1 お前は、ひどい!
文字数 1,506文字
陽光煌めく、宮殿の庭。
子どもたちの歓声が、元気に響き渡っていた。
太陽めがけて、ギリシア風の柱が立ち並んでいた。太い円柱の影が、黒々と、地面に落ちている。その陰に隠れるようにして、一人の少年が、遊んでいる少年たちを見つめていた。
庭園の主役、王子、カルロス である。
彼は、劣等感に苛まれていた。ついさっき、かけっこで、ビリになったばかりである。恥ずかしさにそのままゴールを走り抜け、この円柱までやってきた。
打ち沈むカルロスの耳に、優しい声が聞こえた。
ロドリーゴ・ボーサ の声だ。カルロス王子と年齢が近いというだけで呼ばれてきた、下級貴族の息子である。
はっとして身を乗り出したカルロスの目に、ロドリーゴが、年下の少年といるのが映った。カルロスの鼻先を走って、ゴールした子だ。
少年は、肘を直角に曲げる
少年の背中に手を添え、上体を前傾させる。
言われたとおりに、上半身を前に傾けて肘を曲げ、少年は、走り始めた。
並んで一緒に走りながら、ロドリーゴが褒めてやっているのが聞こえた。
甲高い声で、年少の少年は叫んだ。
笑いながら、ロドリーゴは、立ち止まった。ぶらぶらと、円柱の方へ歩いてくる。
その彼の前へ、カルロスは姿を現した。
いらいらとカルロスは遮った。
恭しく、ロドリーゴは頭を下げた。
口をへの字に曲げ、さっきの少年が駆け去った方を睨んだ。
とうとう、カルロスは叫んだ。
冷静な目で、ロドリーゴが、カルロスを見る。
厳かに、彼は言った。