第13話   ヒロイン   Heroine

文字数 966文字

「おとう、今年の春先にはお腹痛くて検査だとか言っていて、その時の検査結果はOKだったみたいだけど、もう治ったの?」
「ああ、もうすっかり調子いいよ」
「それは良かった。大学卒業するまでは元気でいてよ」
「なんだよ、その後はどうでもいいのか?」
「ま、そういう訳じゃないけど、それまではお金かかるからさあ」
「なんだよ、俺はただの金づるか?」
「ま、そういう事かな(笑)」
「まったく由理奈は・・・」
「冗談だよ、おとう。でも死ななくて良かった」
「全くな。生体検査って聞いた時にはもう一巻の終わりかと思ったけど、何でもなくて良かったよ。まあ、暴飲暴食は慎まなくちゃな」
「そうだよ、おとう」
「実はな、生体検査の結果がでるまでの10日間はもうダメかもと覚悟をしていたんだ。それでね、続きを書いておかなくちゃって思って、書き始めたんだよ」
「遺言?」
「そうじゃないよ。週休4日が地球を救う!の続きさ」
「あ、それな」
「それな、って、由理奈、分かってんのか、何故書かなくちゃって思ったか」
「死んじゃう前に続きを書こうと思ったって事でしょ?」
「うん、まあ、そういう事なんだけど、前回作の週休4日が地球を救う!はお姉ちゃん(真理奈)が主人公だっただろ?」
「そうだね」
「死ぬ前に由理奈を主人公にした物語も書いておきたかったんだよ」
「ふうん」
「ふうん、って嬉しくないのか、由理奈?」
「嬉しいも何も、お姉ちゃんも別に喜んでなかったけどね」
「そうなのか? 週休4日が地球を救う! は渾身の一作だったんだぞ。その主人公が真理奈なのに有難味が分からない姉妹だなあ」
「いや、おとう、別に頼んだ訳じゃないし・・・。いいよ、誰が主人公でも」
「そうなのか? まあ、いいや、とにかく今回はおまえが主人公だからな。いいか?」
「まあ、いいよ。おとうの好きで」
「そうか」
「でも、おとう、主人公が私なのかお姉ちゃんなのかはどっちでもいいけど、問題は小説の内容なんじゃないのか?」
「あ、うん、そうだな・・・。うん、そうだ…」
「でしょ?」
「ああ」

私は、勝った・・・かも。父に勝ってしまった。ははは。

・・・てな事はどうでもいいのだが、というか父と勝負している訳ではないのだが、おとうは話していて面白い。ユーモアのある人だと思う。

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登場人物紹介

名前:由理奈(ゆりな)

誕生:2001年2月25日 東京生まれ 

2020年のステータス:大学生

趣味:キーパーを抜いてシュート

おとう(由理奈の父)

1957年 地方都市生まれ

海外在住歴10年(アメリカ6年、ドイツ4年)

現在は一人会社の社長

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