第3話 内なる外に(後編)

文字数 8,229文字

 翌日、レガートはロビーに併設してあるカフェで軽食を取った。日はまだ出ていない。食事を終えるとバスに乗り、港湾を経由して駐屯地に入った。
 バスは駐屯地内の駐車場前で止まった。
 日が出始めていた。
 レガートはバスを降りた。端末に映る案内を頼りに指定した棟に向かった。
 棟の前には隊員がドアの脇に立っていた。
 レガートはドアに近づき、中央にある認証用の端末に手を当てた。静脈認証で起動し、ドアが開いた。10年以上前に来日したデータが残っていた。端末に映る案内に沿って地下に進み、ミーティングルームの前に来た。認証端末がドアの脇に設置してある。入り口の端末と同じ型だ。手を当てて認証するとドアが開いた。ミーティングルームに入った。
 ミーティングルームには薄暗く窓もない。筒状のディスプレイが部屋の中央でつり下がっていた。席がディスプレイの周辺にあり、ローランドをはじめ、秘書や技術者達が席に座って待機していた。
「遅かったかしら」
「我々が早すぎただけだ、空いている席に座ってくれ」
 レガートは空いている席に座った。持ち込んだ端末を置き、かばんからノートと筆記具を取り出した。
 ローランドは立ち上がった。「話を始める前に紹介する、彼女はレガート・ロン博士だ。10年以上前にAPWに内蔵した人工知能と、人間の魂とのリンク手術に携わった魔道力学者だ」
 科学者達はローランドの紹介にどよめいた。レガートの実績は魔道力学者の世界で知れ渡っていた。
 レガートは席を立ち、頭を下げると席についた。
 ドアが開き、暮広が入ってきた。「失礼します、芦原暮広です」頭を下げ、空いている席に座った。
 レガートは眉をひそめた。APWの搭乗者がいる時点でテストは不可能だ。「実際に乗らないでシミュレーションをするの」
 ローランドは着席し、手元の端末を操作した。中央からつり下がっているディスプレイが次々と切り替わる。「シミュレーションは信用できない。終わったら実際に動かして調整する」
 レガートはディスプレイに目をやった。異世界に関するデータとエネルギーとの波長が映っている。「我々の部隊は、太陽社の榎本会長の遺志を継ぎ、計画を続行している」
「異世界の探索より、お隣の星に行った方が楽じゃない」
 技術者達から、失笑が漏れた。
「墜落しても付き合ってくれる王子がいればな」ローランドは端末を操作した。「まず世界の概念だ」
 ディスプレイが切り替わり、平行世界の理論が図入りで映った。「時間は一つの時間ではなく、複数の時間がひも状にからまって成立している」徐々にひもが拡大し、輪切りになって円が現れた。特異点が円の中心にあった。別のひもを輪切りにしても同じ仕組みになっている。「一つの特異点が制圧している範囲が一つの世界だ。我々の世界は複数の特異点により存在する複数の世界が絡み合っている状態だ。星の重力を突破すれば宇宙に行けるのと同じく、特異点の制圧範囲を振り切れば別の世界に行ける」
 APWの仕様がディスプレイに映る。名はインシグネと言い、白を基調とした、板バネで制御をする人型の機械だ。動力源は縮退炉と記述してあり、スペックも相応なレベルで記述してある。
「予備機は」レガートはローランドに尋ねた。
「縮退炉は2基しか完成していない。またズベン・エル・カマリを搭載する関係から1機のみだ。搭乗者は」ローランドは暮広の方を向いた。暮広は頭を下げた。「人工知能と魂でリンクをしている芦原暮広を専属とする」
「孤独な宇宙旅行ね。アニメの世界じゃないけど、戦艦を作って大量輸送した方が良いのではなくて」
「スプートニクを作る前にサリュートを作れと。土壌が分からんのに危険の高い賭けはしない。先行調査をしてデータを回収してから作成する」
「ライカに成り果てなければいいけど」レガートの顔が強張った。宇宙探索計画がブームだった当時はシミュレーションは正確さに欠けていた。だからまずは無人機を飛ばし、次に動物を入れてデータを取ってから人を飛ばした。今は惑星一つをまるごとシミュレーションできる時代だ。実験をする必要は薄まった。だから何の予備調査もせずに人を飛ばしていいのか、疑念が湧く。「異世界の位置はわかるの」
