5 いきなりのおさそい
文字数 691文字
由希乃が放課後、バイト先の本屋に向かうと、店の手前にあるコンビニの店先で、誰かに声を掛けられた。
あの弁当屋のバイト青年だった。エプロン姿で缶コーヒーを手にしている。
マンガ雑誌の件の翌々日で、正直かなり気まずい。
マンガ雑誌の件の翌々日で、正直かなり気まずい。
突然の申し出に、またまた由希乃はフリーズしてしまった。
体は固まるし、頭には血が昇るし、息は詰まってくるしで大惨事である。
体は固まるし、頭には血が昇るし、息は詰まってくるしで大惨事である。
由希乃は全身の力を振り絞って、チケットに手を伸ばした。
だが、ぷるぷると手が震え、ちっとも前に進めない。
だが、ぷるぷると手が震え、ちっとも前に進めない。
と、彼は由希乃の手にチケットを握らせた。
にこりともせずに言うと、彼はコーヒーの缶をゴミ箱に放り込み、弁当屋へと戻っていった。
呼び止めて礼を言いたかった。だけど、声も満足に出ないし、足も動かない。
どうしてかわからないけど、どうしようもなくて――。
どうしてかわからないけど、どうしようもなくて――。
『チリンチリン!』
背後から自転車のベルが鳴った。
由希乃は魔法が解けたみたいに、急に動けるようになった。