少女マンガなんて、読まなきゃよかった……

文字数 491文字

西に嫁いだ姉が、あるとき人生をなげくように言った。

「少女マンガなんて、読まなきゃよかった……」

姉は十代のころ少女漫画に依存していて、かなりの量の恋愛漫画を読破していた。

年がわりと離れていたので、姉の少女漫画はわたしにはときに、大人っぽく眩しくさえかんじた。

彼女の本棚がわたしに与えた影響は、はかり知れない――

しかし、それを全否定して、

「読まなきゃよかった」

である。

ようするに、「少女漫画の恋愛のようなものは、現実には存在しない」ということに、彼女は絶望しているのである。

あたかもロマンスが身近なところで転がっているように期待させておきながら、現実ではなにも存在しない。

恋愛したところで、それは変わらない。

かつて、少女漫画を愛読していた乙女たちが想像していた物語とは、まるでかけ離れているからだ。

これほど落胆させられるくらいなら、いっそ読まなかったほうが幸せだったと姉は言いたいらしい。

わかる。
わかるけどもさ……。

と、わたしもなんだかつられて、虚しくなったりした。

けれど。
わたしは少女漫画にいまでも依存している。

現実にないものだとわかっていても、物語は心に潤いをあたえてくれるからだ。


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