第12話 社会主義労働経済の課題

文字数 1,228文字

(日本は、社会主義労働経済の国です)

ジョブマーケットの問題をもう少し検討します。
古い経済学の生産の3要素は、労働、資本、土地です。

資本主義は、市場を通じて、経済財の取引を行います。


社会主義経済では、土地は国有で、原則、市場取引の対象にはなりませんが、中国では、利用権の売買という変則的な形での取引が行われています。

市場メカニズムは、経済財を合理的に配分する効率的なシステムです。

中国が、社会主義市場経済を導入してから、経済発展した理由の一つは、このシステムの効率にあります。


日本は、建前では、資本主義国になり、市場を通じて、経済財の取引を行うことになっています。


しかし、日本には、ジョブマーケット(労働市場)がありません。

つまり、労働については、社会主義労働経済の国です。

正社員とパートや、派遣社員の間は、賃金格差がありますが、ジョブマーケットがあれば、賃金は均衡して、同一労働同一賃金になります。あるいは、レイオフされやすいパートの賃金の方が高くなります。

社会主義であれば、共産党員であることが、優先的な地位を確保して、収入の確保を容易にします。

日本の社会主義労働経済では、学歴が、共産党の代わりの機能を果たしています。

そこでは、大学を卒業したというラベリングが重要であって、成績や能力は、給与には反映されません。新卒一括採用の場合には、大学の専門も、初任給に反映されません。

アメリカの大学では、入学者に対する卒業者の比率は5割ですが、日本では、9割を超えます。日本の大学を卒業したことは、能力を保証しません。

これは、大学以前の小、中、高等学校でも同じです。

ジョブマーケットがあれば、成績は給与に反映されます。また、十分な能力を身につけなければ、卒業はできません。

10年後には、現在ある仕事の多くが置き換わってなくなっていると予測する人もいます。

筆者も、基本的には、その意見に賛成ですが、その10年後には、ジョブマーケットが出来上がっていると思います。

つまり、ここには、社会主義労働経済から労働市場経済への切り替えが必要です。

中国は、社会主義市場経済を導入して、20年かかって、市場経済へのソフトランディングに成功しています。その時には、既に、市場経済であった香港や台湾の経営者が有効に働いています。

対照的な例は、ロシアです。ソ連崩壊後の急激な市場経済への移行は、ハイパーインフレを招き、国民の資本主義への反発を強めています。

このことが、プーチン政権の高い支持率に結びついていると指摘されています。

デジタル・シフトが完了するまでに、残された時間は10年を切っていると思われます。

そうすると、日本の労働市場への移行は、ソ連型のハードランディングになる可能性が高いと思われます。

ジョブマーケットがありませんので、「評価をしない・出来ない症候群」が、企業だけでなく、教育、マスコミなど広い範囲に拡がっていて、どこから手を付けてよいのか、判らない状況と言えます。

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