第17話 異邦人
文字数 1,322文字
野営の翌日は、さすがに喉の渇きを覚えた。持ってくることができた水はわずかしかない。埃っぽさにもうんざりしていると、雨が降った。
しかし、星が見えなくなったことで荒野を彷徨うこととなった。
知識はあるが視力の落ちているグレコと、視力はいいが経験の足りないバートが、必死に星を読んだ。
リザは文句を言いながらも、自分でついてくるようになっていた。ロブはグレコとエルベルが交代で背負っている。いくつもの基地を経由し、十四日間かけて、一行はガーデンにたどり着いた。
到着を聞きつけ、出迎えたギョームの姿にロブは驚いた。ギョームは救助隊から送られた海外の礼服を身にまとっていたのだ。
ギョームは真っ先に食事を振る舞ってくれた。風呂に入り休憩し、バートたちは再び食事に招待される。
事情を聞いて、ギョームはせせら笑った。
「さぞ慌てているだろうね。死刑執行人のありがたさが身に染みていることだろう。今頃は大赦を与えて取り繕っているはずだ」
形ばかりの詫びを入れるホリーに、心配はないとギョームは応じた。
「迷惑ではないさ。国は外つ国のことで忙しいのだろう。ガーデンを構っている場合ではないのだ。かくいう私も忙しい。我々は異国の者を歓迎している」
ホリーは聞いた。
「外つ国とはどういうところですか?」
「まるで魔法のような技術を持っている。とても豊かなところだ。彼らの力があれば、ガーデンから、この地を再生していくことができる」
ロブがつぶやいた。
「カウクリッツに帰りたいな」
無理だとホリーが断言した。
「ロブは失神していたから知らないだろうが、カウクリッツの街は地中に沈んでいる」
バートが驚いて問い詰めた。
「どういうことだ?」
「銀を埋めるためだろう。吸血鬼の一撃で街は沈められた」
バートは開いた口が塞がらなかった。
何の感慨もなく、ホリーは言う。
「外つ国に行こう」
ギョームが任せなさいと請け合った。
「四日後に彼らがくる。彼らならきっと、君たちを受け入れてくれるだろう」
リザが不機嫌そうに口を出した。
「信用できんのか? おかしいじゃないか。何でもかんでも親切に世話を焼いてくれるなんてさ」
ふふっとギョームは笑った。
「彼らは豊かな生活をしているが、同時に飢えてもいるのだよ。彼らもまだ、再生の途上にいる。多くの人間を救えるほどに力を取り戻したが、未だかつての栄光には至らない。彼らは失われ世界のかけらを探しているのだ。ーー色々興味深いことを聞いたよ。吸血鬼は伝説上の存在だ。その原型は死者の甦りにあるという。私たちは吸血鬼ほど野蛮な生き物ではないが、似ていたのだよ。そして名付けられた。ラミア症候群と」
うっすら笑うホリーにギョームは言った。
「専門家に聞いた方がいいだろう。外つ国の医者が我々の健康を診てくれている」
ギョームは従者にに声をかけた。数分後、従者に連れられて、ファイルを抱えた男が部屋にやってきた。男はカールと名乗った。
カールは顔ぶれ見て驚き、経緯を聞いてさらに驚いた。
「ラミア症候群。まだはっきりとはわからないんですがね。ラミア症は別の病気の治療の末に発症したものなんです。必死に救命した結果、世代を経て強く美しい人間が生まれたんです」
しかし、星が見えなくなったことで荒野を彷徨うこととなった。
知識はあるが視力の落ちているグレコと、視力はいいが経験の足りないバートが、必死に星を読んだ。
リザは文句を言いながらも、自分でついてくるようになっていた。ロブはグレコとエルベルが交代で背負っている。いくつもの基地を経由し、十四日間かけて、一行はガーデンにたどり着いた。
到着を聞きつけ、出迎えたギョームの姿にロブは驚いた。ギョームは救助隊から送られた海外の礼服を身にまとっていたのだ。
ギョームは真っ先に食事を振る舞ってくれた。風呂に入り休憩し、バートたちは再び食事に招待される。
事情を聞いて、ギョームはせせら笑った。
「さぞ慌てているだろうね。死刑執行人のありがたさが身に染みていることだろう。今頃は大赦を与えて取り繕っているはずだ」
形ばかりの詫びを入れるホリーに、心配はないとギョームは応じた。
「迷惑ではないさ。国は外つ国のことで忙しいのだろう。ガーデンを構っている場合ではないのだ。かくいう私も忙しい。我々は異国の者を歓迎している」
ホリーは聞いた。
「外つ国とはどういうところですか?」
「まるで魔法のような技術を持っている。とても豊かなところだ。彼らの力があれば、ガーデンから、この地を再生していくことができる」
ロブがつぶやいた。
「カウクリッツに帰りたいな」
無理だとホリーが断言した。
「ロブは失神していたから知らないだろうが、カウクリッツの街は地中に沈んでいる」
バートが驚いて問い詰めた。
「どういうことだ?」
「銀を埋めるためだろう。吸血鬼の一撃で街は沈められた」
バートは開いた口が塞がらなかった。
何の感慨もなく、ホリーは言う。
「外つ国に行こう」
ギョームが任せなさいと請け合った。
「四日後に彼らがくる。彼らならきっと、君たちを受け入れてくれるだろう」
リザが不機嫌そうに口を出した。
「信用できんのか? おかしいじゃないか。何でもかんでも親切に世話を焼いてくれるなんてさ」
ふふっとギョームは笑った。
「彼らは豊かな生活をしているが、同時に飢えてもいるのだよ。彼らもまだ、再生の途上にいる。多くの人間を救えるほどに力を取り戻したが、未だかつての栄光には至らない。彼らは失われ世界のかけらを探しているのだ。ーー色々興味深いことを聞いたよ。吸血鬼は伝説上の存在だ。その原型は死者の甦りにあるという。私たちは吸血鬼ほど野蛮な生き物ではないが、似ていたのだよ。そして名付けられた。ラミア症候群と」
うっすら笑うホリーにギョームは言った。
「専門家に聞いた方がいいだろう。外つ国の医者が我々の健康を診てくれている」
ギョームは従者にに声をかけた。数分後、従者に連れられて、ファイルを抱えた男が部屋にやってきた。男はカールと名乗った。
カールは顔ぶれ見て驚き、経緯を聞いてさらに驚いた。
「ラミア症候群。まだはっきりとはわからないんですがね。ラミア症は別の病気の治療の末に発症したものなんです。必死に救命した結果、世代を経て強く美しい人間が生まれたんです」