錆びた空から落ちる雨 #11

文字数 486文字

 病院から出ると、空は晴れ間を覗かせていた。

「雨……やんだんだ」

 雨上がりの雫を纏う町は再び現れた太陽に照らされて、夜のネオンとは違った爽やかな煌めきに包まれていた。空を見上げると、ビルの向こうに大きな虹が架かっている。

 きれい……。

 久しぶりに虹を見たからか、まるで連想ゲームのようにバス事故の記憶が甦った。

 七年前にバスの中で交わした、結弦との会話を思い出す。

 そういえばあの湖、七色狭とか七色ダムとか言ってたっけ?

 結弦は見応えがあるって言っていたけれど、美輝は興味なさそうだったな。

「行って、みようかな……」

 屋根から雫が垂れていくのを目で追いながらひとりごちた。

 事故のあと、現場付近には献花台が設けられていた。

 わたしは入院中もマスコミから、『献花にはいつ行くのか?』など何度も無神経に問いかけられたが、結局献花に行くことはなかった。

 しばらくして事故現場には慰霊碑が建てられたが、わたしはバスごと転落した七色ダムが怖くて、一度も訪れたことはない。

 振り返って結弦の病室を見上げる。

「さようなら……」

 震える声でそう呟くと、わたしは病院に背を向けて歩き始めた。

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