9 ブックフェア

文字数 427文字

 そして、日曜日の朝。
 由希乃が駅前広場に到着すると、勝也が立っていた。どこかを眺めていたようだが、由希乃が駆け寄ると、勝也は軽く手を振った。
おはようございます! お待たせしちゃいました?
いんや。じゃあ、行きますか
はい!
 駅前から、アウトレットモールに向かうバスに乗ると、まもなく発車した。
 会場に到着すると、開場時間から間もないのに、もう人でいっぱいだった。
多島さん、なんかすごい人ですね
ブックフェアって難しい本ばっかかと思ってたけどさ、趣味関係の本とかもいっぱいあるじゃん! こりゃ目移りしちゃうぞ
よかった
え?
私だけ楽しんで……たいくつな思いさせたら申し訳ないかなって思ってたから
なに言ってんの。女の子とデートすんのに、たいくつなわけないよ
あ……えと……これ、デート、ですか?
女子とサシで遊びに行くのに、他に適切な言葉を知らないんだ。

君ならこれを何て言うの?

うーん…………………………やっぱり、デート、かな
なーんだ
うふふ
 二人は顔を見合わせて笑った。
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登場人物紹介

橘 由希乃(女子高生) 
商店街の本屋でバイトしている。内気だがすぐテンパり、暴走しやすい性格。
そのため、人見知りなのか強引なのか分からないと評される。

多島 勝也
本屋の向かいにある弁当屋でバイトしている若者。現在、資格試験の勉強中。
自分に自信がなく、つい素っ気ない態度を取って誤解されがち。

弁当屋の主人
勝也の叔父。妻と二人暮らし。気配を消すのが得意。子供がおらず、勝也を息子のように可愛がっている。イチオシのお惣菜は、チーズとちくわの磯辺揚げ。

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