第3話
文字数 1,767文字
「説明するより見た方早い」レイカがヨウコにそう言ってスマホを向ける。
「またみるの?」
「うん、これをみて」
「仕方ないなぁー」そう言ってヨウコはレイカのスマホを受け取ると、キー&ウッシーの二本目の動画をみてみた。
「これ二回目の探索らしいんだけど‥‥」レイカが言う。
「こいつらも懲りないね。リベンジ凸とかって暇かよ?」
「ツッコミはそこそこにして問題は後半だよ。16分くらいに早送りしてみて」
「してみたけど‥‥」
「‥‥‥‥」
「え?‥‥なんで?‥‥床に人が寝てる。『謎の少女と老人』てテロップ出てるけど」
「そうそう二人の謎の人物がいるよね?」
「バズり狙いの仕込みの役者とか?」ヨウコが眉間にシワを寄せてスマホを凝視する。
「動画の最後にヤラセなしのガチですって説明あったよ。さっき言ったとおり本物のオーナーかもしれないって」
「‥‥確かにモザイクかかってそれっぽいだけで、本当に少女と老人なのかも怪しいね。でも、キー&ウッシーも見た感じ、演技してる感じじゃなしね。マジっぽい」
「うんうん、本気の驚いてるリアクションだよね」
「‥‥でもってこのビルの五階で撮った動画らしいけど、部屋の壁とか床の様子、廃墟じゃなくて現役のビルって感じで綺麗だよね。それはなんでだろ?」
「言われてみれば確かにおかしいけど、作った感じしないし、なんていうんだろう‥‥これってもしかして奇妙な冒険の世界?」
「いやそれはアニメだけど、これは現実の動画なのに老人のいる場所の感じがそう、奇妙なのに変にリアルなんだよね・・・・」
「老人と少女って誰なのかな?」
「もしかしワンチャンこの老人が本物のビルのオーナーだとして、行方不明とか言われてるけど、実はたまに懐かしさでこのビルに戻って来ていて、キー&ウッシーと鉢合わせしたっていう説あるかも。だとしても、少女はまったくわかんねぇ」
「うんうん。床の女の子の声なのかわかんないけど、ちいさくうめき声が聞こえたような気もしたよ・・・・」
「そうだね。この老人少女のこと何て言ってたっけ?そこだけもっかい再生してみるよ」
「えーとたしか、"これは娘だ"って言ってたかな?」レイカが間髪入れずに言う。
「うん、そしてその後のセリフが・・・・・"聞き分けのない娘にお仕置きを与えて肉体と魂に楔を刺した"ってどういう意味だ?」
「ぜんっぜんわかんない」
「‥‥老人はそのあと"永遠の乙女でいる願いを叶える"とも言ってる」
「頭おかしいのかも」
「確かにそれがふつう正解の回答だと思う。でもさこれって本物な気がするんだよね」
「ん?本物?」
「うん、なんつうか本物のオカルトの匂いがするんだよね‥‥」
「いやヨウコ!さっきの私と立場と逆転しちゃってるよww」
「いやいや冗談で言ってんじゃないんだって。普通はさ、2+2っていったら4になるでしょ?」
「うん、そりゃそうね」
「だよね。でもね、2+2の正解が7とか13になったとしたら?」
「なにそれ?」
「つまりさオカルトってそういうことなの。普通の理屈では正解が得られないっていう意味」
「なんか半分からかわれてる気もするけど、半分はわかる気もするかも」
「それで十分。とにかくさぁ、この動画のこの部分、なんて言うか胸がざわざわするでしょ。しかもさ、目の前にその廃墟ビルがあるんだよ」
「うん‥‥」
「入っちゃおう」
「え?見るだけだったんじゃないの?マジで言ってる?」
「いや怪談じゃないにしても、万が一さぁ、"事件"の可能性もあるでしょ?だから五階まで行って確認だけしてみようよ」
「てかさぁあたしのほうが怖くなってきてんだけど。でもヨウコはもう『絶対入るモード』なんでしょ?」
「うん」
「仕方ないなぁ‥‥動画の最後で他の配信者がここへ再度行ってみてもなんもなかったって言ってたしね‥‥」
「よし入ろう!」
「ヨウコのこういうところよ」
「ん?」
「ヨウコ、あんた一部から陰でバカ勇者って呼ばれてるよ」
「え!? な、なにそれ?」
「いやいや行きましょう勇者ヨウコ!」
「あっ、ちょっと私のこと馬鹿にしてるでしょ?」
そういいながら二人はキー&ウッシーに習って、金網のフェンスに空いた隙間をくぐりぬけて、さらに玄関のベニアもこじ開けて、廃墟ビルの中に入って行くのだった。
