹様は、書籍と申されましたが」
「そうそう、書籍書籍。薄い、紙の書籍ね!
「はあ……。

あの、王妃様。今日は、あなたにお会い頂きたい方がご一緒でして」

「まあ。どなたかしら」
「すぐそこまで、いらしてます。私はこれで退出しますので、どうかごゆるりと」
辺りを見回し、人気のないのを確認してから、ロドリーゴは退出していった。

代わって、するりと王妃の部屋に忍び込んだのは、カルロス王子だった。

ママ!
「まあ、カルロスちゃん!
ママ! ママ! ママ!(ごろにゃーん)
「まあ、この子ったら、すっかり私に懐いちゃって。さあさ、かわいい、カルロスちゃん。ママのお膝にお越しなさい」
「ごろにゃーーん」
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登場人物紹介

ドン・カルロス


イスパニア(スペイン)の王子

カルロスの子ども時代

ロドリーゴ・ボーサ侯爵


カルロスの親友



ロドリーゴの子ども時代

フェリーペ2世


イスパニアの国王。カルロスの父。暴君

エリザベト王妃

フランス王室出身。はじめ、カルロスの婚約者だったが、カルロスの父、フェリーペ2世と結婚し、カルロスの「母」となる

エーボリ公女


カルロスに恋していたが、カルロスが王妃を愛しているとわかり、敵になる

レルマ伯爵

カルロスの忠臣

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