夢にさようなら #5

文字数 379文字


『もう遅いよ……。逃げたって休んだってなにも変わらないよ。わたしはただ、あの頃に戻りたい。旅行だって、あんな事故さえなければ楽しく過ごせたはずだった。あのままみんなと仲良く笑って、一緒に生きていたかった! わたしはひとりでなんて生きていけない! 生きてたって意味がないもの!』

 胸が苦しい。うまく息ができない。

 震える声で叫んだわたしを、美輝がそっと優しく抱きしめてくれる。

 表情は見えないが、きっと困っているんだろう。

 わたしが困らせているんだ。

『琴音……やっぱり淋しいんだね』

 そう呟く美輝だって、どこか淋しそう。

『わかった。次できっと、最後にするから……』

 わたしは美輝の顔を見て、泣きじゃくりながら訊ねた。

『最後……って?』

 淋しそうだけど、凛とした眼差しを向ける美輝。

『もう、どこにも行かないよ』

 微笑みながらそう言い残して、美輝と怜は姿を消した。

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