 ディスプレイが変わり、時空に関するコードとシミュレーション映像が現れた。点から円に放射していて、互いに干渉している区域に現在地を示す矢印がある。「特異点が近い領域を確認した。からまっている限り、最低でも100年は移動しないと推測している。近いとなれば似た世界の可能性が高く、過剰な環境変化は少ないと見ている」
「うってつけね」レガートは言葉を吐いた。
「ロン博士、他に意見は」
「出立は」
「ロケットを打ち上げる時と同じだ。慎重な段階を踏まえねばならん」
 レガートは眉をひそめた。堅実といえば聞こえは良いが、実際には行動直前で尻込みをし、テストだけで満足している状態だ。「稼働はシミュレーションだけでしているの。まさか実際に動かしてませんって回答は出てこないわよね」
「実際に動かして試験をしている。機械は動かねば固まるからな。本日は芦原の申請により、13時からテストをする。ロン博士がいる時にテストをすれば、より良い意見が出ると言っていた」暮広の方を向いた。「芦原はブリーフィング終了後、直ちにAPWの調整に入る」
「はい」暮広は声を上げた。
「リブラとの連携は」
「太陽社を引き継いだ我々と国とは、異世界への調査に溝がある。地下で進行している限り、リブラとの接続は不可能だ」
「太陽社にいるのに、政治結社と決別していると」
「我々の駐屯地では、太陽社の榎本派が集まり遺志を継いでいる。他の輩は他の政治結社に降りてAPWの資源を使い、異世界の探索計画と異なる計画を進めていると聞いている」ローランドはレガートの方を向いた。「他に質問は」
「いえ」レガートは首を振った。
「では説明を続ける」ローランドは席に座っている科学者の方を向いた。科学者は立ち上がった。ディスプレイが切り替わった。
 科学者の説明が始まった。
 ローランドは科学者の説明を退屈気味に聞いていた。主だった内容はAPWと他の作業用機械との違いや、部品開発や稼働状況についてだった。
 科学者は説明を終え、席に座った。
 レガートはローランドから質問のリクエストが出たが、答えなかった。理論については既に把握しているので質問に意味をなさない。
「ロン博士、アメリカでの魔道力学について話をしてくれないか」
「何故に」
「日本は港湾を通して諸外国と接しているが、深い関係はない。魔道力学に関しても下請けや実験場を提供しているレベルだから、古い技術ばかりだ。今最新のトレンドを聞くだけでも良い刺激になる」
「分かったわ」レガートは立ち上がり、アメリカにおける魔動力学の発展度合いを軽く話した。科学者達は魔道力学のレベルが日本国内を超えているのに驚いた。
 説明を終えた頃には、正午に入っていた。
 ローランドは昼食を経由して起動試験を始めると知らせ、解散した。暮広はローランドの指示に従い、APWを格納しているエリアに向かった。昼食は部屋に入る前に取っているので問題ない。レガートは暮広に同行した。東安部の隊員は機密を理由に拒否をしたが、暮広が仲介して同行を許可した。
 暮広とレガートはAPWを格納しているエリアに来た。
 100メートル以上の高さの空間で、インシグネは万力状のフックで固定してある。
 インシグネの装甲は白い板状で、段ボールを重ねた形状で板バネ式の骨格に張り付いていて、カメラや冷却、縮退炉から出る過剰なエネルギーを放出するスリットと、拡張装備を接続するパイロンが顕になっている。機体に接続してあるコードは束になって壁の接続口とつながっている。脇には陸戦兵器を改造した武装が並んで置いてあった。パイロンに接続するか、人と同じ指を持つマジックハンドの所持を理由に突起が付いている。
 暮広とレガートは金網でできたギャラリーを歩いてインシグネに近づいた。
「縮退炉は動いているの」レガートは暮広に尋ねた。
