3 永遠の忠節
文字数 900文字
その晩。
カルロスの部屋へ、小さな人影が忍び込んだ。ロドリーゴ・ボーサ である。
下級貴族の息子であるロドリーゴ、その生命は、無に等しい。彼が矢を放ったのだとわかったら、残忍な王は、幼い彼を殺してしまったかもしれない。
カルロス は、背中に湿布を張り、寝台にうつ伏せになっていた。
背中一面が赤く、ミミズ腫れにになっている。侍従は、さらなる塗り薬を医師に処方させるために、退出していた。
呼びかける声は震えていた。
ロドリーゴは、おずおずと近づいてきた。
湿布からはみ出した、残忍な赤い傷跡に、息を呑んだ。
王子はじっと、彼の顔を見た。
真っ赤になって、ロドリーゴは叫んだ。
「そしたら、お前は、殺されてしまった かもしれないよ? これは……僕の背中のこの傷は、見かけほど、ひどくはないんだ。だって、僕は、王の息子 だからね。刑吏が、どこかで、手加減してくれたんだ。鞭打たれたのが、お前じゃなくてよかった」
そろそろと、カルロスは起き上がった。
ロドリーゴは、泣いていた。真っ赤な頬の上を、涙が、際限もなく、流れ落ちていく。彼は、もはや、王子と目を合わせることができなかった。
ぺろりと、カルロスが上唇を舐めた。
思わず、ロドリーゴは、カルロスの前に跪いた。
驚いたように、カルロスは、目をぱちぱちさせた。