第1話 出発 Taking off
文字数 400文字
「由理奈、そろそろ行くよ」
私は父にそう言われて、いよいよこの家を出ていくのだと実感した。両親と姉と4人でこの家に暮らして18年。今日からは大学の学生寮で独り暮らしをする。
家を出なくても通学は可能だったけれど、学生になったら独り暮らしをしてみる方が将来ためになると思い、親を説得した。父はあまり乗り気でなかったが、母親が私の意見に賛成で、というより寧ろ母の勧めで、独り暮らしが実現することになった。
では、どうして姉の時は一人暮らしの話にならなかったかといえば、真理奈(姉の名前だ)は一人暮らしを望まなかったからだ。彼女は自宅から非常に近い大学に入学し、通学も自転車で行けてしまうくらいであるから近いという理由も大きかったが、真理奈は淋しがりやだった。私が家を出る事自体、淋しくて仕方ないようなのである。性格は正反対に近いかも知れない。
父の運転するワゴンに乗ると、春のにおいがした。
私は父にそう言われて、いよいよこの家を出ていくのだと実感した。両親と姉と4人でこの家に暮らして18年。今日からは大学の学生寮で独り暮らしをする。
家を出なくても通学は可能だったけれど、学生になったら独り暮らしをしてみる方が将来ためになると思い、親を説得した。父はあまり乗り気でなかったが、母親が私の意見に賛成で、というより寧ろ母の勧めで、独り暮らしが実現することになった。
では、どうして姉の時は一人暮らしの話にならなかったかといえば、真理奈(姉の名前だ)は一人暮らしを望まなかったからだ。彼女は自宅から非常に近い大学に入学し、通学も自転車で行けてしまうくらいであるから近いという理由も大きかったが、真理奈は淋しがりやだった。私が家を出る事自体、淋しくて仕方ないようなのである。性格は正反対に近いかも知れない。
父の運転するワゴンに乗ると、春のにおいがした。