予感 #1

文字数 372文字

 ―― ✕✕✕✕年 ✕月✕日 ――

 ――心地よい振動。

 空調が行き届いたバスの快適なシートに揺られて、わたしはいつの間にか眠ってしまったらしい。

 どれくらい眠っていたんだろう。

 よほど熟睡していたのか、いまいち記憶がおぼつかない。

 しかし、まぶたの裏側にまで射し込んでくる夏の日差しは、また夢の世界へ戻ろうと踏ん張るわたしの睡魔を、容赦なく奪っていく。

「うぅ……ふあぁ……」

 自分だとは思えない奇妙なうめき声。

 重いまぶたをゆっくり持ち上げると、霞んだ記憶がそろそろと頭の中へにじり寄ってきた。

「おはよう、琴音! 目は覚めた?」

 後ろの座席に座っている美輝が通路側からひょいと顔を出し、わたしに声をかけた。

「ようやく起きたのか琴音。お前、口開けて眠ってたぞ」

 美輝の隣に座る怜が、座席の上から顔を出し、わざわざわたしの痴態を告げる。

 ――えっ?

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