6 羨望のチケット

文字数 392文字

 ふらふらと由希乃が本屋に出勤すると、更衣室で同僚が出迎えた。
 二十代前半の大学生と聞いている。
どうしたのそれ!
あ……チケットですか?
それブックフェアでしょ? このへんでやるの初めてなのよ!
そう、なんですか?
普段は都会でばっかやってたから、行きたくても行けなかったのよね~。

でも、あそこのアウトレットが出来てから色んなイベントやるようになって

それでブックフェアも?
うん。で、前売り欲しかったんだけど、もう売り切れちゃって……
そ、そうですか
じー…………
 チケットを凝視する同僚。
あ、あげませんよ。物欲しそうな顔してもダメですから!
あはは、冗談よ。それに当日券だってあるんだから、だいじょーぶ!
 由希乃は、ほっと胸をなでおろした。
それより……
な、なんですか?
ぜったい欲しいものだらけでバイト代なくなっちゃうから、気をつけてね~
は、はぃぃ~
 同僚は手をひらひらさせながら更衣室を出ていった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

橘 由希乃(女子高生) 
商店街の本屋でバイトしている。内気だがすぐテンパり、暴走しやすい性格。
そのため、人見知りなのか強引なのか分からないと評される。

多島 勝也
本屋の向かいにある弁当屋でバイトしている若者。現在、資格試験の勉強中。
自分に自信がなく、つい素っ気ない態度を取って誤解されがち。

弁当屋の主人
勝也の叔父。妻と二人暮らし。気配を消すのが得意。子供がおらず、勝也を息子のように可愛がっている。イチオシのお惣菜は、チーズとちくわの磯辺揚げ。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色