「出力は抑えているが動いている。火を入れると止めるのに膨大なエネルギーが必要になるからな」
 レガートは眉をひそめた。縮退炉内部で媒介となる金属を高出力レーザーで圧縮し、自由電子を作成して縮退星、すなわち類似ブラックホールを生成する。生成してからは質量を放り込み、純粋なエネルギーを取り出す。類似ブラックホールの生成は一般の理論でもできるが、制御に難がある。故に魔道力学による制御は必須になっている。「制御できているの」
「起動しているのは1基だけだ。周囲は類似パルサーを生成して相殺しているので問題ない。制御を超えた瞬間、互いに食い合って消滅する仕掛けだ」暮広はインシグネの背部に移動した。インシグネの操縦席が背部から出ていた。
 レガートは暮広の元に向かった。
 暮広は操縦席のシートに座った。シートの両脇に畳んであったプロテクターが両肩を挟み込んだ。足も両脇から展開するプロテクターが覆った。「筋電位を読み込むセンサーだ。動きは操縦者の筋電位を主軸に、意識で補助する」
「脳波コントロールではないのね」
 暮広は人差し指で自身の頭を小突いた。「ズベン・エヌ・カマリに直に接続すると、ダイレクトに情報が入ってくるから脳の処理がパンクする。遺伝子改造で知能増幅してても限界はある。自由の効くシステムは、高速にするよりはみ出しの阻止と安全が優先だ」
 レガートの前に隊員が駆け寄った。「稼働テストに入ります。危険ですから離れてください」
「離さなくていい。まだ動かさない」暮広はレガートの方を向いた。「ロン博士、必要なデータを」
 レガートはデータの入ったカードを暮広に差し出した。
 隊員はレガートが差し出したカードに手を出した。
「外部データを使うのですか」隊員は暮広に尋ねた。
「俺がロン博士に頼んだデータだ。ウイルスなら自動で排除する」
 隊員は手を引いた。
 暮広は手を伸ばしてレガートが持っていたカードを受け取った。軽く手を上げた。「詰め所で」操縦席は背部に格納した。
「ズベン・エヌ・カマリだけで駐屯地一帯を制御しているの」
「一種の脳に当たりますが、各々に独立しています」隊員は端末を取り出してレガートに見せた。インシグネを中心とした制御系統が映っている。「例えるなら昆虫の脳ですね」
 レガートはインシグネから離れた。正解は操縦席から出た頃に終わる。ズベン・エヌ・カマリの下で何の処理をしているかは、外からは分からない。「ズベン・エヌ・カマリの本体はインシグネで制御しているのよね」
「はい」
「インシグネは異世界に飛ばせば、駐屯地を制御している人工知能も消滅するわよね。脳をなくした先で、制御はできるの」
「収集したデータはレコードとして随時記憶しています。ズベン・エヌ・カマリと同じとまではいきませんが、類似した制御は可能です。今の状態でも、リブラにも負けず劣らずですよ」
「自信家ね」
「情報制御は傲慢でないとできません」
 レガートは笑みを浮かべてインシグネのある空間から去り、食堂で食事を取って時計を見た。12時50分を示していた。駆け足でローランドが指定した、空間の天井からつり下がったコンテナ状の一室に集まった。
 真下にレガートと暮広がいた、インシグネのある空間が広がっている。
 一室の床には液晶が張ってあり、インシグネと状況、データを映している。
 ローランドは懐中時計を手にとって時刻を測っている。時計の針が正確に13時を示した。
「13時を越えた。ではインシグネの稼働を開始する。暮広、稼働を開始しろ」
 床に映るインシグネの状況が多重に映る。
『了解しました。司令、インシグネを動かします』暮広の軽快な声が響いた。
 ディスプレイにある縮退炉のエネルギーが増加していく。桁は未知数で、小国がかき集めたエネルギーの総量を軽く凌駕している。
 インシグネの装甲パネルに、血管に似た透き通ったピンク色の筋が張っていく。エネルギーが装甲に伝わると同時に、フックが次々と外れていく。
 一室の隅に座っているオペレーターは手元のモニターで状況を確認し、タッチパネルの液晶で状況を操作する。インシグネを拘束しているフックが次々と外れていく。