つづく
「またみるの?」
「うん、これをみて」
「仕方ないなぁー」そう言ってヨウコはレイカのスマホを受け取ると、キー&ウッシーの二本目の動画をみてみた。
「これ二回目の探索らしいんだけど‥‥」レイカが言う。
「こいつらも懲りないね。リベンジ凸とかって暇かよ?」
「ツッコミはそこそこにして問題は後半だよ。16分くらいに早送りしてみて」
「してみたけど‥‥」
「‥‥‥‥」
「え?‥‥なんで?‥‥床に人が寝てる。『謎の少女と老人』てテロップ出てるけど」
「そうそう二人の謎の人物がいるよね?」
「バズり狙いの仕込みの役者とか?」ヨウコが眉間にシワを寄せてスマホを凝視する。
「動画の最後にヤラセなしのガチですって説明あったよ。さっき言ったとおり本物のオーナーかもしれないって」
「‥‥確かにモザイクかかってそれっぽいだけで、本当に少女と老人なのかも怪しいね。でも、キー&ウッシーも見た感じ、演技してる感じじゃなしね。マジっぽい」
「うんうん、本気の驚いてるリアクションだよね」
「‥‥でもってこのビルの五階で撮った動画らしいけど、部屋の壁とか床の様子、廃墟じゃなくて現役のビルって感じで綺麗だよね。それはなんでだろ?」
「言われてみれば確かにおかしいけど、作った感じしないし、なんていうんだろう‥‥これってもしかして奇妙な冒険の世界?」
「いやそれはアニメだけど、これは現実の動画なのに老人のいる場所の感じがそう、奇妙なのに変にリアルなんだよね・・・・」
「老人と少女って誰なのかな?」
「もしかしワンチャンこの老人が本物のビルのオーナーだとして、行方不明とか言われてるけど、実はたまに懐かしさでこのビルに戻って来ていて、キー&ウッシーと鉢合わせしたっていう説あるかも。だとしても、少女はまったくわかんねぇ」
「うんうん。床の女の子の声なのかわかんないけど、ちいさくうめき声が聞こえたような気もしたよ・・・・」
「そうだね。この老人少女のこと何て言ってたっけ?そこだけもっかい再生してみるよ」
「えーとたしか、"これは娘だ"って言ってたかな?」レイカが間髪入れずに言う。
「うん、そしてその後のセリフが・・・・・"聞き分けのない娘にお仕置きを与えて肉体と魂に楔を刺した"ってどういう意味だ?」
「ぜんっぜんわかんない」
「‥‥老人はそのあと"永遠の乙女でいる願いを叶える"とも言ってる」
「頭おかしいのかも」
「確かにそれがふつう正解の回答だと思う。でもさこれって本物な気がするんだよね」
「ん?本物?」
「うん、なんつうか本物のオカルトの匂いがするんだよね‥‥」
「いやヨウコ!さっきの私と立場と逆転しちゃってるよww」
「いやいや冗談で言ってんじゃないんだって。普通はさ、2+2っていったら4になるでしょ?」
「うん、そりゃそうね」
「だよね。でもね、2+2の正解が7とか13になったとしたら?」
「なにそれ?」
「つまりさオカルトってそういうことなの。普通の理屈では正解が得られないっていう意味」
「なんか半分からかわれてる気もするけど、半分はわかる気もするかも」
「それで十分。とにかくさぁ、この動画のこの部分、なんて言うか胸がざわざわするでしょ。しかもさ、目の前にその廃墟ビルがあるんだよ」
「うん‥‥」
「入っちゃおう」
「え?見るだけだったんじゃないの?マジで言ってる?」
「いや怪談じゃないにしても、万が一さぁ、"事件"の可能性もあるでしょ?だから五階まで行って確認だけしてみようよ」
「てかさぁあたしのほうが怖くなってきてんだけど。でもヨウコはもう『絶対入るモード』なんでしょ?」
「うん」
「仕方ないなぁ‥‥動画の最後で他の配信者がここへ再度行ってみてもなんもなかったって言ってたしね‥‥」
「よし入ろう!」
「ヨウコのこういうところよ」
「ん?」
「ヨウコ、あんた一部から陰でバカ勇者って呼ばれてるよ」
「え!? な、なにそれ?」
「いやいや行きましょう勇者ヨウコ!」
「あっ、ちょっと私のこと馬鹿にしてるでしょ?」
そういいながら二人はキー&ウッシーに習って、金網のフェンスに空いた隙間をくぐりぬけて、さらに玄関のベニアもこじ開けて、廃墟ビルの中に入って行くのだった。
つづく