13 友を救う為なら、なんでもする
文字数 1,695文字
招待もなく、何の約束もなく、いきなり、カルロスは、エーボリ公女の部屋を訪れた。
「ああ、エーボリ。お願いだから、僕を恋していた時の気持 ちを、思い出してくれないか? 僕は、どうしても、王妃様 に会わなくちゃならないんだ。もし君が、あの時の気持ちを、ほんのちょっとでも蘇らせてくれたなら……」*
そこへ、どかどかと踏み込んできた男があった。
この国の宰相となったボーサ侯、ロドリーゴだった。近衛兵を2人、連れている。
エーボリ公女は、憤慨した。鼻息荒く叫んだ。
衛兵たちは、自分の聞いたことが信じられなかったようだ。直立したまま動こうとしない。
息子だとて、王は、容赦しなかろう。間違いなく、カルロスは、抹殺される。
わけがわからぬまま呆然とし、カルロスは、部屋から連れ出された。
ロドリーゴは、短刀を引き抜いた。逃げ出しかけた公女の肩を、ぐいと掴んで引き止める。
身の危険を感じ、公女は激しく、身を捩った。
ボーサ侯は、薄く笑った。
肩を掴んだ手をひっかき、その顔にツバを吐きかけ、エーボリ公女はひどく暴れた。
ロドリーゴの顔が歪んだ。うつむいて、つぶやく。
ロドリーゴの手に、公女が噛み付いた。
ロドリーゴの腕から、力が抜けた。
悲鳴を上げ、女は、あっという間に逃げ去っていった。
一人残り、ロドリーゴは、天を仰いだ。
その目に冥い陰が落ちた。
小さな、だが、強い声で、彼はつぶやいた。
……。