8 チケットの理由
文字数 1,155文字
二人は、イートインのカウンター席の一番奥に陣取った。
急に興奮気味に話す彼女を見て、勝也は少しほっとした。
勝也は一呼吸置いてゆっくり話し始めた。
君は本が好きで、あそこでバイトしているのか。
そして、どうして俺が参考書や実用書しか読まないと聞いて、あんなにがっかりしたのか。
――それがどうしても気になって。
なんかおかしいよな。でも、ずっと気になっているんだ
由希乃は財布の中からチケットを取りだし、勝也の前に置いた。
勝也はチケットに手を添えると、そのまま滑らせて、そっと由希乃の前に戻した。
勝也はうん、とうなづいた。
勝也が由希乃の顔を覗き込むと、由希乃は反射的に体を引いた。
勝也はいいや、と頭を振ると、すっと立ち上がった。
勝也は苦笑した。
立ち去ろうとする勝也の背に、由希乃は言葉を投げつづけた。
勝也は振り向いて、片手を上げた。
由希乃は、コンビニを出て行く勝也を見送ると、大事そうにチケットを財布に戻した。