本当の話

文字数 877文字

電球を換えてください。
はい、わかりました。
これを運んでおいてください。
ええ、喜んで。
助けてください。
力の限り。
殺してください。
いいですよ。
死んでください。
私でいいのなら。
ええ、私でいいのならいくらでも、力の限りに喜んで、あなたの願いを叶えますとも。
これは単なる自己犠牲とかそういうものではない、と思う。辛いものは辛いし、痛いものは痛い。けれどそんなことを言ってはいられません。私はあなたの願いを叶えなくてはならないのです。
だけど、全てが全てあなたのため、というわけではないのです。私はあなたの願いを叶えるけれど、私のためでもあるんです。
元々ね、人の話を聞くのは好きなんですよ。自分のことを聞いてほしいとはあまり思わないので、きっとそれがちょうどいい。周りの人も話しやすいとか、聞いてくれてありがとうとか言うから。礼を言われるのは嬉しいじゃないですか。それに、本を読むのが好きなように、誰かの人生を覗くことができるのは楽しかった。楽しむ対価を、話を聞くことで払っていた。
けど、聞くだけじゃだめなことってあるんですね。聞くことで、不幸にしてしまうことってあるんですね。
私は対価を、払いきれていませんでしたね。
話はいくらでも聞きましょう。あなたがよりよく過ごすお手伝いをしましょう。救いが欲しいのなら出来る限り与えましょう。私が必要ならあなたのために生きましょう。
それでも辛いなら、死にたいのなら。私がそれも叶えましょう。
何人かな、そういう結果になったのは。
他に救いがないというから。そこまで追い詰められる精神を私は知らないから。理解したような口で止められる方が辛いらしいから。
結局言い訳ですよね、これも。いつかバチが当たると思いますよ、自分でも。大丈夫、私はちゃんとわかってますから。ちゃんとね、自分に出来ることくらいわかってます。
どうぞ、裂いてください。食らってください。歯を突き立ててください。使い道があるなら、余すことなく使ってください。
悲しいとか、寂しいとか、辛いとか、苦しいとか、痛いとか、もう少し話がしたかったとか。
そんなの、些末な問題ですから。
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