タイトルつけるなら、たぶん「過ぎ去った時間たち」

文字数 2,805文字

蝉の抜け殻も干からびるような夏の終わり。

とおい親戚の住む山奥の集落。

棚田に射しこむ、午後のけだるい光。

畦道にしゃがみこんで、ぼんやりしていると。

照りつけられた地面に一瞬、影がさして――

おどろいてふりかえると、日傘をもった少女が立っている。

「あなた、よそ者でしょ?」

「……そうだけど」

「わたしとおんなじね」

「君はむかしから、ここに住んでるんじゃないの?」

「生まれたときから、ここよ」

「じゃあなんで……」

よそ者なの?


というような。

そこら中にあふれてそうな設定の、ひと夏のノスタルジー小説を。

いつか書いてみたいなと夢見てるんです。

妄想するだけで、なにも考えてないので。

いつか、いつか――

自分は中途半端に町の中の田舎みたいなところで育ったので。

たぶん映画の影響とか、車窓からの景色がそんな場所ばかりだったせいで。

片田舎のノスタルジーな世界観に、なんか郷愁をおぼえるんですよね。

とはいえ、書くとしたらもっと秘境、かくれ里みたいな雰囲気のほうが、好みだなとか。

それよりも、続きを書かなきゃいけないものが、あるってのはわかってるんですけどね。

書けないときは、書けないんだな……。

せめて一人でもいいから、身近に熱心な読者みたいな人がいてくれれば……

モチベーションがあがるだろうけど。

それは高望みであって。

もはや過ぎ去った過去にしか、熱心に読んでくれた友人たちは存在しないので。

なんか、かなしいなぁ。

そもそも、今の環境だとあまり周りにオタクな人がいない。

だからこんなライトノベルな小説を書いてるなんて、隠すしかないので――

いつまでたってもリアルな読者が増えないわけです。

書いてることを知ってる友人たち数人に、頼みこんで第一部だけ義理で読んでもらったようなものです。

みな趣味にあわなかったようで、だれ一人続きを読ませてくれとは言われていない。

なので第二部にいたっては、いまだにリアルな読者が不在です。

頼んでもいまだに読んでくれない人もいるし……。

でも、読む読まないは自由ですから、強要はできませんよ。

しょうがないです。

あと、ずっと自分が感じてるさみしさみたいなものの原因のひとつにあるのが。

まわりの人と「好みがあわない」ということ。

かなしいことに昔から「まんがや小説が好きな友人」はけっこういても、なぜかびみょうに好みがあわない場合が多いんですよね。

流行が好みにあわないというか。

流行に流されたくても流されないというか。

そのせいで。

わたしが好きな作品を、みんな知らない!!

本、まんが、映画……。

いろんな人に貸して「おもしろかった」で終わればいいほうで。

つまらない、

退屈。

よくわからなかった。

とか言われちゃうと、万人受けしないのだろうなと。

自分が好きなものほど友達が、なかなか夢中になってくれないんですよね。

そりゃ有名な作品を「おもしろいよね」で共感することはあっても、あっさりその程度の感想でおわっちゃう。

娯楽がみんな、ひまつぶしでしかない。

それが、あたり前か……

普通のひとは自分のようにはのめりこまないんだな。

っていう共感してもらえないさみしさみたいなのがずっとあって。

今思うと、プロアマ問わずクリエーターが多い学校、職場、環境にいれば、けっこう同士は見つかったのかもしれません。

でも、自分は絵に書いたような普通の平凡な学校、職場、環境でしか生活を送っていないので。

なにかストーリー性をふくむ創作物を作っている。

という人たち。

一次創作もだけど、二次創作の同人活動をやってたりとか……。

なんていう友人も、かつてはちょっといたけど。もう疎遠になってしまったし。

今現在、そういう人たちが、そもそも周りにほとんどいない。

みんな趣味はあるんですよ。

わたしとも共感できる趣味が……

おもいつくままにあげてみるとこんな感じ。

        ☆

旅行にドライブ最高!

グルメにスイーツ食べ歩き!

料理が得意!自作レシピ!

ファッション大好き!買い物楽しい!

小物やアクセサリー作りにはまってる!

動物っていいよね。ペット最高!

占いとかスピリチュアル興味ある!

映画大好き!

写真撮るの楽しい!

徹夜でスポーツ観戦!

音楽大好き!

インテリアとか部屋づくり楽しい!

ガーデニングでハーブの栽培!

美術館や博物館めぐりが趣味!

ギャンブル最高!

えっと、それからそれから……

        ☆

もうそれは無限に趣味は広がっていて……。

とにかくみんな裾野がひろい。

でもわたしの周りはなんていうか……。なんとなく受け手が多くて作り手が少ないんですよ。

たとえば本好きの読書家……はわりと周りにたくさんいるものの。

読むことじたいを楽しむだけ。

熱心に感想やら批評するわけでもない……っていう人が多い。

なんで本好きなのに、あっさりしてるの!?

みたいな。

うちの父親なんか、典型ですね。

実家の蔵書量はまあそれなりじゃないかな、と思うくらい本がたくさんあるんですが。

応接間に壁一面の作りつけの本棚がある……。

倒れてきたら死ぬ!

っていうような重厚な背のたかい本棚がいくつもある。

でも、わたしとはあんまり好みがあわないなぁ、なんて……。

昔、母の許可をもらって、父の旅行中にあまりに本が多いから古本屋さんに来てもらって、勝手に再読してなさそうな本、二百冊ほど売り飛ばしたら死ぬほど恨まれました。

ってあたり前か……。

そんなことされたら、わたしだったら修羅と化すだろうな……。

ってくらいに父親は本を読んでるはずなのに。

なんか虚無なんですよね。

あと読書以上に、映画死ぬほど見てるくらい「人生が映画」な人なんですが。

そのおかげでわりと……。

メジャーなのからマイナーなのまで、撮りためた円盤があふれかえってるので。

わたしもついでに、まあまあ見れてるのかな?

と思うときもあるけれど、本とか映画って、見てる人は桁外れに見ているし、知識がすごい人はほんとにすごいので。

おそれ多くてわたしはあまり語れませんが。

とにかく父親を例に挙げると、それなりの冊数を読破して、おかしなくらい映画見てる人だと思うけど、なんていうか感想がないっていうか。

見て読んでそれで終わり……なんですよね。

作ろうとはしない。

積極的に感想もしない。

完全に消費なんですよね。

友人の映画好きだったり、読書家たちも父親ほどでないにしろ似たタイプで……。

そんなんじゃ、なかなか同士は身近にできないわけです。

ま、自分とおなじ「仲間さがし」をするアグレッシブさが、昔も今もたりておらず。

身近にいる気のあう人でいっか。

なんか好きなものの傾向はあわないけど、一緒にいて楽だし気があうからいっか。

底のほうで語り合えない。わかりあえない感じがずっとあるけど、それでも友達であることにかわりはないし。

それ以上を求めるのは、そもそもわたし程度の社交スキルだと無理なんだろうなと。

という人間関係そのものが億劫な自分がいけないんでしょうけど。

ふう。

ため息つきたくなった。

なぜだか――



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