 インシグネはフックが外れた衝撃で大きく揺らいだ。
 レガートはインシグネが傾きで倒れるのではと周囲を見回した。関係者は表情一つ変えず、足元に映る状況を見ている。
 インシグネはバランスを整え、人間と同じ動きで歩き出した。
 レガートはインシグネの動きに驚きを覚えた。二足歩行型ロボットは世界各国で実用しているが、随時バランスを取る為、人間の動きより遅い。今映っているAPWは15メートルもある巨大人型機械ながら、人間と何ら変わらない動きをしている。作業用機械のぎこちない動きと違う。「制御システムは人間の動きをトレースしているの」
「いや」ローランドはオペレーターに目をやった。オペレーターと目が合う。
 オペレーターはタッチパネルを操作した。床下にインシグネの制御系統が映った。胸部のコントロールシステムから体の各部位に分岐し、埋め込んであるチップに細かく接続している。「ロボットの制御は各部位から入った情報を元に、CPUで整理して返す。APWは操縦席からの筋電位を含めた入力に各部位が重心やモーメントを判断し、確固に連携して適切なモーションを取る」
 液晶画面が切り替わり、スズメバチのCGが映った。CGに脳と神経系統が重なった。
「昆虫は最小限の脳ながら非常に繊細、かつ瞬発のある動きを可能としている。徹底して解析し、APWに同じシステムを組み込み動かしている。だからこそ制御システムは最小限で適切な動きができる」
 レガートは眉をひそめた。昆虫の脳を模したネットワークの案は以前からある。各部位ごとに独立したプログラムを打ち込み、他の部位からの信号により特定の反応を引き出す。現在は類似の設計を持つクラウドシステム以外に実用していない。ハードウェアに搭載すると、不確定要素に対処できなくなる。「柔軟さに欠けるわね、両立はできるの」
「魂のリンクでカバーする」
「魂では量産できないわね」レガートは皮肉を交えて答えた。
 床の映像が切り替わった。インシグネは立て掛けてある剣を模した武器を手に取り、剣道の構えで身構えて振っている。動きは滑らかだ。
 レガートの脳裏で、インシグネの動きが人がロボットのきぐるみに入って演技をしている、子供向けのテレビ番組のワンシーンと重なる。「今すぐでも異世界に行けるわね」
「魔道力学者のお墨付きが出るとはな」ローランドは笑みを浮かべた。「話が逸れるが、滞在期間は」
「用が終わるまでよ」
 ローランドはうなづいた。「ではインシグネの動作ですが」説明を始めた。
 液晶画面が次々に切り替わる。インシグネのカタログスペックから搭載する武装に至るまでの説明だった。レガートには榎本が信頼していた人物だったのもあり、隠す意味がないと判断して丁寧な説明をした。
 レガートはメモを取らずに聞いていた。痕跡を残さないのが丁寧な説明への返礼だった。
 説明ではインシグネは人型のモジュールとして設計していて、調査の際には武装だけではなく食料の生産プラントや居住区域、修理設備や現地での実験施設を搭載する予定としている。重量は縮退炉の膨大なエネルギーで相殺する。
 液晶画面では生産プラントは開発中と映っている。かつてはバイオスフィアと称した密閉空間での居住実験をしたが、失敗していた。人が異端の、まして密閉した世界で暮らすのは難しく、計画が慎重になるのもわかる。
 インシグネの状況が映る。縮退炉の状況や運動による負荷が映っていた。縮退炉の稼働状況は1基のみであるが極めて小さく、1パーセントも出ていない。
 30分経過した。
「芦原さん、戻ってください」オペレーターが要請を出した。
 インシグネは元の場所に戻った。フックがかかり、紫色の筋が徐々に消えていく。
「インシグネ、停止しました。縮退炉の出力を落とします」オペレーターは声を上げた。
 ローランドはレガートの方を向いた。「魔道力学者として素直な感想は」
「行き先は火星や金星も裸足で逃げ出す、未知の環境よ」
