14 曇らない心
文字数 798文字
鉄の格子で囲われた一室。カルロスは、小さなテーブルの前に腰を下ろし、頬杖をついて、俯いていた。
静かに扉が開き、ロドリーゴが入ってきた。
青白い顔に、喜びの色が浮かんだ。
「よく来てくれた。お前も、辛かったろう? 僕は知っている。お前は、僕が母上に、恋をしていることを、父上に告げたのだろう? 僕の秘密を手土産に、お前は、父上の宰相になったのだ。だがそれは、このイスパニアの国の為だ。この国には、ぜひとも、お前のような器の大きな人間が必要だ。僕では、ダメだ。不甲斐ない王子に代わって、お願いだ、ロドリーゴ。この国を頼む」
「だが、たったひとつ、ロドリーゴ。せめて王妃を巻き込まないでいてくれたら!
だが、お前の正義は、まっすぐだ。僕の妃殿下への心遣いなど、顧みるに足らないものだった*。
……愚かなことを言った。許してくれ、ロドリーゴ」
「何を言ってるのだ、カルロス。お前を牢に閉じ込めたのは、まさしくお前の秘密を……王妃への恋心 を……、エーボリ公女 に口外させない為だ。お前がもう二度と、エーボリのような腹黒い女に、心の裡を明かすことのないようにだ」
二人の友の耳に、重々しい足音が聞こえた。王の重臣が、牢の前に立った。
胸に手を当て、恭しく重臣は言った。
じろりと、ロドリーゴを睨んだ。
すぐにカルロスに向き直り、猫なで声で続ける。
重臣は敬礼して、立ち去っていった。