7 まるで囚われ人のように……
文字数 756文字
フェリーペ2世は、息子のカルロスを疑っていた
王はまた、自分の白くなった髪に劣等感を抱いていた。若い王妃にふさわしいのは、実は息子の方だったと思うと、たまらない気持ちになった。
久しぶりに会った息子が、願い出た。
その、若々しく生い茂った髪、シミひとつない白い肌を見ていると、王の心に、どす黒い感情が湧き上がってきた。
息子は、声をつまらせた。
「父上。過ぐる年月、私は、ここ、イスパニアで、イスパニアの王子と生まれながら、まるで、よそ者のように暮らしてきました。父上の国で、いつかは自分が治める筈のこの国で、まるで、囚われ人のように暮らして来ました……」*
「いいえ! いたずらに、23年の月日を重ね、今、私は、血が沸き立っております。お願いでございます。この身を、フランデルンへ! 無益に過ごした今までの月日を、贖わせて下さいませ。天から授かった私の才覚を、なにとぞ、目覚めさせて下さいませ。機会を! 名誉ある働きを、どうぞ、この身に!」*
王は立ち上がった。
……。