 ローランドはオペレーターに目をやった。オペーレーターはうなづき、キーボードを操作した。液晶画面が切り替わり、時空のゆがみに関わる内容が現れる。「縮退炉内部で生成する類似ブラックホールは重力により質量は無論、時空すらゆがめ、温度から物質、放射線すらも遮断する。繊細な調整は搭載した人工知能により制御する」
「バリアを作るのね」
 ローランドはレガートの言葉にうなづいた。「問題は実用テストをしていない点だ。下手をすれば一帯、いや地球が重力で消滅しかねん」
「誰もいない場所でしかできないわね」
「近いうちに海上でやる予定だ」
 液晶画面が消えた。「続きはミーティングルームでやる」ローランドは部屋を出た。
 レガートもローランドに続き、ミーティングルームに戻った。科学者達は転送したテストデータを元に詳細を話し合った。
 報告会が終わったのは夕方だった。
 レガートは議論で疲れた体を押して、港湾を経由して詰め所に向かった。暮広が指示した場所だ。
 詰め所には隊員達が談笑や休息を取っていた。見回しても暮広の姿はない。時間を指定しなかったのが問題だったと気づいた。
「ロン博士」後ろから声がした。
 レガートは振り返った。暮広が立っていた。
「ロン博士、遅れてすまない。居残りでデータを解析した。上にはモーションの調整だとごまかした」カードを差し出した。
 レガートはカードを受け取った。
「持ち込んだデータを一通り見た。リブラですら東安部の派遣先は分かっていない。政治結社が独断で判断していると見ていい」暮広は誰も座っていない机に向かい、座った。レガートも続いた。片手に持っていた端末を机におき、カードを差し込んで起動した。データが映る。リブラ側のデータで、派遣した東安部個人のデータリストだ。例外なくプアになっている。「当人のデータは抹消済みだ。以前話したが、リブラにとって偽の国民は生産を司るリソースだ。存在している人間を証拠もなく抹消する理由はないが、実際には消えている」
「リブラにとって不要な人間だから、消していると。追い出しているのはテロの予備軍かしら」
「人工知能は遺伝子や区域で傾向や確率を推測できても、所詮確率だ。確実な予見はできない。直感すら持ち合わせていないのだからな」暮広は言い切った。「実際に派遣する人間はランダムだ。貴方の言葉通りテロリストの排除が理由なら、リブラは東安部の人間を皆テロリストとみなしている。としか説明できない」
「間違いでもないんだけどね」レガートはぼやいた。元々東安部は、内乱を止めた政治結社の私兵が自衛隊に取って代わった組織だ。
 暮広は端末に触れた。派遣先の世界地図が画面に映る。レガートの方を向いた。「俺よりロン博士、貴方の方が国際情勢に詳しいので質問する。仮に海外に派遣する場合、派遣先は予測できるか」
 レガートは顔をしかめた。「軍は平和な場所に派遣しないわ。紛争地域なのは確実ね。以前、日本の国防が自衛隊だった時も平和支援を名目に派遣していたわ」
「国際貢献か。確かに支援をしなければ、国家の地位は落ちる」暮広はうなづき、液晶画面に触れた。画面は消えた。「納得できないな」
「できないって、何が」
「国際貢献をして日本の地位を上げるなら、国家として重要な外交手段だ。リブラに隠す理由はない」
「理由は別にあると」
 暮広はレガートの言葉にうなづいた。
 レガートは立ち上がった。「解明できたら報告するわ」
 暮広はレガートに手を振った。
 レガートは詰め所を出た。滞在施設に戻り、解析をした。リブラの影響から外れているので詳細を見るのは不可能だ。外に出るしかない。ローランドに調査を終え、駐屯地を出ると連絡をした。ローランドは了解した。レガートは勝手に来た客人であるが故、追い出しも慰留もしなかった。
 翌日、レガートは駐屯地を出た。リブラの影響にある東京に向かい、外に接続して暮広からもらったデータの分析作業に入る。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み